第四話「新しい武器を手に入れました」
それから俺は順調に第十層までやってきた。
市役所職員が浅いダンジョンだと言っていたが、ぜってぇそんなことないだろ、これ。
メチャクチャ深いんだが。
まだまだ奥がありそうなほどには深いんだが。
「しかしここで止まるのも勿体ないし、何より帰り道がダルい」
そう、ここで止めて戻ろうとするなら、今まで来た道を戻らなければならない。
逆に探索を進めて攻略してしまえば、転移ゲートが開きすぐに元の世界に帰れる。
「それだったらやっぱり潜ったほうがいいよなぁ」
そう思い、俺はドンドンと第十層を踏破していった。
さらに五時間ほど第十層を歩き回っていたら、再びボス部屋らしきものを見つけた。
「もうボス部屋も怖くないよなぁ……。さて、いざ行かん」
俺は何の気なしにズンズンとボス部屋に潜り込んだ。
そこのボスは赤い肌のオークだった。
いわゆるジェネラルオークってやつだ。
そいつは知性があるのか、俺に向かって話しかけてきた。
「よくぞここまで辿り着いた、探索者よ。これより先はさらに険しい道が広がっているが、それでも我を倒していくか?」
いや……別に今までも険しいとか思わなかったし、行きますよそりゃ。
俺はあえて言葉を発さずに頷いて、剣を手に取り構えた。
……てか、ここまで来てまだ錆びた剣を使ってるのも何かかっこ悪いなぁ。
そろそろ新しくてかっこいい剣が欲しいものだ。
「……そうか。そなたは我に――そしてダンジョンに歯向かうか。よかろう、いざ参るッ!」
そしてジェネラルオークは凄い勢いで飛び出してきた。
俺は避けても意味ないが、一応練習として軽く避けてみる。
うん、レベルも上がっていて軽々と避けられた。
「何ッ! 少しはやるようだなッ!」
何やら驚いているみたいだが、自分ではそんな凄いことをした自覚はない。
逆にジェネラルオークのくせに遅すぎてこっちがビックリしたくらいだ。
「今度は本気で行くぞッ! 避けてみせよッ!」
――それからものの十五分で決着がついた。
ジェネラルオークは粒子となって消えていきながら最後にこんなことを言った。
「そなたは強いな。これならあの娘を解き放つことも――」
おおい! めっちゃ気になることを言って消えていくじゃん!
あの娘って誰だよ! すげぇ気になるんだけど!
しかしもうジェネラルオークはこの場にはいない。
そして彼がいた場所には一振りの剣が落ちていた。
俺がスッと鞘からその剣を取り出してみると――。
「おお……何この剣、クソかっこいい」
刀身はダイアモンドで出来ているのか、半透明の水色をしていて透き通って見える。
しかもただのダイアモンドではなく、何やら複雑な紋章が描かれていた。
何の紋章かは分からないけど、かなり良いものに違いない。
いわゆるレアドロップってやつかもな。
第五層の時と同じように奥のほうで扉が開き、さらに下層へと続く道が開かれた。
俺は躊躇うことをせず、意気揚々と第十一層に潜り込むのだった。
――――――――――
名 前:斉藤レン
年 齢:27
レベル:121
体 力:1408
魔 力:1798
防御力:287
筋 力:968
知 力:1180
幸 運:589
スキル:《ステータス閲覧Lv.3》《剣術Lv.8》《爆炎魔法Lv.2》
耐 性:《打撲耐性Lv.10》《炎耐性Lv.2》
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***
第十一層は先ほどまでとは打って変わって、草原のような場所だった。
見渡してみると、ところどころに森が広がっている。
上を見上げると真っ青な空も広がっていて、まさしく不思議空間だ。
「おお、凄い……。ダンジョンってホント何でもありなんだな」
暫くブラブラと歩いていると、唐突に上空からけたたましい鳴き声が聞こえてきた。
空を見上げるとそこにはワイバーンらしき魔物が飛んでいた。
「今度は対空戦か! いいね、ワイバーンはワクワクすっぞ!」
しかし先ほど手に入れた剣は暫く使い物にならなそうだ。
敵は空を飛んでいるので魔法で攻撃するしかないからな。
そしてレベルが上がってより威力の高くなった『大爆発』でワイバーンを吹き飛ばす。
「……え、弱っ! 一撃で死んじゃったよ!」
いつになったらハラハラする強敵みたいなのが出てくるのだろうか。
まあ攻撃が効かないのでハラハラもないのだが。
最初に戦っていたゴブリンたちのほうが強く感じたぞ。
その分、自分が成長しているのだと言い聞かせて、俺はドンドンと第十一層を探索していく。
***
――さらに十時間後。
俺は森の中に小さな祠のようなものを見つけた。
洞窟状になっていて、奥に入ってみると何かが巨大な箱に入れられ祀られている。
その箱の大きさは小柄な人間ほどの大きさだった。
「罰当たりかもしれないけど、開けてみたくなるよなぁ」
俺はそう呟き、好奇心に負けてその箱を開けてみる。
するとその中では一人の少女が眠っていた。
美しい銀髪の少女だった。
どこか幼さを残しつつも、整っているせいか大人びても見える。
彼女はゆっくりと瞼を開けた。
その中から現れた紅い瞳がこちらを見据える。
そして彼女の唇がゆっくりと持ち上げられ――。
「あなたが私を眠りから覚ましてくれたの?」
鈴の鳴るような美しい声が祠の中に響き渡るのだった。