第三十七話「アルティメット・レイピア」
試用場は鉄筋コンクリートに囲まれた四角い部屋だった。
様々なデコイが置いてあったり、威力測定機みたいなのもある。
部屋の隅にある長机に店員さんは細剣を並べていくと言った。
「どれでも好きなものからお試しください」
それを聞いたレーアは一番手前にあった細剣を手に取ると、ユイに渡しながら言った。
「片っ端から試していきましょう? とりあえず全部使ってみるのが良いと思うわ」
「そうですね。まずはこの一番安いやつから試しますか」
ユイは頷くと、手渡された細剣を構え調子を確かめる。
一番安いと言ってもかなりの値が張るんだがな。
二百万で最安値ってやっぱりIBWの武器はどれも高い。
「……やっぱり今まで使っていたものよりも軽くて振りやすいです。それに重心が良くて手に馴染む感じがします」
そりゃそうだろうな。
良い武器というのは重心が優れているのだ。
ボールペンなんかの良いやつも、重心の取り方が上手くて書きやすかったりするのと同じ感覚だ。
「これでいい気もしますが……」
「早急に決めないでまずは全部使いましょうよ。せっかくなのですし」
早くもその武器を気に入り始めたユイにアリエスはそう助言する。
ユイは確かにと思ったのか頷くと、その細剣を持って人型のデコイに近づいた。
「一応ロボットとの対戦もできますので、ご所望であればおっしゃってください」
店員さんの言葉に俺は思わず感心して声を上げてしまった。
最新の技術って凄いんだな。
ユイはデコイの前で細剣を構えると、色々な形で振り始めた。
細剣なので基本突きがメインだが、横に薙いでみたり斜めに振り下ろしてみたりしている。
暫く集中して振っていたユイだったが、数分で満足したのか頷きながら戻ってきた。
「なかなか使い勝手は良いですが、少し耐久性に難がありそうです。思い切り振ると撓んでしまうので」
「それは軽量感を売りにして作っているので、カーボンを鋭く研いでいるのです。なのでやはり耐久性は課題ですね」
店員さんの説明に納得したようにユイは頷くと、別のものを手に取った。
「うーん、さっきのを持った後に他のを持つと、やっぱり重たく感じますね」
「それでしたら、やはり『アルティメット・レイピア』をおすすめします。これは先ほどの剣よりも軽く、そして丈夫です」
「へえ、それはどうしてですか? やっぱり素材ですか?」
「そうですね。ダンジョン産の鉱石『アダマンタイト』を使っているのですが、その鉱石は魔力浸透率が高いので魔力加工を施して中に空洞を作り軽量化を図りながらも、圧倒的強度と鋭さを保っています」
なんか凄そうな説明だ。
でもアダマンタイトは聞いたことがある。
一グラム百万くらいする鉱石じゃなかっただろうか?
確かにそれだったら一億するのも納得だな。
「どうしますか? これを試してみますか?」
店員さんに尋ねられ悩むユイにエレナが聞いた。
「どうして悩むの? 使ってみればいいじゃない」
「いやぁ、軽い気持ちで使ってみて、本当に気に入ってしまったら怖いなって思いまして」
そう言ったユイにレーアはあらあらと微笑む。
「だから気にしなくていいのよ? 好きなのを使ってみなさい」
そう言われようやくユイは決心がついたのか、その『アルティメット・レイピア』を店員さんから受け取る。
そして手に持ってみて、思わずといった感じで感激の声を上げた。
「おおっ……これは凄いです。確かに軽いし重心バランスもちょうど良い。それに思いきり振っても撓みません」
ワクワクした表情でユイはデコイに近づいていき、さっきと同じように剣を振るう。
暫く振るった後、感激した表情で戻ってきて言った。
「やっぱりこれ凄いですよ! とんでもなく使いやすいです!」
「そうですか。お気に召して貰えて何よりです」
レーアはそんな様子のユイを眺めながら微笑んで聞いた。
「それがいいのね? 他のは試してみなくて良い?」
「……一応試してみます」
そして三十分ほどユイは様々な細剣を試していたが、やっぱり『アルティメット・レイピア』が良かったらしく、どれも首を傾げながら戻ってきていた。
「これで全部ですね!」
全ての剣の試用が終わり、再び考え直すユイ。
そんな彼女にレーアが言った。
「本当にお金のことは気にしなくていいからね? 一番気に入ったのを選びなさい」
そこまで言われ、ユイは決心を決めると『アルティメット・レイピア』を手に取った。
「それじゃあ……これにします」
「ふふっ、だと思ったわ」
そして店員さんにブラックカードを手渡すと言う。
「これで払って貰える?」
「はい、畏まりました」
ブラックカードなんて初めて見たぞ……。
本当に金属でできてるんだな、ラグジュアリー系のカードって。
こうして新しい武器を手に入れた俺たちは、再び車に乗って、今度こそレーアの家に向かうのだった。




