第三十四話「ついに決勝戦が終わりました」
レイナの攻撃を軽々と避けながら、俺は今度こそ《竜魔法》の咆哮を使ってみる。
すると彼女の動きは一瞬だが止まった。
おっ、どうやら少しだけだけど成功したみたいだ。
「ぐっ……!」
彼女は動けずに小さく声を漏らした。
うん、魔法が効くと分かれば後は大丈夫そうだな。
俺は《竜魔法》のレベル5で使用可能となる竜の息吹を発動させる。
竜の息吹は発動が遅く、間違いなくレイナには避けられるだろう。
しかしここで俺には一つの妙案があった。
竜の頭が頭上に現れ、魔力がもの凄い勢いで溜まっていく。
それに気がついたレイナはすぐにその軌道から逸れようとするが——。
俺は再び咆哮を使い、レイナの動きを一瞬だけ止めた。
その一瞬の間に彼女の後ろに回り、俺は動けないよう思いきり抱きついたのだ。
「なっ……!? いきなり何を!?」
何故か顔を真っ赤にして叫ぶレイナだったが、俺は構わずぎゅっと抱きしめる。
「ふははっ! これこそが自爆大作戦だ!」
「当たってます! 腕が変なところに当たってます!」
俺は自分の作戦を実施するので忙しくて、レイナの言葉に意識を向けていなかった。
だから俺の腕が変なところに当たり、ムニムニとしているのにも気がつかなかった。
「ううっ……もうお嫁に行けません……」
何故か落ち込んで動きが鈍くなったレイナに、俺は首を傾げるが。
——次の瞬間には何故かレイナが粒子として消えた。
「え……? あれ、ちょ、消えた……?」
俺は突然消えたレイナに思わず立ち呆ける。
しかし俺はとあることに気がついてしまった。
「あ……竜の息吹……」
マズった。
竜の息吹は完全に発射態勢に入っており、その矛先は俺に向けられていた。
——レイナが消えた?
——それよりもこれ、斉藤も死ぬんじゃね?
——そうなったらどうなるんだ?
——いや、レイナのほうが先に消えたし、もう斉藤の勝ちだろ。
そんなコメントたちがもの凄い勢いで流れていく。
そして竜の頭から光線が発射され——。
「うごごごごごごごごご!」
俺は自分で発動した竜の息吹を浴び続けることになるのだった。
***
「なんか締まらない勝ち方だったわね」
控え室に戻ると呆れたような表情のエレナに出迎えられた。
その言葉に俺は落ち込んでしまう。
「……ううっ、分かってる。こんなダサい勝ち方はないだろってのはさ」
「まあでも、レンらしくてよかったんじゃない?」
「何だその投げやりな感想は……。俺らしいってそもそもなんだ」
俺は哲学の沼にハマりそうになってしまうが、ふと気がついたことがある。
「てか、ユイとアリエスはどこ行ったんだ?」
「彼女たちは車を取りに行ったわ。いつでも逃げられるようにね」
「逃げる……? どうして? 誰から?」
俺が首を傾げていると、エレナは呆れたように言う。
「決まってるじゃない。レイナから逃げるのよ」
「……あっ、そっか。絶対に俺たちのことを根掘り葉掘り聞いてくるもんな」
「それに、ほかの人たちも押し寄せてくると思うわ。間違いなくね」
確かにこんなに目立ってしまったら俺は追われるハメになるだろう。
アベルもどういう動きをしてくるか分からないし、逃げる準備をしておかないとか。
「は、早く逃げよう。こうしちゃいられない」
俺は慌てたように言うが、エレナはとうとう呆れたようにため息をついた。
「はあ……逃げる前に勝利者インタビューがあるでしょ? それくらいはしっかりやっていきなさいよ」
十近くも年の離れた女の子からそう説教され、俺はガチでへこむ。
そうだよな……流石に放り投げて逃げるわけにもいかないよな。
てかインタビュー多過ぎな。
喋る事なんてもう無いんだけど。
そんなことをしていると、トントンと部屋の戸が叩かれた。
「はぁい」
スタッフかと思って扉を開けると、そこにはレイナが立っていた。
「……げっ」
「げっ、とは何ですか。失礼な」
「す、すまん」
もう逃げ場は無く、俺は諦めたようにレイナを自分たちの控え室に入れた。
レイナは遠慮無く入ってくると、仁王立ちして俺に聞いてきた。
「それで、いきなり強くなったのは何だったんですか?」
「……言わなきゃダメか?」
「もちろんです」
「それじゃあ交換条件だな。レイナの『世界級スキル』について教えてくれ」
俺の言葉にレイナは少し考えていたが、やがて頷いたように言った。
「分かりました。良いでしょう、教えますので、そちらも教えてくださいね」
「ああ、それは約束しよう」
そしてレイナは世界級スキルの全容を教えてくれた。
そのスキル名は《英雄の傷跡》。
HPを1にする代わりに、全ステータスを三倍にするという効果らしい。
そして、暗黒迷宮のボス、ヴァンパイアロードのドロップ品だとも言っていた。
「……何だそれ、強すぎないか」
「まあそれでもレンさんを超えることは出来なかったんですけどね」
そういえば俺のレベルはどれだけ上がったのだろう?
気になってステータス画面を覗いてみると、元のレベルが304だったのが、387になっていた。
……そりゃ余裕で勝てるわけだ。
しかしこれでペンダントの一割の経験値か……。
どれだけ経験値が貯まっていることやら。
「てかなるほどな。あのとき突然消えたのは、HPが1だったからか」
俺の言葉にレイナが頷いた。
「私は話しました。今度はレンさんの番です」
そして俺は経験値貯蓄ペンダントの事を全て話す。
レイナはその話を聞いて不服そうに言った。
「その経験値を集めた方法までは教えてくれないですよね?」
「それはまた別料金だな」
「ケチですね。……まあ良いでしょう。それでは私は失礼します」
……あれ?
てっきり俺はまた決闘しろだの、もっと情報をよこせだの言われるものかと思っていた。
「……何ですか、その顔は。まだ私が聞き出そうとするとでも思ってましたか?」
「ああ、思ってた」
「私を見くびらないで欲しいですね。こういうのは自分の力で強くなってナンボなんです」
なるほど、レイナは自分の強さに、そして強くなっていくことに誇りを持っているらしい。
うん、良かった、彼女がアベルみたいな短絡的な思考じゃなくて。
「では、失礼します」
レイナが出て行ったのを確認すると、エレナが口を開いた。
「……逃げる意味が無くなったわね」
「いや、ほかの連中がどう思っているのかは分からんからな。逃げるに越したことはない」
そして俺たちは優勝者インタビューを終えると、そそくさと家まで帰るのだった。
【作者からのお願い!】
この小説を読んで
「面白そう!」
「続きが気になる!」
「応援してるよ!」
と少しでも思ったら、↓の★★★★★を押して応援してくれると僕が喜びます!
あなたの応援が執筆のモチベーションになります!
よろしくお願いします!




