第三十三話「決勝戦が始まりました」
インタビューを終えて、二十分の休憩の後すぐに決勝となった。
俺はヴァーチャルステージで決勝戦の相手レイナ・ルーカスと対峙しながらため息をついた。
「やっぱりレイナかぁ……。そんなとこだろうとは思ってたけど」
「む。レンさん、アナタがランキング一位の斉藤レンだったなんて全く気がつきませんでしたよ」
……この子、意外と天然なのか?
山梨ではただ見逃してくれただけかとも考えたが、普通に違う人だと心から信じていたらしい。
「それでどうしてそこまで俺と戦おうとするんだよ?」
「前も話したと思いますが、私はアナタに感謝してるのですよ。今までずっと一位続きで退屈してたんです。だから戦ってみたいと思うのも当然の流れでしょう?」
うーん、凄く戦闘思考だ。
コメント欄も面白いくらいに盛り上がっている。
——流石元ランキング一位! 向上心が段違いだぜ!
——脳筋にも程がないか……?
——ここまでの狂気がないとやっぱりランキング一位を十年も維持することはできないのか。
みんな好き勝手言ってるが、レイナはそれを全く気にした様子はない。
メンタルも相当強いんだろうなぁ。
レイナは直剣を引き抜き構える。
そして獰猛に笑った。
こえぇよ!
ライオンに睨まれた羊の気分だ。
こちとら草食系なんですぅ!
肉食系と同じ土俵で戦える人間じゃないんですぅ!
そんな風にガクガク震えていたが、どうやらすぐに試合は始まってしまうらしい。
上空に浮かんでいるスクリーンにはカウントダウンが表示された。
5……4……と数字が減っていく。
なんだかそれが地獄へのカウントダウンに思えてきた……。
だって見ろよ、あの表情!
どう見たって狩る側の表情してるし!
そんな俺の必死の心の叫びも虚しく、数字は0を刻んだ。
ダンッと勢いよく地面を蹴って飛び出してくるレイナ。
とんでもなく好戦的だ。
俺はそれを慌てて避けると《竜魔法》の咆哮を使った。
それで少しは時間稼ぎができると思ったが……。
「そんな魔法私には効きません!」
レイナに咆哮が効いた気配がなく、そのままの勢いで斬り掛かってくる。
なんてヤツだ!
竜魔法すらも効かないとは!
何かスキルでも使っているのだろうか?
それともただとステータスのゴリ押し?
分からないが、どちらにせよ生半可な攻撃じゃ意味ないことが分かった。
だったら——。
俺は《爆炎魔法》の業火の海を使用する。
これはマグマの波を相手に押し付ける技だな。
アリエス戦でも使った技だし、レイナにも効くと思ったんだが……。
どうやらこれよ全く効かなかったらしく、その波をかき分けて俺の方に突っ込んでくるレイナ。
殺意が高すぎるってばよ!
「まだまだいきますよ!」
そう言いながら次から次へと攻撃を仕掛けてくる。
俺はそれをなんとか《雷刃》で防ぎながら考える。
ここまで強いのは普通におかしい。
ふと前にアリエスから聞いた話を思い出していた。
『恐らくランカーの人なら達人級スキルの一つは持ってるのではないでしょうか?』
多分このレイナもその達人級スキルを使っている。
そう思っていたが……。
「むぅ……これがレベル差ですか。『世界級スキル』を使っても届かないなんて」
世界級スキル!?
レイナは世界級スキルを持っているのか!?
彼女の言葉に俺は思わず驚いてしまった。
道理でランキング一位をずっと維持できるわけだ。
そんな強力なスキルを持っていたなんて。
しかしどんなスキルかまでは分からない。
だから対策のしようもなかった。
くそう、こうなったらどうする……?
負けを認める……のは流石に不義理か。
やっぱり嘘をついていた手前、本気で戦わないと申し訳ないよな。
だったら——。
俺は首からぶら下げていた経験値貯蓄ペンダントを使用することを決めた。
まあ全部の経験値を使うわけではないが。
多少のレベルアップくらいならしても良いだろう。
一部の経験値だけを取り出すことが出来るかどうか分からないがやってみよう。
そして俺はそのペンダントに入っている経験値の一割を取り出すように念じてみる。
すると一気に体が軽くなった気がした。
……あれれぇ、レベル上げすぎた?
恐ろしいほど力が漲っているのを感じる。
やっちまったかもしれない。
でもまずはこの試合に勝つことだな。
そして俺はバックステップでレイナから距離を取ると、試合を仕切り直すことにした。
「……急に気配が変わった気がします」
「使える手は全て使わせてもらった。これでも勝てなかったらしっかりと俺の負けだ」
言うと彼女は再び獰猛に笑う。
「それは良いですね。正式に勝ちを頂くとしましょう」
そう言った後、レイナは先ほどよりも速く力強く飛び出してきた。
俺はそれを軽々を避ける、避けれてしまう。
そのことにレイナは思わずと言った感じで目を見開き言った。
「……これは、かなり苦戦しそうですね」
勝てないと言わないあたりに俺は彼女の負けん気の強さを感じて、苦笑いが溢れるのだった。




