第三十一話「インタビューを受けました」
「まずはこの大会に対する意気込みをどうぞ」
「ひゃい! が、頑張りたいと思いましゅ!」
現在、俺はカメラを向けられ試合に向けたインタビューを受けていた。
生放送は動画サイトでも同時中継されてるらしく、そのコメントがざあっと流れていっている。
――普通のおっさんすぎて草。
――メチャクチャ緊張してるじゃん。
――なんかすげぇ親近感湧くわ。
――ほんとにランキング一位か? そうは見えないんだが。
――ちょっと腹出てね?
――↑ほんとだ。でもデブってほどではないけど。
え? やっぱり腹出てる?
コメントを見て思わず腹を引っ込めながら、俺は質問に答えていく。
「現在ランキング一位をぶっちぎりで独走しておりますが、それについてはどう思いますか?」
「ええと……ダンジョンに潜るのが楽しくてつい狩りし続けたら、いつの間にかこうなっていました」
――楽しくてランキング一位になれたら苦労しないんだよなぁ。
――ステータス傾向が早熟型なんかね? だからいつか天井が来る気がするが。
――最近レベル伸びてなさそうだし、もう天井来てそうだけど。
いや、すいません、少しズルしてます。
心の中で謝りながらも、言えるわけないので俺は黙っておく。
「なるほど。楽しくて気が付いたら一位だったのですね」
「まあ、はい。そうなりますね」
「突然ランキング一位になったということですが、それについて心当たりはありますか?」
やっぱり来たなこの質問。
俺はこれに対するアンサーをあらかじめ考えておいていた。
「分かりません! 僕にはさっぱりです!」
「……そうですか。失礼いたしました」
良かった、深掘りされなかった。
ほっと安心していると、ドンドンと次の質問がやってくる。
「では続いての質問ですが、趣味や子供の頃の夢など、斉藤さん自身のことを聞きたいんですけど」
趣味や夢かぁ。
何かあったかなぁとか思いながら、俺は答えていく。
「趣味は……そうですね、盆栽を愛でることだったんですけど、最近はやれていませんね。他には家や車の手入れとかですかね。インテリアに凝るのが好きです」
――盆栽はいいぞ。
――↑盆栽おじさんだ!
――趣味が本当におっさんだなw 凄い親近感が湧いてくる。
――それな。俺と趣味がまるで一緒だ。
俺の回答を深掘りしようとインタビュアーがさらに話を続ける。
「車は何を乗られているのですか? やっぱり稼いでおられるのでしょう?」
「……まあ、一応は。ドイツ製の最上級グレードのものに乗ってます。中古ですけどね」
――親近感なんてなかったんや。
――ガラガラガラ(親近感が崩れていく音)
――敵だ! こいつは俺たちの敵だ!
うわぁ! やっちまった!
せっかく手に入れた(?)親近感を台無しにしてしまった。
「やはり一位ともなると凄いですね。続きまして、子供の頃の夢をお聞かせください」
「夢ですか……。子供の頃はファイナルダンジョンズにハマっていたので、やっぱり探索者になりたいというのが夢でしたね」
――ファイナルダンジョンズ!
――ポポポポ(親近感が湧いてくる音)
――おお、懐かしいゲームだ!
良かった、親近感が戻ってきた。
「まだまだ質問を続けてまいりますが、大丈夫でしょうか?」
「はい、構いませんよ」
「それでしたら、今度は好きな食べ物を教えてください」
好きな食べ物?
何その話題のない合コンで無理やり捻り出したような質問は。
まあいいけど、そんなの気になるのかなぁ?
「好きな食べ物はハンバーグですね。最近ハンバーグを作って貰っているのですが、それが凄く美味しくて」
「ほう。作って貰っているというのは、恋人とかでしょうか?」
…………あ。
マズったかも。
これでは俺が女の子とあたかも同棲しているように見えてしまうではないか!
せっかく手に入れた親近感が……!
「ま、まあ、恋人ではないのですけど」
「けど? 女性ではあるのですね?」
「うっ……え、ええ、そうですね、女の子ですよ! 悪いですか!」
最後はやけっぱちになって叫んでしまった。
――ガラガラガラ(親近感が崩壊していく音)
――やっぱりこいつ俺たちの敵だ!
――くそう、やっぱりランキング一位はモテるのか!
――ズルいぞ、俺なんて母親以外の手料理を食べたことないってのに!
すまん、みんなよ。
俺はユイの美味しい手料理を毎日食べてるんだ。
「なるほど。ハンバーグがお好きなんですね。ちなみに私もハンバーグが得意料理ですよ」
何のアピールですかそれは!
コメントの流れがドンドンと早くなっていく。
――インタビュアーまでもがアピールしだしたぞ!
――終わりだ、俺たちの終わりだ。
――くそっ! ハーレムを築きやがって! けしから羨ましい!
「え、ええと……そうなんですね。へ、へえ……」
急なアピールに俺があたふたしていると、ちょっとだけコメント欄が温かくなった。
――でも拭いきれない童貞感。
――確かに手馴れてない感じあるな。
――やっぱり俺たちの味方……?
くっ……こんなことで親近感を覚えられるのも何か嫌だな。
そんなこんなでインタビューが終了し、今度は試合へと移っていくのだった。




