第三話「遠距離攻撃ってやっぱり強いよな」
第六層の魔物たちは第五層以前の魔物たちとは比べ物にならないくらい強かった。
やっぱり第五層まではチュートリアルみたいな感じだったのだろう。
出現する魔物はオークとジャイアントウルフ。
第五層までは一種類の魔物しか登場しなかったが、第六層からは二種類の魔物が登場した。
「ガァアアアア!」
「グルゥウウウ!」
しかもその二種類の魔物たちは連携を取り、互いの隙を埋めるように攻撃してくる。
が――俺にはまったく攻撃が効かないのだ!
ふははっ、当たらなければどうということはない(当たっている)
ゴブリンの落とした錆びた直剣で何度も切り刻んでいると、ようやく粒子となって消えた。
おおっ、結構な経験値が入るな。
以前までの魔物とは比べ物にならないくらいだ。
ゴブリン二十体くらいでようやくオーク一体分くらいの経験値だろう。
こりゃあ経験値稼ぎが捗るぜ。
その経験値の美味しさに目が眩み、俺は気が付いたら十五時間ほどもレベリングをしていた。
流石にやり過ぎたと思うが、体力が減らないので時間感覚が狂ってくるのだ。
――――――――――
名 前:斉藤レン
年 齢:27
レベル:67
体 力:810
魔 力:920
防御力:121
筋 力:506
知 力:798
幸 運:345
スキル:《ステータス閲覧Lv.2》《剣術Lv.6》
耐 性:《打撲耐性Lv.7》
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しかし打撲以外の攻撃をしてくる魔物がいないから、他の耐性が身につかないな。
もっと剣で攻撃してくる魔物とか出てきてもいいんだよ?
そんなことを考えつつ、俺はさらに歩みを進め、第七層に潜り込んだ。
第七層も第六層と同じような雰囲気で、出てくる魔物はオークとファイアラビットだった。
ファイアラビットは魔法を使ってくる兎型の魔物だ。
このダンジョンで魔法は初めて見るので、どうなるか心配だったが――。
やはり魔法も俺には効かなかった。
それから三時間ほど狩りを続けていると、ファイアラビットがスキルの書を落とした。
スキルの書とはその名の通り、スキルを手に入れられる書物のことだ。
スキルには二通りの入手方法がある。
一つは何度も鍛錬を積んで手に入れる方法。
そしてもう一つはこのスキルの書を読んで手に入れる方法。
鍛錬を積んで手に入れられるスキルは、大抵初級スキルと呼ばれるものだ。
俺が今持っている《剣術Lv.6》も初級スキルだな。
まあ――死ぬほど鍛錬を積めばもっと上位のスキルも手に入れられるのだろうが。
それは後々やってみてもいいかもな――何せ俺には無限な時間があるのだから。
そして俺はドロップしたスキルの書を確認してみると――。
そこには『爆炎魔法』と書いてあった。
スキル『爆炎魔法』とは初級スキル『炎魔法』の上位互換である。
いわゆる中級スキルってやつだな。
スキルの等級は初級、中級、上級、達人級の四つある。
そして今回手に入れたのは真ん中の中級スキルだった。
ちなみに達人級スキルはほぼ持っている人はいないので、実質上級スキルが最上位となっている。
達人級スキルを持っている人は、『探索者ランキング』上位に位置するような人たちだろう。
――探索者ランキング。
これはインターネットで調べれば出てくるサイトで、誰が運営しているのかは定かではない。
探索者たちがレベルの高い順でソートされていて、誰がどういった意図で、どうやってレベルを調べて運営しているのかは分からないとのこと。
「とと、まずはこのスキルを手に入れてみよう」
俺は洞窟でそう呟くとスキルの書を開いてみた。
するとスキルの書は粒子となって消え、代わりにステータス画面に新しいスキルが追加された。
――《爆炎魔法Lv.1》。
ステータス画面を閉じると、ちょうどいいところにオークが二匹登場する。
よっしゃあ、丸焦げににしてやんぜ!
そう意気込み、俺は『爆炎魔法』の中の魔法の一つ『大爆発』を使用した。
ちなみにスキルを手に入れると無数の『技』が使えるようになる。
例えば『剣術』スキルを手に入れたなら、『スラッシュ』とか『居合』とかが使えるようになる。
その使える『技』はスキルレベルによって増えたりもするので、レベルもかなり重要なのだ。
つまりこの『爆炎魔法』を手に入れ、俺は『大爆発』という魔法というか『技』を使えるようになったというわけなのだ。
魔法『大爆発』を使用した瞬間、オークたちの間に火の粉が生まれたと思ったら――。
ドゴォオオオオオオンッ!!
と強大な爆発音とともにその空間が爆ぜた。
その威力は知力依存なので、もう少し弱いものかと思っていたが。
この知力量でもかなりの威力が出ていた。
一瞬にしてオークたちは消え去り、粒子となって消えた。
「おお、魔法ってすげぇ……。こりゃあ魔法使いが一番人気のジョブになるわけだ」
これはストレス発散にもなるし、何より気持ちがいい。
そして俺は日頃の上司への恨みつらみをぶつけるように、丸一日ほど『大爆発』でオーク狩りをするのだった。