第二十六話「庭のダンジョンの謎」
それから俺たちは家に帰ってきて、次の日にはダンジョンに潜ることとなった。
「ようやく庭のダンジョンの秘密を教えてくれるのですね」
ワクワクしたような表情でアリエスが言った。
俺はそれに頷くと、庭まで歩きながら話をする。
「こればっかりは口で説明しても分かりづらいだろうから実際に入ってみよう」
そしてブルーシートを引き剥がし、ダンジョンの入り口を露呈させる。
さらにはその入り口の前に俺は時計を置いた。
「……時計? これは何に使うのですか?」
「とりあえず動いているのを確認してくれ」
「ええ、確認しましたけど……」
「じゃあ一旦入ろう。出てきたらこの意味が分かるはずだ」
俺たちは武器を持ちダンジョンに潜っていく。
エレナがダイヤモンドソード、ユイが細剣、アリエスが大剣だ。
俺は魔法が主な攻撃手段だから何も持ってないが。
入り口の直後には三つの転移ゲートが用意されていて、その一番奥のゲートに入る。
すると第二十五層のボス部屋の奥の部屋に一瞬で転移した。
「ここが第二十五層だな。次から二十六層になるんだけど、まあおそらく敵は強いな」
「……ならもっと人を集めたほうが良いのではないでしょうか?」
そうアリエスは言うが、俺は首を横に振ると言った。
「大丈夫だ。このダンジョンは特殊だからな、簡単に強敵でも倒せる」
俺たちはそんな話をしながら階段を降り、第二十六層に入った。
そこからは水中心のステージらしく、巨大な湖が草原にいくつもあった。
湖から突然巨大なモンスターが顔を出す。
あれはリヴァイアサンだな。
蛇と魚の中間のような見た目をしている。
「り、リヴァイアサン! あれはオーストラリアの《天上迷宮》の第三十層のボスだったはず!」
恐ろしいものを見る目でアリエスは叫んだ。
となると、あれはSランクは余裕で超えているだろうな。
最悪、SSランクとさえ言われてもおかしくはない。
「に、逃げましょう、みなさん! いくら強いからってあれには流石に……」
そう慄きアリエスは言うが、俺は大丈夫だと言うように手を振って湖に歩いていく。
リヴァイアサンはこちらに気がつくと、その恐ろしい牙を向けて魔法を使ってきた。
水魔法だ。
巨大な水槍がリヴァイアサンの周囲に展開され、こちらに向かって飛んでくる。
巨大な爆発音とともに俺の周囲に土煙が起こる。
アリエスは思わず目を背けていたが、恐る恐るこちらに目を向けると。
当然俺は何事もなかったように立っている。
「どうして……? 耐性……いや、ここまで無傷になる耐性は聞いたことがない」
そう混乱しているアリエスに俺は真実を伝えた。
「このダンジョンではな、俺たちの時間は止まっている判定になるんだ。つまりな、俺たちに対して魔物たちは攻撃することができない。体力は減らないし、魔力もお腹も減らないんだ」
俺の言葉を聞いて彼女は目を見開き呟いた。
「そんなダンジョンが……。でも確かに隠したくなる理由がわかりました。これが知られれば、世界中の冒険者が我先にとやってくるでしょう」
…………え?
そこまでなるの?
そうなったら俺の我が家が撤収どころの騒ぎじゃなくなるんだが……。
しかしアリエスは至って真剣な表情で言った。
「なるほど、これは私も誰にも言いません。約束します」
「あ、ああ、そうしてくれると助かる」
「そういえば、ダンジョン前に時計を置いていたのも……?」
「そうそう、このダンジョンに入ると、外の世界の時間が止まるんだ」
思わずと言った感じでアリエスが重たいため息をついた。
「これは聞かないほうが良かったかもしれません。凄く胃が痛いです」
ちなみにユイとエレナは好き勝手に魔物たちを倒し始めている。
一応レベルを上げないように瀕死で留めてくれているが。
……うん、これ以上は秘密を広めていくのはやめたほうがよさそうだ。
「と、とにかく。このダンジョンをもっと潜っていきたいんだ。ここの秘密も知りたいしな」
「そうですね。このダンジョンは特殊です。何かしら秘密が眠っているはずです」
そして俺たちは経験値貯蓄ペンダントに経験値を貯めながら、ダンジョンを潜っていくのだった。
***
それから第二十九層に入った時、俺はふと変なものを見つけた。
間違いなく人の手が入ったような跡があるのだ。
それは杭のようなもので、そこには見知らぬ文字が書かれていた。
「なあ、アリエス。この文字を知ってるか?」
「いえ……知りませんね。少なくとも現代の地球上のメジャーな言語ではなさそうです」
そうだよなぁ……。
俺も見たことないし。
一応エレナにも聞いてみるが。
「私も知らないわ。そもそも300年ちょっとじゃあまり言語も変わらないでしょう?」
確かにな。
何かヒントとなるものはないかと思って、俺たちはその周囲を探し回ってみる。
するとそこにも不思議な言語とともにもう一本杭が打たれていた。
その下には赤い花が一束置かれている。
「……これってもしかしてお墓、なのでしょうか?」
「そうかもな。……しかし、誰が、いつ、これをやったのかは全く分からんが」
しかし考えても意味がないと悟り、俺たちは少し離れた場所で休むことにした。
スキルレベルがどうなったか気になり、俺がステータス画面を開くと。
とうとう《ステータス閲覧Lv.10》となっていたのだった。




