第十八話「美少女に決闘を申し込まれました」
そしてやってきたのは東京にある初級ダンジョンの一つ《草原ダンジョン》だった。
草原ダンジョンはその名の通り草原が広がっているダンジョンで、出てくる魔物はリトルウルフとかブラッドラビットとかだった。
ブラッドラビットは庭のダンジョンの第五層にも出てきた魔物だな。
「ではさっそく戦ってみましょうか」
そして俺はアリエスに剣を貸して貰い、リトルウルフと対峙する。
魔法をアリエスの前で使えば、間違いなく強いことがバレるので剣にしたのだ。
まあしかし、こんな魔物に今さら後れを取るような俺ではない。
さっと近づいて、さっと切り刻む。
するとその粒子になったリトルウルフは俺ではなくペンダントに引き寄せられた。
経験値が入るとそのペンダントは白色に光る。
「そのペンダントは入っている経験値に応じて発光する色が変わるらしいですね。今のところ確認できているのは、白、薄緑、青緑、青、紫、までです」
なるほど、グラデーションみたいに色が変わっていくってことだな。
で、リトルウルフの経験値は少ないから、白色になったと。
「それじゃあ、いったんこのダンジョンを踏破しに行きましょうか」
「……え? 何でだ? 確認できたしもう大丈夫なのだが」
「そんなの決まっているじゃないですか。あなたがしっかり戦っている姿を見てみたいからですよ」
ええ……?
俺が戦っている姿を見てもそんなに面白くないと思うんだがなぁ。
しかしアリエスは行く気満々らしく、さっさと歩みを進めてしまう。
俺は慌てたように彼女の後を追い、ダンジョンの奥まで潜り込むのだった。
***
もちろんこのダンジョンは初級なのでそこまで深くはない。
第五層が最下層で、俺たちは現在第五層にいる。
「ふふっ、こうして守って貰っていると、あなたが騎士に見えてきますね」
「……そんな柄じゃないんだがなぁ。確かにアリエスさんが姫様みたいなのは同意だが」
俺の言葉に彼女は小さく笑みをこぼして言った。
「あら、言ってませんでしたっけ? 私は英国の古い王族の血を引いていますよ」
「……マジですか。す、すいません、なんかなれなれしくしちゃって」
「いや、さっきのままでいいですよ。そこまで肩ひじ張らないで欲しいですね」
そう言われたので俺はほっと肩の力を抜く。
良かった、彼女が優しい人で。
「そんなことをやっていたらボス部屋に着いたみたいです」
確かに草原の中に地下へと続く道が見えた。
それがボス部屋に続く道なのだ。
「じゃあ行くか。もう三時間くらいダンジョンに潜ってるし」
「はい、そうしましょう。しかしレンさんは強いですね」
「い、いやいや! 俺はそんな強くないぞ。ああ、敵がツヨイナー」
ヤバい、気を抜いていた。
ま、まあだからと言って、すぐにランキング一位になっているってバレるわけでもないか。
そう自分に言い聞かせながら俺たちはボス部屋に入った。
***
ボスはファイアウルフという、魔法を使ってくる魔物だった。
俺は剣を構えて対峙する。
「さあ、来い! すぐに決着をつけてやる!」
しかし愚直に突っ込んでは来ず、そいつは火魔法を使って攻撃してきた。
あっ……そう言えば俺は避けれるけど、そしたらアリエスはどうなる?
彼女に戦闘能力があるかどうか分からない。
でももし戦闘能力がなかった場合、俺が避けたらアリエスが当たる。
それだけはマズいと思った俺は、いきなりアリエスを抱きしめた。
「失礼! 避けますよ!」
そして俺は抱きしめたまま飛び退いてその火球を避ける。
ほっ……大丈夫だったか。
俺は息を吐き、アリエスの顔を見る。
すると彼女の顔は真っ赤になって口をパクパクさせていた。
「……あの。急に抱き着かれると少し恥ずかしいのですが」
「す、すまん。でも、アリエスに火球が当たったらマズいと思って」
「私だって少しは戦えます。……レンさんほどではないですけど」
「そ、そうか。それはすまんかった」
しかし彼女は首を横に振ると言った。
「いえ、許しません。この責任は後で取って貰うとして、今はあの魔物を倒してください」
「責任……。と、とりあえず片づけてくるわ」
俺は剣を片手に飛び出し、一瞬でファイアウルフを一刀両断する。
うん、そこまで強くはないな。
経験値はペンダントに引き寄せられ、少し緑色になった。
そしてボス部屋の奥の扉が開き、転移ゲートが開通する。
「帰るか……」
「そうですね。そうしましょう」
そして俺たちは転移ゲートを潜り、地上へ出るのだった。
***
「で、責任ってどうすればいいんだ?」
地上に出て車に乗り込むと、俺はアリエスにそう尋ねた。
彼女はそれに微笑みながらこう答える。
「ああ、それはですね。私と決闘をして欲しいのです」
「……へ? 決闘?」
「そうです。レンさん……いえ、探索者ランキング第一位の斉藤レンさんならば、私に勝てるかと思いまして」
そう言われ、俺は思わず固まってしまうのだった。
そんな俺を見て、彼女は悪戯が成功したような表情をしていた。




