根っこでも
玉葱を引き抜いた後、
残った穴に、棒を斜めに
挿し込んでから抜き取る。
そこに、薩摩芋の蔓を
挿してゆく。
ちょうど梅雨の頃、
昼間に暑くなっても、
土が乾かないのがいい。
すぐに、蔓から根が
出てくるから枯れない。
土は玉葱の根が伸びて
耕されたようで、
養分も減ってくれている。
蔓ぼけしがちな
薩摩芋には好都合だ。
好都合と言う言葉は、
このためにあると
思ったりするぐらい。
六月はこの作業で忙しい。
畑に行っては蔓を挿す。
一つの薩摩芋が芽を出し、
蔓を伸ばしてくれる。
それを切って挿してゆく。
七月、八月、九月と、
ひと夏の太陽の力を、
ぎゅっと集めて根が芋に。
薩摩芋という太陽の味、
やはりお勧めしたくなる。
ホクホク、ネットリ。
薩摩芋にも色々な種類が、
ずいぶん増えてきた。
それに流行りだとか。
スイーツだとか言って。
焼き芋や天ぷらや
干し芋や栗きんとん。
毎年育ててきた。
とにかく秋が楽しみ。
初夏に秋を眺めている。
掘り起こした時の色。
その赤っぽい色が、
美しく思えてならない。
だけど、薩摩芋だけは
嫌だと言う人もいる。
戦争を思い出すからと、
見るのも嫌だと言う。
薩摩芋の悲しい色を思う。
歴史は繰り返すのか、
前に進むのか、戻るのか。
平和な国の今の時代、
何を語るにしても、
それは、永遠じゃなくて。
薩摩芋にしても、
いつかは挿せなくなる。
自分一人だけの力で、
毎年、何かしら育てていると、
勘違い、しませんように。
今、挿せている理由を、
よく感じられますように。
薩摩芋は身近にあって、
秋を楽しませる糧であり、
身を正せる根っこでもあった。
ちなみに挿しているのは、
今年もシルクスィート。