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田舎の一軒家

作者:

SS


暇つぶしに書いたやつの供養

ロクなものではない

工場勤務の男がいた。

毎日毎日同じライン、同じ箇所で不良部品を見つけて取り除くだけの仕事。

給与は安く、勤務時間は長い。職場の寮に住み、家に帰ればカップラーメンを食べて寝るだけの生活。

そんな彼だったがが、夢のためにコツコツと貯金をしていた。


都会の喧騒から離れた、静かで、のどかな田舎で一軒家を持ち、大好きな猫と過ごすことが夢だった。

35歳を超えた頃、退職金を合わせれば十分といえるだろう金額が貯まった。

作業長に無理を言って休みをもらい、不動産屋へ足を運ぶ。話をすると、ある物件に目が留まる。


賃貸の一軒家、1LDK風呂トイレ別、ペット可、周りにあるのは田んぼくらいの片田舎。これで月1万円。

どうやら事故物件のようで、それゆえの値段らしい。

即決といっても過言ではなかった。事故物件というのは少し気になったが、夢が叶うとなれば気にしている場合ではない。


手続きはスムーズに進み、来月には入居が決まった。


退職願を提出し、残り少ない工場勤務に努める。向こうでの生活を思うと、退屈で憂鬱なはずの仕事がなんだか晴れやかな気分で行える。

向こうでの仕事ももう見つけてある。なんとかコンビニにアルバイトだが決まった。

ペット可なんだし、猫を飼おう。写真で見るより実際に見にいった方がいいよなやっぱり。

混血にも可愛いのがたくさんいるなぁ、アメショはやっぱり王道かなぁ、ロシアンブルーもいいなぁ。住居のための貯金はだいぶ余裕があるし、予算は気にしなくてもいいし、せっかくだから子猫から育てたいなぁ。


そうこうしているうちに引っ越し当日。レンタカーでバンを借り、少ない家具を運ぶ。

慣れない作業かつ一人での作業、丸一日かかってようやく終わった。作業の中で気づいたんだが、この辺りは野良猫が非常に多いみたいだ。手懐けられれば猫まみれの生活、夢のようだ。

住み始めて今日でちょうど1ヶ月になる。アルバイトも最初は大変だったが、徐々に慣れ、今では充実した生活が送れている。工場勤務の時より給与は安いが、ここは物価が安く、なんだかんだでお金に余裕はある。

何より一番いいのが、家に猫がたくさんいること。

可愛い猫を見つけては少しづつ餌付けしていって、家へ招き入れる。猫のご飯代が今一番の支出になっている。

最近だと、なんとなくだが猫たちが喋っていることが理解できるようになってきた。猫によってペットフードにも好みがあるようで、一匹一匹同じものでも感想が違う。


こんなに猫たちに囲まれて生きていると、猫に生まれたかったとつくづく思う。人と猫の関係より猫と猫の関係に憧れる。


そういえば、ここは事故物件らしいが、特に心霊現象の類は全く起きていない。もともとオカルトの類はあんまり信じていないが、多少気にしてはいた。杞憂だったらしい。

前住んでいた人の死因くらいは聞いておくべきだったかとか考えて、どうでもいいかと思う。

最近猫たちと会話できるようになった。どのように体調が悪いのか程度は話してわかる程度には。

この前気になって、ペットフードを一緒に食べて見た。案外悪い味ではないが、好んで食べようという味ではない。でも猫たちと一緒に食べるご飯は、なんだか暖かな気分になれた。

猫たちと食卓を囲むようになってしばらくが経つ。最近アルバイトがひどく疲れる。よく痩せすぎと言われるが、結構栄養価の高いものを食べてるはずなんだが、どうも痩せる一方だ。

家に帰ればたくさんの猫が待っている。今日もみんなと一緒にご飯を食べて、一緒に寝る。お風呂はなかなか入ってくれない。

「衰弱死みたいっスね。この家にまともに食料ないみたいですし。猫が好きだったみたいで、ペットフードだけは充実してますが。」

「この物件の契約者の衰弱死4件目だぞ、勘弁してくれよ」

「んー、事故物件ってやっぱりなんかあるんスかね?前の人はどんな感じだったんスか?」

「前の人は爬虫類に目がなくてさ、そのときも爬虫類の餌、つまりは虫とかだけは充実していたんだわ。」

「うぇぇ、俺マジ虫無理なんスよねぇ、そんときいなくてよかったっスわ。取り潰したほうがよくないですか?」

「こんな物件潰そうとしたら祟られそうだしけどな」

「ハハハハハ」

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