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ゾンビハンター部が全国制覇を目指すそうですよ!  作者: 山田の中の人
全国大会 予選
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第79話 一夜明けて


 スパ―――ン!


 「ふぎゃーー!」


 キャンキャン! キャンキャン!


 毎朝の恒例行事と化した篠の悲鳴が今朝もご近所に響く。

 悲鳴に驚いたのか、お隣さんのチワワが騒ぎ始めた。


 はぁ……もう止めたらどうだ? 朝に弱い篠には無理だろ?



 

 昨日の予選が終わって家に戻ってから、幾つか騒動が起こった。


 まずは八幡西高校の不正発覚事件。

 これがテレビ番組でも大きく取り上げられて、日本列島が揺れる程の大問題へと発展した。

 

 普段ゾンビハントに関する情報は、テレビ番組やニュースでは絶対に報道されない。

 ゾンビハンターという職業の人物がテレビに出演している事はあっても、ゾンビハントに関する情報は、ゾンビハンター新聞でしか得られないようになっていた……筈だ。

 ゾンビのゾの字が見えただけで目を背けていたので、確かな事は言えない。

 ゾンビハントの模様を楽しみたい人は、是非スタジアムまで足を運んで下さいね、というのがゾンビハンター社の経営スタイルらしい。


 それが家に帰ってテレビを点けると、各局が争うようにして八幡西の不正を報道していた。

 何故か取材陣は家に押しかけて来るし、対応に追われて飯を食う時間も取れない程だった。


 「コレはどブサにゃん極と言いましてぇー、お父様が経営するコチラの工場で――」


 生放送だという事を聞いた霧姉は、質問には答えずここぞとばかりにCMしまくっていたけど。


 記者達に対してゾンビハンター社は、田井中専務から詳しく事情を聞いてからではないと何も答えられないと沈黙を続けている。

 明日以降は更に報道が過熱しそうだ。



 そして――


 「やったぞ霧奈、雄磨! これを見てくれ! うははー! スゲー!」


 無造作に札束が押し込まれた鞄を抱えてオヤジが帰って来た。


 「……おい、どうしたんだよその大金。まさか、犯罪に走ったんじゃねぇだろな?」

 「父親に向かってなんて事言うんだ馬鹿野郎。んなワケねぇだろ」

 「父さん、ご苦労様でした。じゃあ仕事がいーっぱい溜まってるから工場に戻ってねー」


 霧姉がオヤジから現金を奪い取るようにして全額回収すると、オヤジの背中を押して工場へと向かわせた。


 「あの、霧奈ちゃん? お父さんにもお小遣いなんかは――」

 「はいはいお仕事が溜まってますよー? 急いで戻って下さーい」

 「いやあのお父さんはだな、そろそろ寝ないとぶっ倒れそうで――」

 「今が頑張り時ですよー? 倒れたら私がベッドまで運ぶから大丈夫でーす。それまで頑張って下さーい」

 「そういう問題じゃなくて……き、霧奈ちゃ――」


 食い下がるオヤジを無視して、霧姉は工場へと向かう通路のドアをピシャリと閉めた。


 「……本当にぶっ倒れたらどうすんだよ」

 「フン、いいのだ。このくらい忙しくさせておかないと、また母さんの仏壇の前にへばりつくだろ?」


 ……そういう事か。

 それなら小遣い渡して、気分転換にでも行かせればいいのに。


 オヤジの小遣いがないのに、俺の分があるわけないよな……。


 カジノで『滋賀県大会 樫高優勝』にベットしていた分が払い戻されたのだ。

 一体何円賭けたのか知らねぇけど、決勝戦で発見したお宝の半分くらいの現金が、リビングのテーブルに積み上げられた。

 最初に聞いた話では、この現金を更に『選手権全国大会 樫高優勝』に全額ベットすると言っていた。


 「事実上の決勝戦だった滋賀県大会を、圧倒的内容で勝ち上がったのだ。かなりオッズが下がるだろう」


 的中させても全然儲からないと嘆いていたので、別の事に使いそうだな。



 




 「た、大変だぞ雄ちゃん!」

 「何だよ朝から騒々しいな」


 一足先にリビングに降りてコーヒーを飲んでいると、霧姉が慌てた様子でテーブルの上に新聞を広げた。

 通常の新聞ではなくゾンビハンター新聞だ。

 

 『田井中氏、緊急入院』


 一面に大きな見出しが出ていた。

 き、緊急入院?

 慌ててテレビを点けてみると、同じく緊急入院のニュースを取り上げていて、コメンテーター達が大騒ぎしていた。


 「……何だこれ。息子じゃなくてオヤジの方だろ? 何で入院したんだ?」

 「恐らく政治家が良く使うアレだろう。都合が悪くなると緊急入院して、ほとぼりが冷めるまで待つか、入院中に言い訳を考えたり、証拠を隠滅したりするのだろう」


 新聞には体調不良を訴え病院に搬送されたと書かれている。

 息子を亡くして体調を壊したという可能性もなくはないけど、まぁ霧姉が言った通りだろうな。


 ……証拠の隠滅ってところが怖いけど。


 『ピピピピッ……』


 篠がリビングに降りて来るのを待っていると、霧姉の携帯に着信が入った。


 「おはよー、……見た見た。今丁度雄ちゃんと見たところだ。……ああ、……分かった。用意してすぐに向かうよ」

 「誰だったんだ?」

 「彩芽からだ。何やら重要な話があるから、今から部室に集合して欲しいそうだ。朝ご飯を食べたらすぐに向かうぞ。……鏡ちゃーん! 急いで用意してご飯を食べてくれー!」


 瑠城さんからの重要な話か。

 ハッキングでまた何か情報を掴んだのか?





 学校へ向かう最中、篠の機嫌が良い事に気付いた。


 「どうしたんだ? 何か良い事でもあったのか?」

 「フフフ、遂にやりましたよ! 私、朝のタバスコジュースを回避したんですよ! 日頃の特訓の成果が現れました!」


 篠は鼻歌交じりで足取り軽やかに歩いている。

 そういやハリセンで叩かれた時の悲鳴は聞こえて来たけど、タバスコ入りジュースを飲んだ時の変な悲鳴は聞こえて来なかったなぁ……。

 俺の背後では霧姉がガックリと肩を落としていた。


 「……毎日毎日一つしか用意していないタバスコ入りジュースを確実に選ぶから、流石におかしいと思ったのだ。もしかしたら鏡ちゃんがカップを取る時に特異な能力が働いて、タバスコ入りジュースにすり替わっているのではないかと」


 こっそりと教えてくれたのだが、霧姉の表情は至って真面目だ。


 「んな馬鹿な」

 「私もそう思ったぞ? でも三分の一を延々と引き続けるなんて流石におかしいじゃないか。だから今日は試しに全部野菜ジュースにしてみたのだ」


 ……それで今日は野菜ジュースが飲めて喜んでいるんだな。

 この事は篠には内緒にしているみたいで、霧姉は唇に人差し指を添えて『シーッ!』と囁いている。


 「私ももうすぐ水亀君みたいにお宝を発見出来るようになりますよー!」


 これは危険を回避する特訓なんだけど……。

 喜んでいる篠を見て、口を紡ぐしかなかった。



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