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ゾンビハンター部が全国制覇を目指すそうですよ!  作者: 山田の中の人
滋賀県大会 決勝
79/135

第77話 アキちゃんと泉さん



 「ぅをりゃー!」


 バキッ!


 帰還船に乗船してすぐ、霧姉が鍵の掛かったジュラルミンケースをパワーでこじ開けた。

 ……まぁ、鍵が見つからなかったし仕方ないんだけどよ。俺が鍵を開ける訓練、必要なかったんじゃねぇか?


 そしてどんなに水着が映える美少女でも、もう嫁の貰い手は見つからないだろうな。


 「「「「おおー!」」」」


 ジュラルミンケースの中身は……見たこともない大金だった。

 ケースを開放した勢いで、帯で束ねられた札束が船上にぶちまけられてしまった。


 「やったぞ雄ちゃん! これで税金が払え――」

 「ちょっと待ってくれ霧姉!」


 散らばった札束を両手でガシガシと掻き集めていた霧姉の動きがピタリと止まった。


 「……何だ? 雄ちゃんの取り分はないぞ?」


 ……いや、知ってたけどよ。


 「そうじゃねぇよ。この現金、ここに居るみんなで山分けにしねぇか?」

 「はぁ? どうしてだ? 雄ちゃんが回収して来たのだぞ? それに山分けにする約束なんてしていないじゃないか」

 「そうだけどよ、今回の決勝戦はレイドボス戦だっただろ? ここに居るみんなで協力して戦ったんだし、それに最後まで誰一人抜け駆けせず、約束通り俺達に勝利を譲ってくれたじゃねぇか」

 「いや……まぁそうだけどさ……」

 「俺達は全国制覇して賞金を得るんだろ? ここでがめつく独り占めしなくてもいいじゃねぇか。今日の勝利はみんなの勝利! それでいいじゃねぇか」

 「ぅぐ……」


 瑠城さんや泉さん、篠にも視線を送ってみると、無言でコクコクと頷いてくれた。


 「わ、分かったよー。山分けにするよー。このままじゃ私がケチみたいじゃないか……ぐぬぬ……税金……」


 霧姉はブツブツと呟きながら札束の勘定を始めた。


 「ほ、本当に良いんですか?」

 「ああ。みんなには手伝って貰ったし、危険な目に遭って手ぶらで帰――」

 「ぅおっしゃー! やったぜー!」

 「マジかよ! 超太っ腹じゃん!」

 「これで初めて親孝行出来るぜー! 母ちゃん、温泉旅行プレゼントすっからなー!」

 「島の支配者アイランドルーラーさん、超イケメンだよー!」


 まだ南彦根高校の部長さんと話している最中だったけど、各校の部員達が大はしゃぎし始めた。

 嬉しそうに水着女子が抱き付いてくれたけど、俺は決して鼻の下を伸ばしてなんかいないぞ。決してだ。


 これだけの人数が居れば、一人分はそんなに多くなさそうだ。

 むしろSSSランクのナーガ改バベルタイプと戦ってこれだけじゃ、少ないと思うんだが?

 みんな凄く喜んでくれているみたいだし……まぁいいか。




 船上ではみんなが現金を手にして浮かれている中、非常に係わり辛い雰囲気を出している場所がある。


 「師匠! ホンマにすんませんでした!」

 「アタシはアンタの師匠じゃないよ」


 アキちゃんがビシッと頭を下げても、泉さんの態度は冷たいまま変わらない。


 「おじいちゃんの事や家の事を黙ってて、ホンマにすんませんでした!」

 「アタシには関係ないよ」

 「聞いて下さい! M社は代々親族で経営してるんは確かですけど、ウチとM社は関係ないんです!」

 「……」

 「ウチにはアニキが三人も居てますし、その誰かが将来的にM社を継ぐんは間違いないと思てます。そやしウチは高校卒業したら師匠と同じ考えで、M社とは別のウォーターウェポンブランドを立ち上げるつもりで、ずっと前から準備してたんです」

 「……それなら尚更アタシの技術を教えるんじゃなかったよ」


 普段からきつめの泉さんの視線が、より一層鋭さを増した。


 「……でも今日師匠に出会って、色々教えて貰って、改めて自分の実力不足を痛感しました。……師匠の改造は破壊力だけじゃなくて、見た目の精巧さ、美しさも全てウチの実力を遥かに凌駕してました。しかもあんなにも短時間で、ミスもなく改造するなんて……ぐふふ」


 泉さんが改造しているシーンでも思い出しているのか、アキちゃんは何処か遠くを眺めながら口元を緩めている。


 「は……す、すんません。とにかく、ウチは感動したんです……師匠の腕にホレ込んでしもたんです! ……そして確信もしました」

 「確信?」

 「はい。ウチがこのままブランドを立ち上げても、師匠が立ち上げるブランドとは実力が違い過ぎて太刀打ち出来ひん、必ず失敗するって」

 「……」

 「ウチが所属してるウォーターウェポン部で、その中でも特に優秀な三名を既に引き抜いてます。ウチ等を師匠が立ち上げるウォーターウェポンブランドで雇って下さい! お願いします!」

 「いやいや、ちょっと待って! まだ立ち上げてもいないのに、雇えるわけないでしょ!」

 「他の三名を含めてお給料は暫く要りませんから! 元々そういう約束です! 絶対大丈夫ですよ! 師匠は全国大会で優勝しますし、必ず新しいブランドを立ち上げます! ウチ等の情報では世界中の富豪達が、師匠の作ったウォーターウェポンを買う為にウォーミングアップを始めてるって聞いてます! ウチ等はめっちゃ使えますよ! 注文が殺到しても捌き切れへんかったら意味ないですよ!」

 「あ、ああの、ちょっと落ち着きなって!」


 押しが強いアキちゃんの迫力に、泉さんがたじろいでいる。


 「とにかくウチとM社は関係ないです。どっちを選ぶか聞かれたら、ウチは間違いなく師匠を選ぶ。師匠が望むなら、ウチは今この場で実家と絶縁宣言してもエエですよ」


 泉さんが将来自分のウォーターウェポンブランドを立ち上げると宣言した時と同じで、アキちゃんの瞳にも嘘偽りは一切感じられない。

 あの真剣な眼差しを向けられて、泉さんは断れるのだろうか。


 「……分かったわ。アンタ――アキちゃんの言う事は信じるよ」

 「ホンマですか! ありがとうございます!」

 「ただし! アタシが納得したのは、アキちゃんがM社と繋がりがないってところまでよ。アキちゃんや他の子達を雇う云々って話はまだまだ先の事よ」

 「はい! ありがとうございます!」


 もう一度ビシッと頭を下げたところで、アキちゃんは腰から砕けるようにその場に座り込んでしまった。


 「ぅう……良かった。……師匠に嫌われずに済んで良かった」

 「……アタシもちょっと言い過ぎなところがあったよ、悪かったわね」

 「し、師匠はなんも悪ないです! ウチが大事な事言わんと黙ってたからアカンのです……」


 どうやら上手くまとまったみたいだな。

 良かった良かった。


 さっきまで現金を手にして浮かれていたみんなも、ちょっとしんみりとしたムードになっていた。


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