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ゾンビハンター部が全国制覇を目指すそうですよ!  作者: 山田の中の人
滋賀県大会 決勝
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第76話 処遇



 歩いている俺達の場所から沖ノノ島漁港はほんの目と鼻の先で、軒先に金色の魚のオブジェが乗っかった店舗の前を通過したところ。

 琵琶湖上では穏やかな波間を進むスタジアムへの帰還船が、沖ノノ島漁港の防波堤近くにまで迫っていた。


 「あのー、一つ質問なんですが、どうして田井中が噛まれていた事を我々に報告してくれなかったんですか?」


 南彦根高校の部長さんが、ふと疑問に思った様子で尋ねて来た。

 部長さん達には、後で説明するからって言って話を引き伸ばしていたからな。


 みんなに話さなかった理由は大きく分けて二つ。

 一つは田井中が噛まれていると教える事で、田井中を狩って欲しくなかったからだ。

 伊富貴のヤツが田井中に噛まれないと、八幡西のポイントは消滅しない。

 幸いにもミストアーマーを着用せずに手ぶらで沖ノノ島漁港へ戻った伊富貴が、ゾンビ化した田井中に噛まれる可能性は高かった。

 伊富貴に出し抜かれてしまった直後だったし、慎重になるのは当然だ。

 他校の部員達が育成だか何だかで田井中を高ランクゾンビに変異させて……とか、ポイント差で面倒な事になってしまうのを恐れたからだ。


 ただしこの理由はみんなに説明する必要はないと思う。

 面倒事を避けたかっただけで、本当の理由はもう一つの方だから。


 「えーっとですね。……みんなと田井中の処遇について相談したかったからです」

 「「処遇?」」


 言っている意味がよく分からないみたいで数名が声を揃えた。


 「田井中に止めを刺すのか、刺さないのかって事です」

 「ああ、そういう事でしたか! あんな奴、勿論このまま放置ですよ、放置!」

 「そうだそうだ! みんなが真剣に試合に取り組んでいるっていうのに、自分達だけ不正していたんだからな!」

 「いい気味だ! あんな野郎、一生研究材料にされればいいさ!」

 「俺達を罵倒しやがって!」


 各校の部員達からは『田井中は放置』という意見が圧倒的多数。

 まいさんと麻美さんは、ちょっと居心地悪そうに複雑な表情を浮かべている。


 「そうだなー。私も将来田井中狩りをしてみたいしなー」

 「ウフフ、試合に登場すれば誰が狩るかで競争が起こりそうですね」

 「そうなったら、アタシが一発で眉間をぶち抜くよ」


 霧姉達も放置で賛成みたいだけど、篠は別にどちらでもいいらしい。

 会話に混ざる事なく、落としてしまったポーチを手に取り気にしている様子。

 どうかしたのか後で聞いてみるか。


 「では田井中達には止めを刺さずに、このまま沖ノノ島に放置して運営側に回収させよう」


 俺の考えた通り、すんなりと田井中は放置に決まったな。


 実は俺、あんな奴等でもゾンビハントでは死んで欲しくないと考えている。

 そりゃー勝負の行方が掛かっていたから、伊富貴にはゾンビに噛まれていた田井中の事を教えなかったけどよ。


 そしてこれはあくまで俺の考えだが、ゾンビウィルスのワクチンが研究施設で作成されていてもおかしくねぇ。

 様々な研究を何十年も続けているみたいだし、公表していないだけで最悪の事態を想定して用意されているんじゃねぇのかと思っている。

 

 田井中のオヤジはゾンビハンター社の権力者だ。

 本当にワクチンが存在するなら、運営側に田井中を回収させれば助けて貰えるだろう。

 伊富貴のヤツは賭けだな。

 回復した田井中が助けてやってくれと親父に頼めば、何とかなるかもしれねぇ。


 この話はまた今度瑠城さんに聞いてみるとして、今はまだ黙っていた方が良さそうだ。



 「あの二体、桟橋の上に居るみたいなんだが、ここから大声で叫べば近寄って来ると思うか?」


 桟橋に停泊している漁船が視界を遮り、二体のゾンビは目視出来ない。  


 「フン、このまま歩いて近付けば嫌でも寄って来るだろう。狙撃銃タイプのウォーターウェポンを持っている者は準備してくれるか? 奴等が近寄って来たら両足を撃ち抜いて動けなくしてくれ」

 「「「はい」」」

 「痛めつけたい気持ちは分かるけどさ、やり過ぎちゃ駄目だぞ? 浄化しちゃうからな」

 「「「アハハー!」」」


 霧姉達のやり取りを聞きながら、漁港内の水辺を歩いて桟橋に向かっていると――


 「「ゥガァァーー!」」


 桟橋から漁業センターの前を通過し、二体のゾンビが走ってこちらに向かって来た。

 

 「ウフフ、ブラッディドラゴンさん、二つ名通りの容姿になってしまいましたね?」

 「それにゾンビ化してちょっとイケメンになったと思わない?」

 「言うなよ彩芽、泉! ププッ、笑いが止まらないじゃないかー」

 「「「アハハー!」」」


 田井中は右腕を失っていて、自分の血なのか伊富貴の血なのかは不明だけど、全身真っ白だった衣装が、今では真っ赤に染まっている。

 なるほど、ブラッディドラゴンね。

 返り血を浴びた衣装が真っ赤に染まるから、とかそんな理由で名付けられたみたいだな。

 どうでもいいけど。


 その田井中の背後から追い掛けて来るのは、オレンジ色を基調としたカラフルなビキニ姿の伊富貴。

 首から肩にかけて大きく欠損しているので、頭が不安定にフラフラとしている状態で走っている。

 ゾンビ化しても、していなくても気持ち悪い奴だ。


 前に出てウォーターウェポンを構えた四名の部員達。

 まいさんと麻美さんは狙撃に参加しない様子。

 流石に元八幡西の部員達を痛めつけるのには抵抗があるみたいで、泉さんにウォーターウェポンを手渡していた。


 タンッ! タタタンッ!


 各部員達の狙撃の腕前はなかなかのもので、両足首の辺りを見事に撃ち抜くと、走っていた田井中が盛大にすっ転ぶ。

 その背後の伊富貴も同様に足首を撃ち抜かれて転倒したのだが、その際カクンと首がもげそうになっていた。


 「ゥガガ……」

 「ガゥァ……」


 二体が不安定な足首で立ち上がろうともがき始めたので、追加で膝が撃ち抜かれた。

 今度は流石に立てない様子。

 それでも尚這ってこちらに向かって来るのだが、そのスピードは極めて遅いので最早脅威とはならない。 

 みんなが二体のゾンビから安全な距離を保って迂回するのを確認しつつ、俺と篠が最後尾から追従する。

 何事も問題は起こらなかったので、ウガウガ気持ち悪い声を発している二人を残し、そのまま桟橋へと向かった。

 


 応募していたネット小説大賞の一次選考を、奇跡的に通過しました。

 落選していれば滋賀県大会の決勝が終わった段階で、更新打ち切りへと話を変更しようかとも考えておりましたが、このまま最後まで書き続けたいと思います。

 皆様の応援が更新の原動力となっています。本当にありがとうございます。

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