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ゾンビハンター部が全国制覇を目指すそうですよ!  作者: 山田の中の人
滋賀県大会 決勝
71/135

第70話 戦闘開始


 「みなさん、脱げる方は急いでミストアーマーを脱いで下さい! ナーガ改バベルタイプ相手では、ミストアーマーは邪魔になるだけです」

 「「「「は、はい」」」」


 ウチの部の女子達は下に水着を着用しているので、躊躇なくミストアーマーを脱いでいく。

 しかし他校の部員達の中には水着を着ていない者も居て、下着一丁になっている者もチラホラ。


 ……下着姿なのは全部野郎共。派手なトランクスなんて見ても何も嬉しくない。

 残念な事に女性陣はミストアーマーの下に、しっかりと水着やTシャツ短パンを着込んでいた。


 「ナーガ改バベルタイプの攻撃で厄介なのは、なんと言ってもあの両腕の鎌でしょう。防ぐ事は出来ません。何とかして避けて下さい」

 「「「「……」」」」

 

 瑠城さんがグラウンドの地面に図を描きながら、作戦とフォーメーションの確認を行っている。

 各校の部員達はその図と瑠城さんを取り囲むようにして立ち、作戦を頭に叩き込んでいる。

 偵察で防波堤に残っていた湖南中央高校の男子部員も、作戦会議の輪の中に滑り込んで来た。

 八幡西の女子達も一応作戦を聞いているみたいだが、……既製品のウォーターウェポンでは多分役に立たない。

 戦闘が始まれば、グラウンドの隅で死なないように待機しててくれ。

 アキちゃんは当然のように泉さんの傍から離れない。


 「バベルタイプを浄化させるのは厳しいと思います。蒸気でナーガの動きが見えなくならないよう、攻撃量に注意して下さい」

 「「「「はい!」」」」


 みんなが生き延びる為に必死だ。


 「動きに関してですが……二刀乱舞さん、少しでもいいのでナーガ改バベルタイプの特徴を説明してくれますか?」

 「わ、わたしが……ですか?」

 「はい、お願いします。以前大丈夫そうだって仰っていましたので」

 「でも、上手く説明出来るかどうか……それに、人前で――」

 「俺からも頼むよ二刀乱舞さん。二刀乱舞さんのアドバイス一つで、みんなが生き延びられる可能性が高くなるんだ。時間がねぇから手短に頼めるか?」


 グラウンドに屈み込み、一段と小さくなっている篠に、みんなの視線が集まる。

 そんな篠が俺を見上げているので、頼んだぞと小さく頷いた。


 「……分かりました。上手く伝わるかどうか分かりませんが……」


 篠はスクッと立ち上がり、ちょっと恥ずかしそうにスカートを両手でパンパンと払った。


 「……手が長いので手が届く範囲に入っては駄目です。距離を取って下さい。一撃が重いですが、体の線が細いので鎌を振ると大きくバランスを崩します。そこを狙います。尻尾が短いので踏ん張りが効きません。懐に飛び込めば鎌での攻撃は受けません。あの蛇は……とにかく体のバランスが悪いです」

 「上出来だ二刀乱舞さん」


 霧姉が背後から篠の両肩を優しく抱き、褒めるようにポンポンと叩いた。


 「もっと説明して欲しいのだが時間切れだ」


 霧姉が見つめる視線の先では、ナーガ改バベルタイプが巨体をうねらせて背の低い木々を薙ぎ倒し、グラウンドに立ち入ろうとしていた。


 背の高さは十メートル程だが、尻尾の先まで合わせると体長は十五メートル程か。

 篠が体のバランスが悪いと言っている通り、人間の胴体部分の長さと尻尾の長さが合っていない気がする。

 アレックスと同じバベルタイプで、全身がペンキで塗り潰したように真っ青で、胴体や腕は細い。

 二の腕中ほどから鎌になっている両腕は異常に長く、移動する際には地面に着いてしまっていて、地面や木々をバリバリと削り取っていた。

 この巨体になれば移動するのも一苦労といったところだ。

 今のところすぐに襲い掛かって来る気配はない。

 細くて長い舌をチロチロと出し入れしながら、切れ長で鋭い瞳を真っ赤に光らせてグラウンド全体を見渡している。

 待ち構えていた俺達の様子を窺っているみたいだ。

 どうやら他のゾンビ達とは違い、高い知能を持ち合わせているようだ。

 その間に各校の部員達が、ナーガ改バベルタイプを中心として扇形を描くように広がり陣形を整えた。


 シュルルル……


 短い尾の先を細かく震わせカラカラと音を鳴らしている。

 こんな蛇が実際にいるらしいが、今はそんな事を考えている場合じゃねぇ。


 ナーガ改バベルタイプとの距離は凡そ六、七十メートルといったところ。

 瑠城さんが右手をスッと上げると、遠距離系ウォーターウェポンを装備した部員達の一斉攻撃が始まった。

 大量の水を浴びせられた細い胴体部分から、夥しい量の白い蒸気が立ち込めている。


 「泉さんは撃たないのか?」

 「うん。今回のへカートⅡの改造、ちょっと耐久性に問題があってさ。ここぞって時の為に温存しておきたいのよ。出来ればアタシが狙撃する前に終わってくれるのが一番いいんだけどね」


 寝そべってスコープを覗き込んでいる泉さんと、その隣で泉さんの手伝いをしているアキちゃん。


 「か、固っ……!」


 二人掛かりでポンプ圧を上げているのだが、レバーが相当固いみたいでスライドするスピードは遅い。


 「シャァァ―――!」


 立ち昇る蒸気をかき分けて姿を現したナーガ改バベルタイプ。

 攻撃を受けた部分は真っ青な皮膚がボコボコと泡立つように蠢いている。

 確実にダメージは与えているようだが、倒すまでには至っていない。

 そんなナーガ改バベルタイプが真っ先に向かったのは、一番湖岸沿いに陣取っていた南彦根高校のところ。

 今の一斉攻撃で放たれた、どデカいバズーカ砲みたいなウォーターウェポンの一撃が気に食わなかったのか、効いたのだろうか?

 バズーカ砲の二発目を急いで装填しているみたいで、その間部員達で援護射撃を行っているみたいだが、ナーガ改バベルタイプの動きは止まらない。


 「駄目です部長さん、みなさん! 逃げて下さい!」


 瑠城さんが叫んだ時には、ナーガ改バベルタイプが右腕の大鎌を天高く振りかぶっていた。


 「「ぅ、ぅわぁーー!」」


 南彦根高校の部員達は手にしていたウェポンを放り出し、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑い始めた。

 そんな獲物を一匹たりとも逃すまいと、ナーガ改バベルタイプは横薙ぎ一閃のモーションに入る。


 各校の部員達も援護射撃を繰り返しているのだが、それでもナーガ改バベルタイプの右腕は止まらない。

 このままでは南彦根高校の部員達は、誰一人として助かりそうもないと諦めかけたその時――


 「……指先に力をお与え下さい」


 背後から聞こえて来たのは泉さんのお祈りと、銃が暴発してしまったのではないかと疑ってしまいそうになる射撃音。

 直後にナーガ改バベルタイプの顔が、平手打ちで横っ面を叩かれたように大きく弾け飛び、巨大な鎌の一撃は大きく逸れて宙を切り裂いた。

 射撃音には金属が軋む音が混ざっていた気がするのだが、余程無理して火力を上げたのだろうか……。


 「雄磨! 急いで給水して!」


 泉さんは大急ぎでライフル銃の給水口を解放している。


 「あのよ、次からは撃つ前に知らせてくれるか? 射撃音で耳がおかしくなりそうだ」


 タンクのノズルをライフル銃の給水口に突っ込む。

 スイッチオンで給水開始。本来ならコレが俺の仕事だ。


 「文句言わないの。でもちょっとマズいなー。フレームの強度が足りないし、威力ももうちょっと欲しいし……そうだ、ちょっと霧ちゃんコッチ来てー」

 「なんだ? 私はこのハンマーでぶっ叩くタイミングを図っているのだが――」

 「アタシ達じゃさ、このレバーをスライドさせるのに力が足りないのよ」

 「フフン、そういう事なら任せてくれ」


 霧姉がライフル銃を受け取ると――


 シャコシャコシャコシャコシャコシャコシャコシャコ……


 物凄い速さでポンプ圧を上げ始めた。

 さっき泉さん達は二人掛かりで凄く固そうにスライドさせていたはずだが……この馬鹿力め。


 「ちょ、霧ちゃんやり過ぎやり過ぎ! 壊れちゃうって!」

 「何だ、もういいのか。これから本気を出すところだったのに」


 霧姉は口を尖らせてライフル銃を泉さんに返していた。

 この緊迫した状況で何をやっているんだよ……。



 「瑠城先輩、粟生先輩、霧奈お姉さん。作戦があります」


 俺達の一番前で構えていた篠が、背中のリュックから二本のセイバーを引き抜いた。



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