98話 暗部
「これからどうするの…って聞く必要はないわね、場所は分かってるの?」
しまかぜを操縦しながら横目で憐斗を見る。
「場所なら…」
そう言い憐斗は夕立とちょうど梨絵と共に艦橋に入ってきた信濃に視線を向ける。視線を感じた信濃は憐斗と目が合い思わず身構えてしまう。
「心配するな、なにもしない」
「べ…別になにも思っていません!」
「思ってたな…」
「だね〜」
「そこ!うるさいです!」
自分をからかう大和とマチルダを見て顔を赤らめながら必死に否定する。
「あの…いいか信濃」
「っ…!」
指をさしたまま固まる。
「な…なんですか?」
「二人なら知っているんだろ?政府の隠れ家を」
「はい、存じてますわ」
「秋葉原と渋谷」
「2つも…」
玖由はなにかいい案が無いか考えるがそんな玖由の頭に優しく夕立が手を置く。
「心配要りませんわ、どちらかは特定出来ています、秋葉原ですわ」
「そんな怪しいもの前に行った時には無かった」
「奴らの本拠地は地下ですから見つからなくて当たり前ですわ」
その時艦橋の扉が開きしまかぜに追いついた蒼嵐達が姿を現し苦笑いを浮かべながら
「えっと…なんの話してるのか聞いていい?」
と尋ねた。
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「なるほどね、秋葉原に政府の本拠地が…」
一通りの説明を聞き蒼嵐がそう呟くと同時に部屋から出ていこうとする。羽根に気づき渚が呼び止める。その時、羽根は短い刃物を手に取り自分の腕を切る。
「ちょっと怪我をしたので治療をしに行こうかと思って…」
と腕の切り傷から赤い血が流れているのを見せる。
「私も一緒に…」
「大丈夫ですよ、これくらい」
と艦橋を出る。それを見ていた玖由は羽根の嘘を見抜き後を追うため部屋を出た。
「はい…アームズ達は秋葉原に向かうようです」
羽根の声を聞き玖由は物陰に隠れる。
(誰かと話してる…?)
「はい、分かってます私達の事は奴に知られてはならないと言うことは、ですが…」
羽根は気配を感じ自分の腕を切った刃物を手に取り気配の感じた場所に向けて投げる。咄嗟に玖由は身体を仰け反らせ刃物をかわす。そしてこれ以上居れないと悟った玖由はあらかじめ扉を開けていた階段を飛び移るように素早く上に上がっていく。
(聞かれていたのですか…誰かは知りませんがやりにくくなりますね…)
「問題ありません、作戦を遂行します」
と通信を切る。羽根は突き刺さる刃物を引き抜く。その時刃物に切り裂かれて落ちた布に気づき手に取った。
「玖由何処に行っていたのですか?」
「お手洗い」
(今確証が無い事を言って憐斗達を混乱させるわけにもいかない…)
と玖由は嘘をつく。そこに腕に包帯を巻いた羽根が現れる。玖由は羽根の行動に警戒するがそれを馬鹿にする様に羽根はいつもの様に憐斗達と接していた。
(なにが目的なの…)
「これからの作戦はあるの?」
「あぁ…とにかく旧羽田空港に向かう、そこから陸路で秋葉原に向かう、少しでも相手に気づかれるのを避け戦闘するのを防ぎたいからな」
「了解、それならもうすぐ着くわよ」
「っ…!」
「どうしたの?玖由」
様子がおかしい事に疑問をもった羽根が玖由に問いかける。
「なんでもない…」
目を逸らしながら呟く玖由の服が破れていることに気づき羽根は一瞬鋭い目付きになる。
「玖由、話したいことがあるの」
羽根はそう言い玖由の返事を待たずに部屋を出人影がない場所に玖由を連れ込む。
「なんの…つもり」
「話、盗み聞きしてたの玖由だったんだね」
羽根の言葉を聞き玖由は目を見開く。
「どうして分かったのか…って顔してる」
と言い羽根は自分の服の袖をつまみ玖由を見る。玖由は自分の服が切られている事に気づく。
「…羽根、あなたは憐斗達の敵、味方どっちなの?」
「もし敵だったらどうしますか?」
「羽根を倒…」
次の瞬間羽根の姿が自分の前に現れ喉元に刃を突きつけられる。
「憐斗さん達のためと言うのは良い理由ですが玖由に私は倒せない」
(隙だらけなのに隙がない…)
突きつけられた刃を弾き反撃する事は容易だがその後の羽根の繰り出すカウンターが読めず反撃が出来なかった。しかし、羽根は自ら刃を離し自分の腰に隠す。
「でも安心してください、私は敵ではありません」
「なら目的は何?」
「それは言ってはいけないのですが…これ以上誤解されて邪魔をされるのも嫌なので教えてあげます」
「私はある奴を殺す為に居ます」
「ある奴…それは誰?、それに羽根…あなたは何者なの」
「私は暗部部隊の一人です」
「暗部部隊…?」
「人を殺す為の部隊です、あと私の目標を教えていませんでしたね」
と羽根はその者の名を口にする。それを聞いた玖由は目を見開く。
「憐斗はもちろん他の人にこの事を教えたら玖由、あなたも殺しますからね」
羽根はその発言を笑顔で発した。




