80話 繋がり
「っ…くっ…」
「気がついたみたいね」
結彩が目を開けると心配そうに隣のベットに目を向けたままの蒼嵐が呟く。その先には至るところに包帯が巻かれた玖由の姿があった。
「玖由…!」
「1番怪我が酷かったらしいけど大丈夫みたい…でもまだ意識は戻らないって、私も気がついたの昨日だったから…まだよく分からないんだけど」
「昨日って…あれから何日経ったの?」
「4日よ…」
結彩は部屋から見える見馴れた海を見る。
「いつの間に呉に戻ってきたの…」
「夕立が送ってくれたみたい…夕立なら憐斗達と工廠に居るはずよ…っ…!」
蒼嵐は自分の武装の結晶を手に取り悔しそうに下を向く。
「蒼嵐…?」
「私達アームズになれなくなってる…」
「えっ…嘘…」
「嘘じゃないさ」
声が聞こえ振り返ると憐斗が蒼嵐と同じく悔しい気持ちを押し殺す表情で結彩に結晶を渡す。『武装を展開してみろ』と言う様にゆっくりと結晶を結彩の手のひらに置く。結彩は恐る恐る頷きいつもの様に武装、ヘルと気持ちを合わせようとするが結晶はなんの反応も示さなかった。
「本当だ…もしかして私ヘルに見捨てられたの…」
「そんなわけなーい!」
結晶からヘルが飛び出し結彩の懐に飛び込み抱きつく。
「結彩とは今でもベストパートナーだと思ってるから!」
「はぁ良かった」
「でもどうして武装を纏えなくなったのでしょうか…?夕立、何か知ってますよね」
「もちろんですわ、簡単に表すと繋がりが切られたからですわ」
「その繋がりって…」
と夕立は梨絵に2本の糸を要求する。梨絵は裁縫道具の中から取り出し夕立に渡す。
「繋がりは人間とクリークを繋ぐ力ですわ、人間が武装を纏う時はクリークと気持ちを合わせなければ纏うことが出来ませんわ」
と夕立は2本の糸を結び両端を持ちピンと張るように引っ張る。
「ですが紀伊の力はそれを断ち切る事が出来ますの」
夕立は大鎌を小さく振り下ろし糸を切り結ばれていた糸が再び2本の糸となる。それを憐斗達に向けて突き出す。
「今の憐斗様達はこの状態ですわ」
「じゃあ再び武装を纏うにはどうしたらいい?」
「簡単ですわもう一度結び直せばいいのですわ」
と切断した糸を再び結び直し憐斗の手の平に置く。そして憐斗の手を掴み
「憐斗様はわたくしと契約されてもいいのですわよ」
「ふーざーけーるーなーっ!」
大和が飛び出し拳を夕立に突き出すが憐斗に止められる。
「玖由がいるんだぞ…」
目を覚ます気配のない玖由を見る。
「起きないですね…」
羽根が心配そうに近づく。その時玖由の結晶が弾け深碧色のサイドポニーテールを靡かせた女性が姿を表す。梨絵に似た雰囲気のある女性を見て大和は
「瑞鶴…なのか?」
「えぇそうよ」
瑞鶴は手でサイドポニーテールをなびかせる。
「それで何かあったの?」
「あなた達に伝えておきたいことがあるの…これ以上、玖由を戦わせないで」
憐斗達は瑞鶴の言葉に『どうして』という言葉をかけなかった。クリークはパートナーとなった人間について本人以上に把握しているためそのクリークがパートナーを戦闘に出させないようにするという事はただ事では無いという事を憐斗達は察していたのだった。
「本当ならあの攻撃をくらった時玖由は死んでたかもしれないの」
「「っ!?」」
「けど装甲が割れた衝撃で運良く急所を外す事が出来たお陰で今も生きれてる…」
「運良くって…そんな事で済むことじゃないわよ!」
蒼嵐が瑞鶴に詰め寄る。
「それで済むのが私と玖由なの!」
瑞鶴が蒼嵐を睨むように視線を向けながら言い返す。
「運に頼って私達は今まで生き残ったのよ…」
暗い表情を浮かべて瑞鶴を呟く。その時
「お…姉ちゃん…?」
「っ…!」
玖由が目を覚ましそう呟くと瑞鶴はギクリと肩を震わせる。
「どうして…お姉ちゃんが…」
玖由の涙声を聞き瑞鶴は諦めたように振り返り玖由を見る。そして玖由の目に溜まる涙を手で拭き取り優しい声をかけた。
「久しぶりね玖由」




