67話 九花村事件編 犠牲
憐斗達は車に乗り込む。そして全員が乗ったのを確認した結彩は車を出発させる。
「あの時もこんな暗さだったな…」
「うん…」
横目で憐斗を見る結彩は辛そうな表情で呟く。それ以上に加奈は自分の感情を押し殺す為に拳を強く握っていた。そして憐斗は最悪の日を蒼嵐達に話した。
12月23日
その日の朝、幸か不幸か加奈が東京に戻る事になった。最後まで憐斗達の力になりたいと加奈はわがままを言うが聞き入れてもらえ無かった。憐斗達と別れる直前に
「憐斗、結彩無事で居てや…」
「心配いらないさ」
「うん…ごめんな」
と加奈は東京に帰って行く。加奈を見送り二人はこれからどうするかを話す。
「私達はどうしたら」
「俺達にはどうしたらいいかなんて分からない…遥姉さんが居てくれたら…」
「遥ねぇも昨日から連絡つかないし…どこに行ったの…」
「いつ起きるか分からないからやっぱりもう一度村の人達に伝えていくしか…」
「でも、誰も信じてくれなかったよ」
「それでも俺達にはそれぐらいしか出来ない」
「…そうね」
そして村中に地震が起こると伝え回るがまともに聞いてくれる人は居らず昼が過ぎようとしていた。
「やっぱり無駄だったわね…」
「あぁ…もう一度遥姉さんに連絡してみるか」
と憐斗は携帯電話を取り出し電源を付ける。しかし次の瞬間画面が暗くなり電源が付かなくなる。それと同時に動物の鳴き声が騒がしくなる。憐斗と結彩は異様な雰囲気を感じ辺りを見渡す。その時、何かが爆発したかのような轟音が響き地面が大きく揺れる。激しい揺れに憐斗は結彩を引き寄せしゃがませる。揺れに耐えながら憐斗は立ち上がる。そして建物が崩れその先にある山が崩れるのが見える。そこは憐斗の母、末莉が居る神社がある場所だった。
「母さん…!」
揺れが収まると同時に憐斗は山に向かって走る。
「憐斗!駄目…っ!」
震える足を叩き結彩は立ち上がり憐斗を追いかける。
「なんだ…あれ…」
その言葉を聞き憐斗は立ち止まり崩れた山を見る。すると黒い物体、アルマがその山から湧きこちらに向かって来ていた。
「あれって…夢に出てきた…化け物!」
結彩は大きく息を吸い込み叫ぶ。
「今すぐ逃げて!あれは化け物だからー!」
地震で混乱している状態ならば結彩の言葉をあっさり信じ込み村人は我先に逃げ始める。結彩は逃げ惑う人々を素早く避けながら憐斗に追いつき腕を掴む。
「待って憐斗!」
「なんで止めるんだよ結彩!あそこには母さんが…」
「分かってるけどあれは本当に危険な奴なんだってば!」
とこちらに向かって来るアルマを指さす。憐斗は気配を感じ結彩を押し倒すように身を屈む。すると瓦礫を突き破り獣型アルマが現れる。そしてそれは憐斗達を見るな否や二人に襲いかかる。
「はぁっ!」
遥香が鉄パイプを振り下ろしアルマを地面に叩きつける。
「二人とも大丈夫ですか!?」
「はるねぇっ!怖かったよ!」
結彩は遥香に抱きつく。そんな結彩の頭を優しく撫で
「ごめんなさい」
と謝る。
「遥姉さん今までどうしてたの?」
「この地震について調べていたのです」
「なにか分かったの?」
「はい、この地震は…」
と遥香がいいかけた時、獣型アルマが起き上がる。
「話はあとですね…逃げますよ!」
「待って!」
「えっ?」
「母さんがまだ…!」
「末莉さんが…分かりました行きましょう」
と遥香は憐斗達を連れ神社に向かう。道中運が良かったのか遥香の案内が良かったのか憐斗達はアルマに出会う事なく神社に辿り着く事が出来た。
憐斗は跡形も無く崩れた神社の瓦礫を嗅ぎ分け末莉の姿を見つける。
「母さん!」
「れん…と?…あはは…見つかっちゃったか〜」
末莉の相変わらずののんびりとした声を聞き憐斗は少し安心する。
「待ってて今すぐに助けるから」
「いいのよ…憐斗達は逃げなさい」
「なんで…見捨てるなんて嫌だ!」
「大丈夫、死なないから」
「そんなの無理だ、そんな状態でどうやって生き残るんだよ!」
と憐斗は末莉を引っ張り出そうとするがそれを遥香が止める。
「憐斗!諦めなさい」
「諦めるって…なんで…嫌だよ!」
「いい加減にしなさい!」
遥香は声を荒らげる。
「憐斗が無闇に瓦礫を掘ったせいでこのままだと私達がいるこの場所も崩れて生き埋めになって死にますよ!そんな事を末莉さんが望むと思ってるのですか!」
「それは…」
「そうよ…遥香ちゃんの言う通り…私はそんな事望まないわ…だから逃げなさい」
「母さん…くっ…」
憐斗は立ち上がり後ろに立つ遥香達の方向を向く。
「ごめん…」
と言い憐斗は走る。そんな憐斗を遥香と結彩は追いかける。その時背後で崩れる音が聞こえ憐斗達は振り返るとそこには末莉の姿が無くなっていた。
憐斗は泣きながら山を駆け下りる。が、涙で視界が滲んでいたため躓き地面を転がる。
「くっ…あぁぁぁっ…」
「憐斗…」
遥香が憐斗に手を伸ばし立ち上がらせる。
「ねぇ…な…何あれ…」
結彩は木々のあいだから見える村の光景を見て動揺しながら呟く。
憐斗と遥香も結彩が見ている光景を見て言葉を失う。村が眩しいほどの明かりに包まれていたのだ。しかし電気の灯りでは無く火から放たれる灯りだった。
「あの化け物達が…」
「なん…で…あいつらのせいで…!」
その時憐斗の気持ちに応えるように首に掛けた結晶が輝く。
「俺があいつらを倒してやる!」
と結晶が弾け破片が鎧の形となり憐斗に纏う。そして腰を覆うように船の先端の様なものが伸び更にそこから主砲を備えたアームが四方に伸びる。
「憐斗…その姿は…」
「分からない…でもこれなら!あいつらを殺せる!二人ともここに居て!」
「憐斗待ってください!」
遥香の静止を聞かずに憐斗は村に向かって飛び降りる。
「結彩行きますよ!あのままだと憐斗が危険です!」
「う…うん!」
憐斗を追いかける為、遥香と結彩は山を勢い良く降っていく。




