59話 裏切り
「私が…そんな事を…」
「うん、あのままだと…ね」
「…あぁぁぁぁっ!」
蒼嵐は目を覚まし自分になにがあったのかを聞き
顔を赤らめ耳を塞ぎ布団に蹲る。
「それにしても相手は厄介な事をして来るな」
「そうね…」
「えっ…」
マントを被った人物を追いかけていた夕立は一瞬でその姿を見失いその場に立ち止まる。次の瞬間背後に現れ夕立に向けて手をかざす。
「私のものに、なって」
「っ…!」
夕立は自分の意識が遠のくのを感じる。
「………」
「言う事、聞く?」
「い…嫌ですわ」
「どうして、なの…」
夕立が顔を上げると苦しそうな笑みを浮かべ口から血を流していた。
「舌を、噛んで…でも、どうして血がクリークになんてものは、無いはず」
「そうですわね…わたくしは純粋なクリークじゃありませんから!」
とドレスの後ろの裾から大鎌が飛び出しマントを羽織る相手に向けて大鎌を振り下ろす。相手は大きく後ろに飛び大鎌をかわす。いつもの調子に戻った夕立は大鎌から更に2枚の刃を出しアームを振り同時にアームから3枚の刃を回転させながら投げ飛ばす。そして3枚の刃は吸い込まれるように敵に突き刺さる。
「「!?」」
「今の感覚…ヘル行くぞ!」
「うん〜」
「大和どこに行くんだ?」
「憐斗達はここに居てくれ!」
「そう言えば梨絵は?」
「いつの間にか居なくなってる…」
「まさか」
と大和とヘルは部屋を飛び出す。
「今の気配って…」
「あぁ…一つは夕立だ…しかしあとひとつは一体誰だ…」
「くっ…」
「あなたの正体見せていただきますわ」
と夕立は相手のフードを捲る。すると中から夕立とは対照的に白く透き通る髪に白い目の少女が姿を現す。
「見られ、た」
「夕立そんな所でなにをしてる」
「やれやれですわ、やっと来ましたか…」
「その子は…」
刃に串刺しにされた人物を見て大和は夕立に剣を向ける。
「誤解ですわ、この方はあなた方の敵ですわよ」
「武蔵達の仲間なのか…?」
「それも違いますわ、意外と鈍いお方ですわね」
「あ!?」
少し頭にきた大和は声を荒らげる。
「分かりませんか?こんな所に一人で乗り込むなんて無茶ですわ、それにもし武蔵達の仲間だとしたらここまで追い詰められているのにアルマを出し抵抗する事も出来るはずですわ」
「なら、私やヘルみたいにアームズのクリークだと言いたいのか?」
「そうですわね、やっと理解しましたか」
(一言多いっての…)
「そんな所で聴いてないで出てきたらどうですか?」
夕立がそう言うと、大和達の背後から足音が聞こえ二人は振り返る。そして二人はその正体を見て唖然となる。
「この方のパートナーさん」
「「梨絵!?」」
「気づかれてましたか…」
「どうして…梨絵!」
「憐斗を救うためです!これ以上憐斗に戦って欲しくない!そのためなら私はなんでもします!」
「だからってどうして裏切ったりなんて…」
「なにを言ってるんですか…」
梨絵は冷酷な表情を大和に向ける。
「私は憐斗以外を仲間と事はありません」
次の瞬間大和の背後に回り込み喉元に刃を向ける。同時に夕立の刃に抑えられていたクリークはマントを脱ぎ捨て夕立の首に刃先を突き立てる。
「ヘル…憐斗達を屋上に連れてきてください」
「嫌って言ったら…?」
「大和と夕立を殺します、クリークの弱点が首という事も知っていますから」
「分かったよ」
ヘルは引き返し憐斗達を呼びに行く。
「っ…!」
「梨絵が…そんな」
「憐斗君の為…だってさ〜」
「俺の為だと?」
「憐斗君をアルマと戦って欲しくないみたい…」
「憐斗!」
憐斗は梨絵達が待つ屋上に向かう。そして勢い良く屋上の扉を開けるとその先に梨絵と人質に取られた大和達の姿があった。
「梨絵…どうしてこんな事を…」
「私もこれ以上この様な事をしたくありません…だから結彩をこちらに渡して下さい」
「私を…?」
「っ…!」
「憐斗は充分傷つきました、だから今度は私が憐斗の代わりに傷つくの!」
「違う…違うよ!梨絵!」
と結彩が叫ぶ。
「憐斗が傷つくのが嫌だから自分が代わりになるなんて無理なんだよ!」
「そんな事ない!」
「あるよ!梨絵は憐斗が傷ついてばかりだと思ってるの?憐斗は傷ついた分同じ思いをしたくない他人にさせないと努力してるの!梨絵がそんな事をしたら憐斗の努力を否定する事になるんだよ!」
目が紅く染まり結彩はアルマを召還する
「結彩!?」
(そんな事も出来るのですか…確かに香楽達が結彩を欲しがる理由ですわね)
結彩はアルマを梨絵達に向ける。結彩の命令でアルマは梨絵に襲いかかる。夕立はそれを見て左右のドレスの裾から大鎌を出し身体を回転させ抜け出す。更に夕立はアームを伸ばし梨絵に向けて振り下ろす。梨絵は大鎌をかわすが僅かに出来た隙間を見て大和は梨絵から抜け出す。そして夕立、大和がその場から離れるのと同時にアルマが梨絵達に襲いかかる。
「一旦撤退しましょう」
「うん…」
梨絵は煙弾を投げ当たりに煙を巻く。
「くっ…!」
大和は梨絵の言葉を思い出す。
(本当に仲間と思っていなかったのか…梨絵)
その言葉を発した時梨絵の手が震えているのを見逃さなかった大和は振り返り憐斗を見る。
「はぁ…はぁ…」
荒い呼吸をする結彩を憐斗は支える。
「結彩あの力は一体」
「あの…力…なんの事…?それより梨絵は?」
「憐斗様、これ以上混乱させたい訳ではありませんが質問しても大丈夫ですか?」
「あぁ…」
「ごめんなさい…ハウ…」
「気にしなくて、いい、それより、私は、梨絵心配、思っていない事を言うのは、辛い」
「でも、どんな事をしても憐斗を助けたいのは変わりません、例えみんなに嫌われても…死ぬ事になっても…」




