56話 秘密
「こ…これは…」
渚の指示で明石海峡大橋に来ていたN-59部隊 朝霧燈は綺麗に二つに切り裂かれた固定砲台が散乱していたのを見て唖然とする。
(誰がこんな事を…そんなことより早く渚さんに連絡しないと!)
と、すぐに我に返り燈は渚に連絡する。
「結彩…」
レンナはベッドで寝る結彩を見て呟く。そして部屋を出ようとする。そんな憐斗を見て梨絵が
「憐斗どこかに行くのですか?」
「ちょっと外の空気を吸いに…な」
「そうですか」
とレンナは部屋を出る。そしてしばらく歩き立ち止まる。次の瞬間、レンナは勢い良く壁に頭をぶつける。
(何やってんだよ俺…結彩を助けるためとはいえあんな事をしてしまうなんて…)
レンナは自分の唇を触る。
(それに告白までしてしまうなんて…)
「あ、いたいた憐…レンナ!」
「渚…か、どうした?」
「どうしたって頼まれていた事を伝えに来ただけ、それて燈の報告だけど明石海峡大橋には確かに固定砲台があったけど全部すぱーんと切り裂かれてたんだって」
と手で斬る仕草をしながら渚はレンナに伝える。
「そうか、ありがとうな」
「レンナー!」
レンナの前で立ち止まり蒼嵐は慌てながら
「早く来て!結彩が…」
「えっ…!」
レンナが勢い良く部屋の扉を開けると起き上がっている結彩の姿があった。
「結彩!大丈夫なのか!?」
「大丈夫よ、レンナ…心配しすぎ」
「良かった…」
苦笑いを浮かべながら結彩はレンナの手を握る。
「でも…ありがとう、私が助かったのはレンナのお陰」
「そう言えば…アルマ化している時の記憶はあるのか?」
「全然覚えていない…かな…」
それを聞きレンナは安心したようにため息を付く。
「何かあったの?」
「い…いや…特に…」
「本当ー?」
「あぁ…」
その時二人のあいだに玖由が割り込んでくるそして
「イチャつくのもいいけどもうすぐ呉…!」
いつもより強い言い方の玖由をなだめる様にレンナは穏やかな声で
「わ…分かった、ありがとうな教えてくれて」
と頭を撫でる。すると玖由の表情が和らぐ。
それを見て渚は自分の頭を抑え
(私も頭撫でてもらいたかったな…)
港に着くとレンナはすぐさまマントを羽織顔を隠して甲板から陸に飛び降りる。
「なにしてんのよ!?」
「流石にこれ以上この姿を見られたくないからな、先に司令官室に行ってる!」
「全く相変わらずなんだから」
走っていくレンナを見て呆れる結彩を見て梨絵は笑みを浮かべる。
「なにかあったの?」
「いえ、二人が一緒にいると見ているとなんだか安心するなと、やはり二人はお似合いですよ」
「そう…かな…」
結彩は顔を赤らめ俯く。そしてレンナを追いかけるため船を降り梨絵と蒼嵐がまだ覚束無い足取りで歩く結彩を支えながら司令官室に向かった。
レンナは窓を蹴り開け司令官室に滑り込む。
「窓ガラス割れたらどうするんだ…」
転がり込んできたレンナに呆れながら琢斗は言う。
「割れない様に蹴ったから大丈夫さ」
「はぁ…それでわざわざ怒られに来たのか?」
「そんな訳ないだろ、これを調べたくてな」
とメモリーカードを取り出し机の上に置く。
「これは?」
「見ての通りメモリーカード、中に俺達が知らない結彩の秘密がかいてあるらしい」
「結彩の…秘密?」
「あぁ」
「失礼します」
とそこに梨絵達が入ってくる。
「大丈夫なのか結彩?」
「はい、ご心配をお掛けしました」
レンナはパソコンにメモリーカードを差し画面に映されたファイルをクリックする。そして画面に書かれたものを見てレンナ達は目を見開く。
「えっ…」
「結彩が…最初に生まれたアルマ…だと」
「そんな…」
レンナは自分よりも結彩自身が一番驚いているのを見て冷静になる。
(今は俺よりも結彩のほうがショックを受けているはずだそれなのに俺が動揺している訳にはいかない)
と自分に言い聞かせ再びパソコンを見る。
(結彩は突然変異で身体の20%はアルマの細胞の状態で生まれた、ただし人間の細胞が多い事、当時はまだアルマという存在を知らなかった事から結彩は人間に分類された、このことは親に伝えず国家機密とする)
「国家機密…だと…もし本当ならどうしてアルマが国家機密を…」
「私達が盗んだのさ、香楽の指示でねでも私もこんなことを書かれているなんて知らなかったよ…」
その時司令官室の扉に気配を感じた神風と大和は扉を蹴り開きお互い背中合わせになり部屋の様子を見る。すると大和の向く方向から足音が聞こえる。
「逃したか…」
「誰が居たのか?」
「あぁ…私達の話を盗み聞きしていた奴がいた…」
「神風追いかけるよ!誰が知らないけど話のネタにでもするなら容赦しない!」
「とにかくこの事は他言無用、最重要機密情報でいいよな父さん」
「あぁ、とにかくお前達は一度部屋に戻れ結彩もそのままだといつまでも落ち着けないだろ」
「そうする」
部屋に戻りレンナ達は結彩をベッドに座らせる。
「ごめん…」
結彩は俯きながら謝る。
「結彩さんはなにも悪くないです!」
「羽根の言う通りよ結彩!」
「そうね…っつ!」
頭に締めつけられる様な痛みを感じ結彩は頭を抑える。そしてそのまま意識が無くなりベッドに倒れる。
「ねぇまた殺したいよね、あの感覚が忘れられないよね」
暗闇のなかに響く声を聞き結彩は否定する
「そんなことない!」
「でも人を殺した時どんな感じだった?気持ち良かったじゃない?」
「そんな事ないわ!」
「殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい!」
「い…嫌ぁぁぁぁぁぁっ!」
結彩は身体を起こす。
「はぁはぁ…」
結彩は周りを見る。隣のベッドでは大和、玖由、羽根が仲良く寝ていた。振り返ると椅子に座り元の姿に戻っていた憐斗と憐斗にもたれ掛かりながら寝る蒼嵐の姿があった。結彩は梨絵の姿が無く心配になりベッドから音を立てないように立ち上がり部屋を出る。既に夜中で人気のなく真っ暗な廊下を結彩は歩き特に考えず屋上に上がる。すると梨絵が屋上からの景色を見ながらなにかを呟いていた。そして結彩はおもむろに梨絵に近づいて行く。結彩に気づいた梨絵は耳からなにかを外し結彩を見る。
「どうしたのですか結彩?」
「えっ!?…あっ…いや、特になにがあった訳じゃないんだけど…ちょっとね」
「そうですか、それにしても今夜は少し冷えますね」
「そうね」
「私は戻りますけど結彩はどうしますか?」
「もう少しここにいるわ」
「そうですか、ではお先に」
と梨絵は自分達の部屋に戻る。
「はぁぁぁっ…」
結彩は大きなため息を付く。
「私…どうしたらいいんだろ…」
「自分のやりたい事をすればいいんだよ〜」
「やりたい事ねぇ…ってえっ誰!?」
結彩は突然隣に現れた人を見て驚く。
「誰って僕だよM18だよ〜」




