10話 作戦前夜
「あぁぁぁぁっ…」
羽根はその場で泣き崩れる。それを見て空はハッとなり美咲を見る。美咲は月の死を気にしていないようにアルマを次々を倒していく。
(美咲…)
空には分かった。美咲は悲しさを敵にぶつけて嫌な思い出を思い出さないようにしていたのだった。その時、下から砲撃が飛んでくる。それに気づいた蒼嵐は羽根の手を引っ張りその場から離れる。
「下にも敵が!?どうしたらいい…の」
「蒼嵐!これ以上いたら危険だからここから離脱する!」
「了解です!」
と空は急旋回し引き返そうとするが回り込まれ退路を断たれる。
「っつ!」
(こんな所でっ…)
蒼嵐は唇を噛む、その時目の前のアルマに何かが当たり爆発を起こし墜落する。更にそれと同時に三式弾の雨がアルマを遅い次々と撃墜していく。
「大丈夫か!蒼嵐!」
「れ…憐斗!?…どうしてここに…」
「蒼嵐達が危ないと司令官に言われて来たのです…本当に当たっているとは驚きました」
とスキー板の様なものを足に付けた梨絵が答える。
「後は私達に任せなさい!」
と同じようにスキー板の様なものを足に付けた結彩が勢い良く飛び出し海上のアルマに向かって砲撃する。
「援護…します!」
玖由が杖を振る。すると無数の魔法陣が展開されそこから戦闘機が次々に飛び立つ。
玖由から放たれた戦闘機は海上のアルマを混乱させアルマの集団がバラバラとなる。それを憐斗、結彩、梨絵が撃破していく。
「れん…と…」
安心で力が抜けた蒼嵐は意識が遠くなっていき気を失った。そんな蒼嵐を羽根が抱き上げた。
玖由は海面に浮かぶ浮遊物を見つけ
「はっ!?ここは…いっ…」
「まだ動かない方が良いわよ」
蒼嵐は身体を起こし当たりを見るそして目の前に居る人を見てここがどこなのか確信する。
「医務室…ですか阿波さん」
「そうよ」
「みんなは…?」
「美咲ちゃん達は司令官に報告、羽根ちゃんは手当てを受けてすぐ部屋にこもってる」
「私も…司令官の所に…ぐっ…」
足に鋭い痛みを感じる。
「無理しないほうがいいわよ、見事にアキレス腱を撃ち抜かれてるわ…もしかしたら一生まともに歩けないかも」
(あの時…私があの力が使えていたら…月ちゃんも死なずにすんだかもしれないのに…!)
蒼嵐は痛みに耐えながら立ち上がり右足を引きずりながら歩く。それをみた阿波が松葉杖を差し出す。
「これ…使いなさい」
「蒼嵐!」
「大丈夫なの!?」
「…うん」
蒼嵐は自分の無力差を感じながら結彩達の横を通らすぎ部屋に戻る。
「憐斗」
「父さん…?」
「話がある」
「何?」
「今度の作戦蒼嵐の出撃をやめさせようと思っている」
「俺も…そうした方が思っていた…今の蒼嵐のメンタルは最悪だし、そのまま出撃して死なれるのも嫌だから」
とその時玖由が憐斗と琢斗が居る司令室に入ってくる。
「あの…これを…渡して…欲しいです」
と玖由は手に持った物を見せる。
「お守り…」
と、憐斗はお守りを手に取り裏を見る。月という文字が糸で縫われていた。
そして更にドアをノックする音が聞こえ羽根が入ってくる。
「明日の作戦、私も参加させてください!」
「駄目だ!」
「でも!私が月の分まで戦わないと!月が死んだ意味が…」
「分かった、丁度1人居なくなって困っていたんだ」
「ありがとうございます」
そう言って部屋から出ようとする羽根を玖由は追いかける。
「あ…あの、こっ…これを…」
とお守りを渡す。羽根はそれを受け取る。
「ありがとう」
「ひゃい!」
と慌てて玖由は憐斗の後ろに隠れる。
「失礼します」
羽根が部屋をでる。それと同時に琢斗は咳払いをする。
「どうしてあんな事言ったんだ?」
「ああ言わないと納得してくれないと思ったから」
「だからと言って… 」
「なら父さんならどうするんだ?」
「で…でも、あの人…死ぬつもりだよ」
「分かるのか?」
「うん…何故かわからないけど人の顔を見ただけでその人の心が分かるの、それにあの人の手に触れた時に脈が正常だった」
「死ぬのを恐れていないのか…」
「それを俺たちがそれをどうにかしてやる…どうにかして見せる」
「分かった、Z-99部隊蒼嵐に変わりS-39部隊羽根を入れる!」
「了解!」
ふと羽根は目を覚ます。そして身体を起こすと立てかけた剣が目に入った。
「寝ちゃってたか…」
その剣の刃には羽根の血が付いたまま固まっていた。
「このままだと…嫌だよね、拭いてあげる」
と羽根は剣を手に取り濡れた布で刃を拭く。
「うん…綺麗になった」
そう言って羽根は玖由から受け取ったお守りをその剣に括り付ける。その時羽根の視界が霞む。
そして剣が上から落ちた液体によって濡れる。
「あれ…おかしいな…涙が…止まらないよ…ねぇ…なんでかな、月…あぁっ…」
羽根は涙が止まらなくなり感情のまま泣き叫ぶ。
「月…私はずっと一緒に居たかったよ!私はあなたが私見たいで…でも月はいつもどこか悲しそうだった…だから!私は月の事がほっておけなかった!月!言ってくれたよねずっと一緒って…なのに何故…月だけが死なないと行けなかったのっ!」
「………」
その声をドア越しから聞いていた結彩は無言のままそこから立ち去った。
作戦開始まであとー6時間ー