表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dark Fall   作者: 朝倉 京
2/3

始まり

「誰か生きていないか?」

村を救うために遅れながらも到着した自国の兵士は、その異様な状況に言葉を失う。

家の中は大小様々な亡骸が横たわり、壁、床、本棚、と血に濡れていない場所を探すのが難しいほどの惨状。


その血溜りの中に、果物ナイフを片手にたたずむ少女が一人。

いくつかの可能性が兵士の頭の中を逡巡する。少女の周りには敵国の兵士と思しき男たちが倒れている。

真っ赤に染まった少女。その手の中にはナイフ。兵士は、ひとつの結論にたどり着いた。


「・・・まさか君が・・・?」

その問いに少女はこくりと頷く。

「そうか・・・もう大丈夫だ。」

少しの動揺の後、そういって兵士は少女を抱きしめる。

兵士にはこうすることしかできなかった。状況を正常に理解しろ言うほうが酷である。そんな非日常的な光景だった。

こうして少女は保護された。ただひとりの村の生き残りとして。


「少女が村に侵攻してきた敵兵士を倒し、ただ一人生き残った。」

この噂は瞬く間に軍中に広がった。

それから程なくして、少女は軍への入隊試験を受験することとなる。

普通、身寄りのなくなった子供は孤児院に預けられるが、少女の噂に興味を持った軍が彼女を試したからである。


試験内容は、軍の兵士との1:1の模擬戦だ。

相手は訓練を積んだ現役の兵士である。そのため、打ち負かさずとも及第点レベルの力を証明できれば合格になる。

とはいえ、日々鍛錬を積む兵士と渡り合うにはそれなりの力、技術が必要であり、試験を受ける者の殆どが、精悍な体つきをしたいかにも強そうな青年である。

そんな中に華奢な少女が一人。やはり、あんな話はただの妄言で兵士の見た幻覚だったのだ。剣すらまともに持てないだろう。皆がそう思っていた、少女が兵士との戦いを見るまでは。


「お嬢ちゃん、怖くないのかい?無理はしちゃだめだよ。」

試験兵は嫌味ではなく、本心からそう語りかけた。

少女はその言葉が聞こえていないかのように、片手でひょいと剣を持ち上げ兵士の方を向く。

彼女の振る舞いには戸惑った様子すらない。まるで戦になれた戦士の様な仕草で戦闘態勢をとる。

「・・・仕方ない。」

少し驚いた表情で兵士はそう言い、審判を勤める男に目配せをする。

「では尋常に・・・始め。」


少女は迅かった。

目にも留まらぬ速度で兵士の懐に潜り込み、右手に持った木刀を逆手で切り上げ、兵士の木刀を跳ね上げると、そのままの勢いで兵士の胴に回転斬りを叩き込んだ。

あまりの衝撃にそのまま吹っ飛び気絶する兵士。唖然とする群集。

少女は文句なしの成績で入隊試験を合格した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ