事後から始まる物語。
初投稿です。
9/24 微修正・文章を若干追加
9/30 修正 見やすくしただけで内容に変化なし
薄暗い蝋燭の灯の中12畳ほどの部屋を見回し、手近にある床に倒れている 物体を見ながらとりあえず言う。
「アーヤッチャッタヨー」
白地に青のラインが布地の縁に一本入った衣服を纏っていたり、他には白地に銀のラインや金のライン、更に加えて胸や袖の部分に複雑な刺繍が入ってる者も居る。白い衣服の奴らは五人。
トーガっていうんだっけ?前世でやってた、船で世界を航海するゲームで見たような、と現実逃避しつつ観察する。
別に服が珍しいわけじゃない。ちゃんと死んでるかを確認する。
「この街の最上位者まで来てんじゃねぇよ。」
刺繍が入った衣服を着てる奴の頭を、コツンコツンと蹴りつつ呟く。
司祭だっけ?司教だっけ?宗教嫌いだからどうでもいいと、避けてたのが失敗だったか。この街の最高権力者であるのはわかっているけど、名前さえ思い出せない。
「な~んで出てきちゃいましたかね~。」
ガキの悪魔憑きなんて危険が無く、点数稼ぎにちょうどいいと欲張ったのか?
部下にやらせて自分の手柄にすれば良いものを、直接赴くのは自らが退魔したってのが重要なのか?
むしろ逆に悪魔憑きって実際にあって高位の聖職者が対応しないといけない事態なのか?前世での魔女狩りみたいなものだと判断したんだが・・・。
など、益対もない考えが巡り、現実逃避も程々にしないとな、と視線を移す。
「困ったもんだねぇ」
白衣の集団とは別の、部屋の隅に有る2つの死体を見る。
まだ年若く、20代。この世界で言えば中流層かな、小綺麗で刺繍や装飾などはないスッキリとした衣服に包んだ男女。
両親だった。
困った。本当に困ったことになった。咄嗟にこの部屋に居る者たちを全員殺したが、殺すしかない状況だから殺しただけだ。
「なんでこんな事になっちまうかなぁ。」
他人事のように言う。現実逃避をしたいのだろう。元々独り言なんてめったに言わない。独り言を吐き出さなきゃいられないほど、精神的圧迫を受けているのかな?そんな風に分析するこの考えも、この状況から逃げたいからだろう。人を殺したのなんて初めてだし、両親を殺したいほど憎かった訳ではない。
好いてもいなかったが。
「コレだから宗教は嫌いなんだよ」
原因は自分にある。薄々気がついてるどころか自分がやり過ぎた事が発端だろうと確信があるが、そんな思いには蓋をして言う。
宗教が悪い。可愛い子供を悪魔憑きだと密告する親が悪い。点数稼ぎのために可愛い子供を生贄にしようとした宗教家が悪い。
責任転嫁をして平静を保とうとする。
「コレは大事件になるんだろうなぁ。犯人はこの中にいます!・・・俺しか生き残ってないけど。」
ダメだ、面白くない独り言を言いたく成る。
ダイスはSAN値が低くて失敗判定か?両親を殺したのがカルマとして悪影響を及ぼしてるのか?
自分が狂っているなんて言う狂人は居ない。狂人は自分が狂って居る可能性なんて考えない。
だから自分の精神状態を考えれる俺は正常だ。両親二人を二歳にして殺したとしても、冤罪を被せこの状況を作った教会が悪い。ついでに殺人に対して罪悪感がないのも教会と両親のせいである。
完璧な理論武装キタコレ。
嫌なことが有るとおちゃらけて誤魔化したく成る。他人には笑わせて誤魔化すのも有効だが、自分に対しては効果は薄く、面白い事も言えそうにない。それ以前に殺人を笑い話で誤魔化そうとは無理がある。
心を落ち着かせようとしても思考は逸れていく。
身体は、椅子に座ったり立ち上がったり。ウロウロしてみたり死体をつま先で突っついてみたり。
意識してみると手はかすかに震えている。
まずいな。
今の時刻はおそらく夜の九時くらいだと思う。時計がないからわからないんだ。翌朝までは時間が有る。でも余裕はない。
この爺、司祭だっけ?司教だっけ?司祭だとランク的に低そうな気がするから仮に司教(仮)にしておく。
コイツが教会?聖堂?支部?わからんがソコに戻らないと問題になると思う。
早く方針を決めなければ
コイツらのおかわりがいくら来ても倒せるだろう。いや、一度に大量に来られて飽和状態にされたらまずいか。
コレが初戦闘だ。自分の力量もはっきりと掴めたわけじゃない。室内で7人相手にはどうにかなったが、不意をついた部分もある。
家から出たら囲まれてましたなんて状況はシャレにならん。遭遇戦も怖い。
外に何人か見張りとして残っていたら?現時点でココまで乗り込んできてないのだから元から居ないのだろう。・・・と、思いたい。
異変に気がついてないだけか?ありえるのか?・・・ありえるな。
確認するべきか?・・・するべきではあるが行かない方が良いだろう。
ドアから顔を覗かせたら槍がブスリとか怖い。
昔の、ほんの些細なことでも即死する、死にゲーアドベンチャーかって自嘲するが、おそらく俺はその状態にかなり前から片足を突っ込んでたんじゃないかと想像する。
対応をしなければ。思考は高速で廻っている。時間はあまり使っていないが、無駄な事も多い。
この歳で自立しなければいけない。生きてはいける。戦闘能力は有る。俺のステータスはチートだ、きっと。大丈夫なはずだ、たぶん。
いや、現実を見つめるべきか、幼児が一人で生活は無理があるだろう。両親を殺したのは色んな意味で致命的だ。この歳では一人では外を彷徨くことさえ不審だ。
常識的な一般人なら迷子だと思い保護しようとするだろう。
非常識なら人攫いか?この世界の常識を知らないから判断がつけようがない。
まだ幼いから外出自体が数えるほどだ。
両親を殺したのはまずかった。しかし活かしていた所で教会に走るだけだっただろう。
本当にそうか?拘束して拷問して情報を吐かせたら?いや、親を拷問はないだろう。
しかしこいつらに売ったのも両親だろうしな。
協力者が欲しい。しかしどうやって自分に都合がいい人間を作る?歩き始めたような歳の幼児が小賢しく話しかけてきたらどうだ?
両親と同じく悪魔憑き認定一直線だろうな。どんな手順を踏んでも無理がありすぎる。
そもそも軽快に歩くことが出来ない。今しているように浮かびながら移動するしか無い。
浮かびながらさも歩いてるように手足を動かすか?違和感ありまくりだろう、ごまかせると思えない。
もう後数年は両親の庇護の元で暮らしていたかった。つくづくそう思う。
そんな、目の前の状況よりも未来の困難も思い浮かび、前向きな考えを後ろ向きな考えが塗りつぶし脳内は混沌としていく。
「軽く考えてはっちゃけすぎたのが行けなかったかなぁ」
今更転生してからの事を振り返ってみても、こうなってはもう遅いのに。
そう分かっているのに、思考は逸れていく。
「一度、ネガティブな思考をすべて出し切って切り替えるしか無いか。」
ぼそりと呟く。ぼんやりと色んなことを考えながら。
主人公の戦いはまだまだこれからだ!