本好きの少年はこうして生まれた。
今回は説明パートで、つまんないので読まなくてもいいです。 後書きに要約したのを載せておきます。
「ですます調」から「だである調」に変更しました。
海を渡り、大陸から大陸へと移動しながら様々なものを取り扱う商売をする商人、エドワード・チャップマン。その職業柄海賊のように荒々しい見た目は、言われなければ商人とは分からないほどの豪胆さだった。
そんなエドワードはとある港町で恋をした。
相手は町の図書館の司書の女性で、名前はハナ。黒髪黒目の綺麗な女性だった。
エドワードは商人であることから口達者でしかもへこたれない性格だったので、ハナに猛アタックを続け、ついには恋仲になることができた。
それまでは一箇所に留まることない旅する行商人だったエドワードだが、この出会いによって港町に居を構え、そこに腰を落ち着けることになった。
そうして開かれたのがチャップマン商会だった。
最初は手探り状態だったエドワードも、金の匂いを嗅ぎ取る嗅覚や言葉巧みな話術もあって経営はひと段落し、安定した生活を送れるようになっていた。
そんな時に生まれた子供がヴェルムだった。
ヴェルムはハナの遺伝子を継いだのか黒髪黒目で、顔はエドワード似だった。
特に病気があったわけでもなく、体に不自由もない元気な男の子だった。
しかし、ヴェルムは普通ではないところがあった。
それは本や文字への異常な好奇心だ。
2歳になったころ、ハナがヴェルムに読み聞かせをしたことがあった。
普通の2歳の子供はまだほとんど内容を理解できないが、ヴェルムはどうにも理解しているようだったのだ。
試しに別の本を読み聞かせるとその本もまた理解した様子で聞き、ハナがそのいじょうせいにきづいた時にはヴェルムは自分で本を読むほどになっていた。
まだ2歳になったばかりの幼児が、だ。
そうしてヴェルムが3歳の誕生日を迎える頃には、ヴェルムは自宅の本は全て読み尽くしていた。
幼児向けの簡単な物語はもちろん、大人向けの文学やエドワードが持っていた商業書さえ読む始末。はっきり言って異常だった。
ヴェルムの読書欲は止まらない。
ハナが司書の仕事をしていると聞くとそれから毎日図書館に通い、一日中読書に時間を費やした。
食事さえろくに摂らずに本を読み続けるヴェルムに危機感を覚えたエドワードとハナは、ヴェルムにある約束を作った。
それは、本を読んでいい日は日曜日だけ。そして、一週間には一冊しか読んではならない、という約束だった。
一週間に一冊しか本を読めず、それも日曜日だけだなんて客観的に見れば随分と厳しい約束だろう。
しかしこれはおかしいというわけではなかった。
そもそも図書館にさえ2000冊ほどしか本はないのだ。そんな時代で3歳の子供が生活に支障をきたすほど読書をする方がよっぽどおかしく、体の成長のためにも必要な約束だった。
さて、それまでありえないほどに読書好きでもはや中毒とも言えるほどだった子供が本を禁じられたらどうなるか。
日曜日、ヴェルムは一冊の本を読んだ。その本で感情を失った少年ロイが徐々にそれを取り戻していく物語だった。
ヴェルムはその本を何度も読んだ。何度も何度も繰り返し読んだ。
朝目が覚めてから日付が変わるまでの間、一冊の本を何度も何度も何度も繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し読み尽くした。
やがてその内容を一言一句完璧に暗記するまで読んだ。読んで、読んで、読み尽くした。
そして日付が変わり、泥のように眠った後目覚めたらヴェルムはヴェルムではなくなっていた。
そこにいたのは感情を失った少年。無表情で無機質な目をした少年。
まさしく、ヴェルムが読んでいた本の主人公のロイだった。
その一週間は悲惨の一言に尽きた。
何しろ感情がないのだ。
これが本当に本の主人公だったらまだ救いようがあっただろう。脚本通りに出会いがあり、事件が起こり、次第に感情を取り戻すのだから。
しかしヴェルムは違った。
いかにヴェルムが主人公ロイと同じようになったとしても、周囲の人間を変えられるわけでも、事件を起こせるわけでもなかったのだ。
その週ヴェルムは毎日同じ時間に起き同じ時間に食事をとり同じ時間に眠った。
そしてその週ヴェルムは、ついには一言も発しなかった。
訪れた日曜。ヴェルムはまた規則的に図書館に向かうと、一冊のコメディ小説を手に取り、それを読んだ。2周、3周、4周と、何回も何回も繰り返して読んだ。そして日付が変わるころにはまた一言一句暗記し、泥のように眠った。
次に目覚めた時ヴェルムは、くだらない洒落を飛ばすお調子者になっていた。
1日前には感情がなかったなんてことを感じさせないほど元気に無邪気におどけた。
明るく、楽しそうに、ふざけてまわった。
やがて一週間が経ち、日曜日が来るとヴェルムはまた図書館にこもった。
彼は壊れていたのだ。
生まれた時から。もしくは生まれる前から。
どこまでも歪で、どこまでも歪んでいる。
自我というものが抜け落ちていて、それをどこかから補充しようとしている。
ヴェルムは異常だったのだ。
それからはもう七年も経った。
ヴェルムは10歳になったが、彼の生活は3歳のあの日からほとんど変わりない。
日曜日に図書館で本を読み、平日にその本の主人公に準じた生活をする。
小さい所に差異があっても根っこのところはずっと変わらない。空っぽのままだ。
最初は戸惑いを覚えていた両親や周囲の人だがそれが続くうちに慣れて、それすら日常の一部に組み込まれるようになった。
つまるところヴェルムは恵まれていたのだ。
どんなに心が壊れていようとも何不自由なく生きていける。
どんなに自分が異常でもわざわざ治さずとも生きていける、
確かにそれは恵まれていたのだろう。
しかし『恵み』とは、変わることを阻止する足かせにもなりうるのだ。
ヴェルムは変われることなく、治ることなく、替わり続けた。
一週間ごとに入れ替わる人格。
それはヴェルムに生まれつき備わってしまっていた、人間としての欠陥だった。
そんな『欠陥品』ヴェルムは、今は釣竿を持って海に出かけている、
要約したのを載せます。
商人の家に生まれたヴェルムは本が好きで、めっちゃ読んでた。
そしたら親に「体に悪いから読んでいいのは日曜日だけね」って言われて、日曜日にめっちゃ読むようになった。
で月曜日になると、日曜日に読んだ本の主人公の性格とかをコピーしちゃうようになった。
こんな感じです。
あと、インデントが表示されないのはどうしてなんでしょうか。一応書く時はスペース打っているんですけど、投稿すると表示されません。
今スマホで書いているので、PCで書いたら改善するかもしれません。