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Something like idle talk

祭典。

それが何なのか、私には分からなかった。

でも、アルが真剣に話している姿を見て、重要なことなのだろうと無理矢理納得する。

「ああ、フィーは知らなかったかなー。祭典というのは、四神、そして黄龍様の帰還を祝う行事なんだ。黄龍様はなかなか帰還なさらないから、とーっても珍しいんだよー!」

アルはいつもの口調で、私に説明してくれた。

黄龍様とやらがどんなに偉いのかいまいちわかっていないので、あまりコトの重要性は伝わらなかったが。

それに私も行くらしい。

人間族(わたしたち)にも祭りはあった。

夏祭りや、秋の収穫祭なんかが代表的だ。

出店なんかもあったりして、家族や友人と回るのは楽しかった。

しかし、アルに警護を頼むくらいなのだ。

そういう楽しむような行事とは、少し違うのかもしれない。

「綺麗な舞が見られるんだよ!」

イアは楽しみなようである。

にこにこ笑顔がとても愛らしい。

「でも、どうして他種族が狙うの?」

私はアルに向き直り、首を傾げた。

どうしてもそこが気になるのだ。

他種族に手を出すと、天神族(ジャッジ)に裁かれる危険がある。

そんな危険を冒してまで、なぜ狙うのだろうか。

「四神は天神族(ジャッジ)に近いって言ったのは覚えてるー?」

私は頷いた。

確か白虎とアルが話しているときに、そんなことを聞いた。

「だから、天神族(ジャッジ)は四神を裁けない。分類上は獣人族(ビースト)だけど、四神は何処にも属していないともいえるんだ」

裁けない。属していない。

あまり繋がらなかったので、私は曖昧に頷いた。

理解していないのがわかったらしく、アルは苦笑しながら補足する。

「つまりは管轄外ってこと。イレギュラーでもあるのかな?言い換えるなら、四神という種族があるって感じー」

上位種族と考えることにした。

何処にも属さない、天神族(ジャッジ)でも裁けないイレギュラー。

それは死仕族(デスサーブ)ではないのか?

と、気になったので質問した。

「いーや、違うよ。死を司る存在ではないからね。寿命もあるし。もし寿命が来たなら、四神は世代交代をする

んだ。死仕族(デスサーブ)みたいに無限の寿命を持ってはいない」

なるほど、そう区別するのか、と私は一人納得した。

ちょっと頭がこんがらがって来たけど、なんとか理解する。

うーん、難しい。

別に他種族に興味が無かった訳じゃない。

人間族(ヒューマン)は、弱いがゆえに自国に閉じこもり、あまり他種族について知ろうとしなかったのだ。

皆、自分達のことを考えて生きてきた。

だからこそ、知る者がおらず教えられるほどの知識など無かったのだ。

ある程度は書物で知れたが、実際の力関係などの情報は入ってこない。

臆病だったのだ。

今思えば、もっと周りを知ればよかったのかもしれない。

そうして他種族の力を借りられれば、あんな災難は防げたかもしれないのだから。

「明日は獣人族(ビースト)に化けていこー!」

そう言って、アルはくしゃりと私の頭を撫でた。

「僕はもう帰るよ。また明日ね、フィー!」

また明日。

明日も来てくれるのか、とちょっと嬉しい。

イアが立ち去ってから、私は呟いた。

「ていうかこの惨事、どうするの?夜寒くない?」

そう、私が壁に開けたこの穴だ。

焼け野原の見える、寂しい穴。

「寒さはフィーが俺と一緒に寝れば解決…」

「しない!!しないから!誰が貴方と一緒になんか…!」

「フィー…だめ?」

縋るような目に、うっ、と言葉に詰まる。

いや。いやいやいや。どうした自分。

負けるんじゃない。

見下ろされているのではなく、見上げられているのなら、了承し…

……ない!

何を考えてるんだ私は!

「だ…駄目!」

若干言葉に詰まったが、拒否する。

「寒いなー、凍えちゃうなー」

「駄目ったら駄目ーー!!」

ゼェ、ゼェと荒い息をつく。

そんなに必死で拒まなくても、という視線を向けられたが無視してやった。

もう騙されないぞ。

私は鋼の心を持つ。

夜になって、アルが心配でなかなか寝られなかったのはまた別の話。


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