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ウチの母ちゃんが25年前に書いた小説見つけたったwww  作者: 征彌
俺は母ちゃんに復讐したい
66/210

66.家族で外食(前編)

「ほら、覚えてる? あそこのアパートの部屋。新しい人、入ったって」

 晩メシのときに母ちゃんが言った。

「よかったじゃん」

 俺は口の中のナスの炒めものを飲み込んでから言った。

「ふ〜ん」

 そんなのどうでもいい、というトーンで父ちゃんが鼻から音を出した。

 話は今から2ヶ月ほど前にさかのぼる。

 連日暑さが続く、夏真っ盛りのころだ。


 ある日、バイトから帰ってくると、母ちゃんが何だか普段着♯の格好をしていた。


 普段着♯は「普段着よりチョイましな服」という意味だ。その辺のスーパーに行くよりはよそ行きだが、フォーマルな装いからは格段劣っている。

 ま、母ちゃんは滅多にフォーマルな装いなどしない。一番最近は、俺が高校を卒業したときだから、もう1年半は前だ。


『あれ、今晩、町内会の飲み会かなんか?』

『違うよ』


 普段、母ちゃんが町内会の会合に行くときは、かぎりなくすっぴんに近い化粧、つまり

「塗ってもシミ・ソバカスが丸見えなファンデーション + 塗ってますとようやく分かるだけの赤系の口紅、目の周りは手つかず」

で、自分をよく見せようとかいう努力の証ではない。

 あれだ、会社勤めしてる男が「とりあえずルールなので」と、好みや自己主張のないネクタイをしめてるのと同じだな。


 しかし、今晩の母ちゃんの出で立ちは、はっきりと指摘できないがいつもとどこか異なって見えた。


『お父さんが帰ってきたら出かけるからね』


 デート?

 いやいやいや、ウチの親はそんな人種ではない。

 じゃあ、夫婦出席が条件の町内会のイベントか?

 それならあり得る。だが、父ちゃんは他人との交流を徹底的に避けるタイプの男だ。嫌がってすっぽかされないといいが。

 ま、とにかく、俺には関係ねぇ。

 冷蔵庫に俺の食いもんさえ入ってればいい。


『あっそう。行ってらっしゃい』


 片手をダチョウの首のようにして上下に振ったら、母ちゃんは眉間にたてじわを寄せた。


『なに言ってるの。アンタも行くの』

『え?』


 それは予想外だった。

 てっきり夫婦で出かけるんだとばかり。


『で、どこ行くって?』

『たまには外でご飯食べるのもいいでしょ?』


 疑問文に付加疑問文で答えられた場合は、俺は何と言えばいいんだ?。


 父ちゃんは外食をエサに釣られたようで、いつもよりずいぶん早くいそいそと帰って来た。そして、俺が一緒だと分かると

『えーっ!?』

と不満の声を上げ、

『「俺」は行きたそうじゃないから、置いてこう』

とまで言った。


 父ちゃん、考えてることと言ってることが完全一致してます。


 しかし、母ちゃんはそんな父ちゃんには構わず、俺の背を押すようにして玄関に追いやった。ワンピースを着て、ネックレスをしてる母ちゃんと会社帰りなのでスーツのままの父ちゃんに対し、俺はTシャツにジーンズの完全普段着だったので『これでいいの?』と自分の服を指さしたら、母ちゃんは大きくうなずいた。


『「俺」はどこでご飯食べたい?』

 車のエンジンをかけてガレージから出たところで後部座席から母ちゃんが聞いた。

『え、決めてなかったの?』

 そう言いながらバックミラーを片手で調節したら『危ねぇな、おれを殺す気か?』と、後ろから父ちゃんが俺が座る運転席のシートに蹴りを入れてきた。


 そのほうがよっぽど危ないと思うんだが。

 ムッとした俺は、即座にどこに行くか決めた。


『おれが稼いだ金でこんなもんを食うとはな』

 塾帰りの学生や若いカップル、小さい子供を連れた家族でにぎわうポップなインテリアの店内で、仕立てのいいスーツをぴしっと着た父ちゃんは完全に浮いていた。


『たまにはいいじゃない』

 明らかに不機嫌な父ちゃんと対照的に母ちゃんはものめずらしそうに夜の○ク○ナ○ドの店内を見まわし弾んだ声で言った。母ちゃんの外食は主に町内会がらみなので、日中に家の近くのファミレスにほとんど同じメンバーで行ってほとんど同じメニューを注文しているらしい。

 それと比べたら今晩の外食のほうがよっぽどマシな気がする。


『実はお父さん、言ってるほど嫌いじゃないのよ、マ○ド○ル○』

『知ってるよ』

 背筋を伸ばし、膝に紙ナプキンを広げて行儀よくハンバーガーを食べる母ちゃんの横で、俺はいつもより背中を丸めてものうげに包みを開けた。


『ここは、調べれば商品の原価もカロリーも全部分かるし、バイトの時給も正社員の給料もはっきり決まってて、やろうと思えば推定売り上げから原料の仕入れ価格と労働賃金と減価償却と光熱費、それからテナント料と保険料を引いて純利益を算出できる。父さんが納得できる数字を出してくれるんじゃないの』


『まあな』

 父ちゃんはハンバーガーにかぶりつく前にバンズを持ち上げて、人差し指と親指の爪の先でピクルスを引っ張りだすと、俺のハンバーガー目がけて放った。


 そう。

 父ちゃんにとって一番大切なのは数字を伴う整合性で、料理の味やレストランのムードなどは二の次どころか、正直どうでもいいのだ。

 だから逆に、父ちゃんがひいきにしているレストランはコスパはよくても他の理由で大多数の客から文句を言われている。

 ココのように、全てが規格化されていて、特定の店舗のオリジナルやシェフのオススメなど、予想外なところがまるでなくて父ちゃんを安心させ、かつ他の客も満足させられるような場所は珍しい。


 どう、俺のメシの選択、間違ってないっしょ?


 ドヤ顔で母ちゃんを見ると、母ちゃんは俺を見てうなずき、サムズアップして見せた。


『帰りにね、ちょっと寄りたいところがあるの』

 車に乗り込んでから母ちゃんが言った。

『あ? 今からか?』

 当然、父ちゃんはうれしそうでない。

『5丁目の…メガネショップあるでしょ、交差点の角のところの。もう閉まってると思うけど、あそこの駐車場に車、駐められるかな』

 俺は母ちゃんの言うとおりにした。


 車を降り、細い通りをしばらく道なりに行くと、不意に母ちゃんが立ち止まった。

『あのアパートにね、行きたいのよ』

 指差す方向に古びた二階建てのアパートがあった。

『なんでだ?』

『ちょっと、ね』

『あそこに誰が住んでるんだ?』

『部屋が全部一間なので、一人暮らしの人たちばかりね。でも、町内会に入ってないから、全く交流がないの』

『交流がないのに、どうして行かなきゃならないんだ?』

 せっかちな父ちゃんは母ちゃんからはっきりした答えが引き出せないと分かると、率先してアパートに向かって歩きだした。

 そして俺は、何がなんだか分からないまま、ただ二人の後をついてゆるゆると歩いた。


 やがて、母ちゃんが説明する前に、答えが俺の前に現れた。

 こんなに長い文章を一気に書いたのは、生まれて初めてだと思う。

(ついこの間も同じようなことを言った気がするが、そのレコードを破ったぜいっ)

 なので、途中で何が何だか分からなくなった上、いつもアップする時間に間に合わなかったは。

 すま○こ。

 そして、後編に続く〜。

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