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ウチの母ちゃんが25年前に書いた小説見つけたったwww  作者: 征彌
俺は母ちゃんに復讐したい
51/210

51.白鳥は水面下で…

 すごいな。

 この「覆面作家生活」を始めて1ヶ月経ったよ。


 始めて3日ぐらいと、1週間、それから夏休みが終わったあたりと試験の間は本当にしんどくて、何度も

「あー、もう、このままフェードアウトしたい」

と思った。

 俺自身が書いたオリジナル小説だったらとっくの昔に投げ出していただろうな、間違いなく。


 でも、これは「母ちゃんの小説」を掲載するために作ったサイトだし、ここで俺が止めたら、

「何これ。結局、アレでナニなシーンだけで終わりじゃない」

と、母ちゃんがぬれぎぬを着せられることになる。


 リララたんならともかく、濡れた衣を着た母ちゃんなんて見たくもないし。


 だから俺は頑張った。

 更新もほぼ毎日したし、多いときは1日3回もした。

「多いときは1日3回もした」

 主語がないとヤバい意味に取られかねないフレーズだが。


 そしてアクセス解析も見て、当初の

「俺の◯ンコタイムに合わせてアップ」から

「読者が一番読んでる時間(注:読者のウ◯コタイムとはかぎらない)」

に更新するように心がけたし、


「某掲示板に晒すと読んでもらえるらしい」という情報に従って、小説紹介のキーワードに「晒し中」と入れてみたこともあった。しかしこれは、キーワードを入れてから掲示板にお知らせを書き込もうとしたら何かの規制ではじかれてしまい、結局は未遂に終わっている(常駐の板への書き込みはできたのに。謎だ)


 もうちょっとキャッチーなほうがいいかな、と、あらすじも2回変えてみたし、この小説をアピールするために思いつくかぎりのことは全部やったんじゃないかな。


 そうそう、サイトにあった広告を見て「アソアソ・口ーズの新入賞」に応募することも考えたんだぜ!

 あらすじだって賞の主旨に合いそうなバージョンも準備した。

 ほれ。


「私はユニコーン・ハンター、貴腐人の館で働く20歳の癒し系ゆるかわメイド。だけどある日気がついたら見知らぬ世界にいました。ここが25年後の未来ですって!? しかもこの世界の私は結婚していて私と同い年の息子までいるんです! こんな冴えない男の子が私の息子なんて絶対イヤ! 早く元の世界に戻りたい! そう思いながら、今日も町内会で異世界のおばさんたち相手にドタバタしています。ヨメ? シュウトメ? それって何の召喚呪文ですか?」


 どうだ。これなら乙女系の読者だってうっかりクリックするよな?


 でも、タイトルが

「ウチの母ちゃんが25年前に書いた小説見つけたったwww」

では絶対に賞の選考に行く前に落とされるから、下読みまではたどり着きそうなタイトルも考えた。


「異世界の町内会で書記やってます」


 な? ふっと魔が差して読んでしまいそうだろ。


 あー、ちなみにこんな風にチャラく書いて入るが、いろいろな方面に波風立てないよう、俺なりに細心の注意を払ってるんだぜ。


 例えば「アソアソ・口ーズの新入賞」というところをよーく見てほしい。

「アリア◯」ではなく「アソアソ」だ。

 そして「新人賞」でなくて「新入(しんにゅう)賞」だ。

 これほど完璧な偽装はあるまい。


「口ーズ」がそのまんまじゃないか、だって?

 ふっ、これだからシロウトは困る。


「ローズ」

 これが、バラの英語発音を日本語でカタカナ表記したもの。

「口ーズ」

 そしてこれは、漢字の「口」とカタカナの「ーズ」、

 つまり「(くち)ーズ」だ。

 よく見比べたら両者のサイズが若干違うのがおわかりいただけただろうか。


 だから、この裏ワザを使えば「ピ力チュウ」って書いたって平気なんだぜ。

 よく見れば分かるが、「カ」じゃなくて「(ちから)」だからな!


 それにしても、最初に「マリ◯ン・マンソン」が「マソソソ・マソソソ」と書けるって気付いたヤツって偉大だよな。

 俺も将来そんな人間になりたいは。


 ま、そんなこんなで俺は努力を続けた。

 その結果、変化が訪れた。

 アクセス数が激増するより先に、


「母ちゃんのノート」がボロボロになってしまったのだ。


 無理もない。

 だって、母ちゃんにバレたらまずいから、俺、このノートを毎日ほぼ肌身離さず持ち歩いてるんだから。


 つまり、学校やバイトに行くときはもちろん、あの、

友人たちとAの離れに泊まりに行ったときだって、

Aのアパートで試験勉強したときだって、

試験の後にみんなでカラオケに行ったときだって、


俺のバッグの中にはずっとこのノートが入っていたんだぜ。


 これって、書いたらたったの5行だが、実際にはすごく大変だった。

 何しろ、いつなんどき誰かにふっとノートの中身を見られて、


「ちょっ、おまっ、何、書いてんだよwwwwww」


ってことになるかもしれないのだ。

 こんなん見られたら、俺のただでさえ大したことないイメージが一気に地べた突き抜けてマントル層まで落ちるは。


 そもそもマンガでフィクションだから比べてどうする、かもしれないが、あの「なんとかノート」の「名前が地球の衛星と同じ漢字の人」はつくづく肝、座ってたと思う。あんなすげえノート持ってて全然平気だったし。


 俺なんか、ただ「母ちゃんノート」持ち歩いてるだけで心臓バクバクで、今にもマヒしちゃいそうなのにな。


 駅のプラットフォームを歩いていても、

「もしここで俺が事故に遭ったりしたら、まず身元確認にバッグを開けられる」

と思うと、恐ろしくて黄色い線の内側約30センチまで下がってしまうし、


「もし警官に職務質問されたら、所持品まで調べられるかも」

と考えると、変に身だしなみに気を遣って鼻毛切り込みすぎて出血したり、背筋をシャキッと伸ばして歩こうとするあまり、動きがロボット歩行を通り越して、膝から下だけヘコヘコ動く変な操り人形みたいになってる。


 もう、チキンな俺には絶叫モンの1ヶ月だった。


 しかし、だ。

 俺が水面下で激しく脚をばたつかせ、ほとんど沈みそうなところをどうにかこうにかうわべだけ取りつくろって浮いているのを母ちゃんは全く知らない。

 母ちゃんの小説の改変作業で睡眠不足になってヘロヘロしていても、

「また夜遅くまでアニメ見てた・ゲームしてた」

としか思ってないし。

 てか、俺がゲームできない体質だって、そろそろ気づいてくれてもよさそうなんだが。


 もう、いっそのこと母ちゃんに向かって全部洗いざらいぶちまけたら楽なんだろうにな、とも思う。


 だけど、1ヶ月を過ぎた今、俺の「プロジェクト:母ちゃんへの復讐」は当初の「母ちゃんが25年前に書いたアレでナニな小説をネット上で晒す」からさらに進化したから、今、バラすワケにはいかない。


 母ちゃんの驚きが大きければ大きいほど、俺の苦労も報われるってもんだ。


「だから、復讐って一体何なの?」とお考えの方へ。


 続きはウェブで♡


(意訳: 詳細は追ってウェブ上でお知らせいたしますので、どうか引き続き倍旧のご厚情を賜りたく、切にお願い申し上げます)

(注:↑「引き続き」とタイプしたら、コンピューターが勝手にテンプレを出してくれたから使っとくは)

 というわけで「母ちゃんへの復讐」がバージョンアップしたので、それに合わせて今後もバシバシ宣伝活動をやっていこうと思ってる。

 晒し上等、感想・突っ込み大歓迎、辛口批評もご褒美だから、待ってるぜ。

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