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ウチの母ちゃんが25年前に書いた小説見つけたったwww  作者: 征彌
俺は母ちゃんに復讐したい
44/210

44.母ちゃんの小説 第22話

 帰りの車は約束通り遙が運転した。

 運転の邪魔になるから、という理由で翔は後ろへやられ、ふてくされたような顔をしている。しかし助手席の雄司を意識してか口に出して文句を言おうとはしない。

「お前は僕らが思っている以上に研究熱心だな」

 道路交通案内のアナウンスが流れる中、雄司が小さくつぶやいた。

「何がだ」

 遙は当惑したような顔をした。

「暴走族の研究だよ。とても興味本位でやっているとは思えないな」

「そりゃどういう意味」

 雄司の瞳がサングラスの奥でまたたいたようだった。

「つまり暴走族(ゾク)も自然発生的に走り回っているんじゃなくて、何かにつき動かされて走ってるんじゃないかということさ。これは僕らの管轄だろ」

「ふうん。騒霊かね、一種の。暴走族だけに」

「そうさ。翔くんがいい例じゃないか」

 翔は窓越しに外を眺めるふりをしながら、その実ドアミラーに映る遙の横顔を見つめ続けていた。

「普通の高校生がバイクに乗り、仲間と暴走を繰り返した挙句通行人を襲う。世間ではすぐに不良だ、非行だとレッテルを貼ってしまうが、それはあまりに安易すぎないか」

「まあね。人間だって同族を意味なく殺さないようにプログラミングされてるはずだもんな」

「戦争や切羽詰まった何らかの要因がそのストッパーを解除してしまう場合もある。しかしこの暴走にはそういった危機感がない。物質的にも恵まれた者がどうして破壊衝動に走るのか…」

 遙は答える代わりに目を強く凝らした。

 たちまち緑の光があふれる。

「…そして暴走は破壊へとエスカレートした。その次に何が来るのか」

「殺戮だろうな」

 緑の瞳がドアミラーから翔の瞳を射た。

「俺たちが弱かったら、あのときの雰囲気からいうと完全に殺られていただろう」

 翔が居心地悪そうに肩をすくめた。

「だが、今、翔くんの中には数時間前の破壊衝動は残っていない」

「俺の愛の力だ」

 雄司と翔は思わず吹き出した。

「何がおかしい」

「まぁ、そうだけど。つまり、お前の「ショック療法」のおかげで翔くんの憑き物が落ちた、というわけだ。

 遙は指を噛んだ。

「俺は雄司ほどはっきりした推測はしていなかったが、騒霊か走霊(・・)か分からないけどシティを中心にわだかまっている()がそういった影響を与えるんじゃないかと思ったのさ」

「…よく分からないけど…」

 翔は上目づかいにバックミラーの二人を見ながら口を開いた。

「よく分からないけど、走ってると、仲間と走ってると、なんか怖さがなくなって何でもできるような気になった。そして、とにかくもっとスゴいことをしよう、しなきゃいけないと思って、ケンカとか、他の族襲ったり、カツアゲもした。いいとか悪いとかって全然考えたこともなかったな」

 雄司はサングラスを指で押し下げ、その黒い瞳で翔を見つめた。

「じゃあ、今はどう。今でも誰かを襲ったり殺したくなる」

「ううん、全然」

 翔は首を振った。

「なんか嘘みたいにそんな気なくなっちゃった。さっき遙にチェーン投げつけたなんて信じられないくらい」

 遙が得意げにせきばらいをした。

「じゃあ、俺が全ての暴走少年を「心をこめて介抱」すれば、みんな憑き物が落ちるってことかな」

「理論的にはな。でも遙、本当にやれるのか」

 遙は強くアクセルを踏み込み、雄司の背をシートにぶつけた。

「できるわけないでしょ。いくら絶倫の俺でも数千人が相手じゃ。それに俺だって好き嫌いというもんがある。なぁ、翔」

 翔は頬を赤らめてうなずいた。

「根源を探ってモトを断つほうが早いってもんだ」

 車は中央道に入った。

「今、六時だから八時までには俺のマンションに戻れる。朝は食べてくだろ」

 雄司はうなずいた。

「ああ。昼には地方から上京してきた学校の先生と修学旅行の打ち合わせだ」

「今どき秋に修学旅行する学校もあるんだなぁ」

「馬鹿。来年の春の打ち合わせだよ」

 ふと、遙は瞳を元の薄茶にもどした。

「ところで。一つ訊いてもいいかな、島邑センセイ」

「なんだ」

「さっきの「出入り」のとき、カッコ良くピン札撒いてたけど、あれは何の金だったんだ」

 雄司の表情が途端にこわばった。

「あれは…来月添乗する社員旅行の前金なんだ。昨日受け取って、そのままポケットに入れたままにしてた」

「会社の金、使っちゃったのか」

「そう」

 遙は目を細くして意地悪そうな笑みを浮かべた。

「大胆だなー。五十万も使い込みか。さすが「シマ」の次期当主、やることがデカい」

「馬鹿野郎、元はといえばお前が暴走族(ゾク)をかまったからこうなったんじゃないか」

「俺は金出してくれ、とは一言も言わなかったよ」

「畜生。いいよ、僕の口座から出すから」

「五十万も残高あったっけ」

「…ない」

 雄司は喉の奥でうなるように言った。

「先月、城島が来たとき、ヤーさん相手に暴れちまってレストランに三十万弁償したんだ。その前は間島の惇一くんがレスラーにケガさせて、その治療費も僕が出した。全く「シマ」の連中はロクなことをしない」

 遙はふっと表情をゆるめた。

「いいよ、雄司。あとで俺、小切手切っとくから。五十万でも百万でも好きな金額書き込んでくれよ」

「本当にいいのか」

 雄司は真顔で遙を見た。

「ああ。俺と雄司の仲じゃないか」

「ありがとう」

 遙が運転中なのを忘れ、思わず雄司は握手を求めた。

「気にするなって。…ただし、一晩俺と寝ること。これが条件」

「なんだって!」

 雄司は遙の手を振りほどいた。

「畜生! どうせそんなことだろうと思った。冗談じゃない、借金してでも僕はお前の世話にはならないぞ!」


 明け方の仄白く光る道路を真紅のシボレー・カマロは百五十キロ以上のスピードで走っていた。

 ページが変わって次の文章があるので、ここまでが「第1章」に相当するのではないかと思われます。

 俺は普通に読みながら「俺なら朝ごはんはファストフード一択だが、この時代にはなかったのか?」とか「何か金銭感覚が今と違う〜」とか思いましたが、これは時代を反映しているのか、それとも当時の母ちゃんの感覚なのか。

 ちなみに今の母ちゃんの金銭感覚は「ドケチ」だと思います。

 それから、原文のルビのところを一部「」に置き換えてみました。長いフレーズのルビは打てないっぽいので。

 ってか、母ちゃん、ルビ使いすぎ。

by「俺」

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