21.但し……
台風の旧字体「颱」って、飴に似てね?
で、その旧字体で書くと「颱風」になるじゃん。
両方の漢字に「風」が入るって何か変だよな。
「頭痛が痛い」みたいで。
なんでだろ〜と思ってネットで「台風の語源・由来」というのを調べてみてもっとビックリした。
中国語説は近いことだしあっても不思議ではないが、アラビア語説とかギリシャ語説に至っては「ハァ? これの出典、民◯書房じゃねーの?」と思った。
台風の旧字が飴に似ているせいだとは思わないが、俺は天気予報で台風の目がくっきり出てる気象映像を見ると、円筒形で中央の穴にザラメを入れる綿アメ製造機を連想して、無性に綿アメが喰いたくなる。
で、その、台風のおかげで星が見えなかった夜のことだが。
うっすらとした記憶を頼りに花札で遊びつつどうでもいい話をしていたら、友人Cがとんでもないことを言い出した。
どんな女でも必ず落ちるポイントがある。
「マジでかーーーーーっ!?」
友人A、B、そして俺は同時に叫んだ。
「教えろ教えろ教えろください」
Cはニヤリと笑った。
「じゃあ、言おう。まずは、頭のなかに巨大な長方形を描け」
「ちょうほうけいって、長っぽそい四角のことだな? 描いたが、これは何だ?」
「全世界の女性だ。これを全体集合Uとする。しかし、地理的・距離的・政治的・経済的・宗教的な理由等でそのほとんどがお前らとは一生会うことがない」
「当たり前だ!!」
「よってそれらを対象から除外する。次に、残った数からさらに高齢者、まー定年退職ぐらいの年としとく、それから乳幼児・学童・生徒を除く」
「先生、ロリはダメなんスかー?」
「原則的に法律違反は認めん。てか、お前ら違法に走る前に、まず合法から探せよ」
「先生、既婚者は対象に入りますか?」
「あー、それは条件付きということになるな。最悪、お前らの(U)がちょん切られるだろうが」
「(U)は「または」ということですね、集合用語で」
「そうそう。で、全部差っ引いた残りがお前らの対象ということだ。それを円で描け」
「先生、長方形のサイズと比べて対象が少なすぎるので目に見えるサイズの円が描けません」
「しかたないな、じゃあ、脳内でのみ拡大を許可する」
「描けました」
「その円が、取り敢えずお前らの対象と成り得る女性の数だ。しかし、そこにはすでに彼氏がいる者・そういうのに全く関心がない者・関心対象が男性でない者もいるはずだから、彼らを除外する意味でその円の中にさらに小さい円を描く」
「先生、いきなり次の円がものすごく小さくなりました!」
「俺、小さすぎて、円、描けません」
「描くんだ! 描かないとそこでお前らのクエストは終了するぞ」
「どうにか描きました」
「よし! ではここからさらに条件を加えて対象を明確化していく…」
Cの講義は小一時間続いた。
それを全部書くといくら字数を費やしても終わらないのではしょるが、要は、
「泊まれる場所がある」「翌朝帰宅に便利」「知人に見つからない」「余計な出費が必要ない」「翌朝から急に彼氏ぶらない」「危害を加える恐れがない」「清潔である」「マメである」等々、相手にとって都合のいい条件を数学の集合の円ように無数に描いていって、それらが全部重なる相手がいたら女は、
「あ、じゃあ、いいかも」
と落ちるんだそうである。
まるでエアポケットに入り込んだ飛行機のように、ストンと。
しかし恐ろしいことに、俺たちが小一時間かかった上記の絞り込み作業を女は脳内で一瞬で処理するんだとか。だから、落とす側は常に自分が円の重なりの中央にいるように心がけていなくてはならない、と。
うは〜、俺、無理だわ。
「で、Cよ。お前の戦果はいかに」
「んー、ざっと◯人かな」
ええええええっ、マジっすかっ!?
俺たちは尊敬と畏怖の念を込めてCの顔を拝した。
その後Cは自分の講義内容に満足したのか話し終えるなりパタンと寝てしまい、残された俺たちは安らかなCの寝顔をしばし見つめた。
「なあ、俺、一言、言いたいんだが」
「実はオレも」
「おれもだ」
俺たちは顔を見合わせ、一句ずつつぶやいた。
「但し」
「イケメンに」
「限る」
で、家に帰って現在に至る。
ところで花札についてだが、Aの別宅でやったときには、
「鶴」と「満月」で「つるっぱげ」(5文)
「柳のカス」と「桐のカスの下が黄色いヤツ」と「ススキのカス2枚」で
「ガッカリ」(5文)
という役があったが、家で調べたら、
そ ん な 役 は 存 在 し な か っ た。
その役を教えてくれたのは、C。
テメェ、だましやがったな!




