19.離れは慣れ
「何にもないけど、星だけはきれいだから」
友人はそう言った。
夏休み中に何かしよーぜ。
普段からつるんでいる友人4人でそう約束していたが、実際に夏休みが始まってみると、なかなかスケジュールが合わなかった。それぞれバイトや家族がらみのイベントなどがあり、気がついたらカレンダー上の夏は過ぎてしまっていた。
まあ、夏休みが終わったらすぐ同じメンツと会うワケだから、そのまま何もしなくてもよかったんだが、言った以上はやらなくてはという精神的縛りが何となく俺たちの中で出来上がっていて、友人Aが
「じゃあ、オレんち来る? 昔ばあちゃんが使ってた離れがあるんだ」
と言ったとき、残りの三人はすぐさま賛成した。
いやー、
「ネットで検索して出てきた宿泊費が一番安いトコに泊まる」
という案もあったんだけどね。やっぱ、行き当たりばったりの「バカ企画」にいくらお手頃価格でも金出すのはもったいないと思って。
この秋発売の新型の某ノートブックを買いたいという強い欲求もあるし。
俺たちはみんな基本的に同じ某都道府県(これならどこか分かるまい)に住んでいるんだが、Aの家だけちょっとへんぴなところにあって、そのためAは普段はアパートに住んで、長期の休みの間は実家に帰っている。
そして、その実家に離れがある、と。
いいヤツだよなAは。
普段はアパートを集会場に提供し、休みは実家(の離れ)を提供してくれるんだもんな。
てか、俺たちが問答無用で押しかけてる場合がほとんどなんだか。
で、一応、感謝の気持を物で表しておくべきだよな、と思って、規定の料金(コンビニで調達した食料等の経費をAを抜いて頭割りした。ちなみに酒類は別勘定でAも払う)の他に俺は水ようかんを持参した。
なぜ、水ようかんか?
離れに置いてある小型の冷蔵庫がちゃんと稼働するか怪しいと聞いていたから腐る系の物は避けておこうと思ったのと、
離れとはいえ実家の敷地内だし、Aの親御さんに会う可能性があるから、そのあたりの年齢層が食べそうな物がよかろうと思ったのと、
お中元で家に届いたのがそのまま手つかずで戸棚に入ってたから。
9月も半ばだってのに喰わずに置いてるんだからいいよな、こういう場合。
しかし当日は台風の接近で、見たのは星が見えない夜空とカブトムシの代わりに電灯に特攻を繰り返す大きなゴキブリだった。
「ひやぁぁぁん」
顔とか体つきとかけっこうゴツイくせにゴキブリが至近距離に来るとかよわい声を上げて逃げまどうBや、いつもは爽やかキャラで売っているはずなのに
「ゴキブリはな、ああ見えても結構ヤバイんだよ。足にトゲがあるから、刺さったところからばい菌が入る可能性あるし」
と直立不動で変にうんちく垂れるばかりで捕獲にも殺戮にも参加しないCとか、
何か、人間の本性のようなものを見せられたような気がした。
そういやCは、
「オレは狩りに行きたいんだけどな〜」
と最後までこの日の参加に難色示したっけ。
(企画自体はいいが、この日は嫌だという意味)
狩りがしたけりゃバーチャルじゃなくて、目の前のゴキブリを狩れっての!
で、離れに一泊したんだが、
「泊まる」ことが目的で他に特に何も準備してなかったから、コンビニ食料で晩メシを済ませ泥酔しない程度にビールを飲んだら後は話すぐらいだった。
企画段階ではテレビ番組みたいに「絶対に笑ってはいけない〇〇」やってみようぜ〜などと話し合っていたが、
4人じゃ無理だった。
星空を見るのがメインの目的だったから「◯S持ち込み不可」「ケータイは連絡のみ。ゲームすんな」「ノーパソだぁ? 氏ねやゴラァ」という事前ルールを決めておいたのが、曇天ではそれが逆に命取りになった。
「話すのは楽しいけど、話そうとして話すのは何かやりづらいよな〜」
そう思いながらAの許可のもと離れにある引き出しとかを開けたりしてたら、
古い花札が出てきた。
「ちょwwwwwお前のバーチャン、ギャンブラーだったんwwwww」
そこで一挙に場が盛り上がって、その後は明け方本当に眠くてヤバイというころまでダベりながら花札をした。
俺は花札は初めてじゃないが、いるんだな、やったことないヤツってのも。
Bとか、見た目一番花札がしっくりくるのに初体験とか言うからワロタ。
「ねー、この赤タンとか青タンとかの「タン」って何よ?」
短冊の「短」だって知らないんだよな、やったことないから。
ということで、この日俺たちはBの「初めて」をいただいたのだった。
だが。
初めてなのにBは強かった。
俺?
負けたさ〜。
そこまで負けるかってくらい負け続けたさ〜。
てか、バーチャルでもリアルでも俺、ゲーム類弱すぎるわ。
これって、頭が弱いってことか?
つら〜いわ〜。
◯天堂って、まだ花札売ってるんだなっ!!
さっき公式サイト行ってみてビックリした。
見てたら、何か欲しくなってきたは…。




