第2章 リギュン その4
ビオーヴェは置いてある箱についてひとつひとつここにあるのは理由があると言って、ひとつづつ説明を始めた。
まずおっしゃる通り、みな古代の地球の物だという。
一番むこうにある40センチ四方くらいで厚み5センチくらいの黒っぽい箱は、DVDプレーヤーと言い、これで昔、DVDを再生して見ていたのだそうなのだ。
しかし、この機器単独では画像を見られ無いという事が判り、見るためにはテレビジョンという機器が必要である、という事を判り、今度はこの俗に言うテレビの設計図を取り寄せて作ったのが、それが先ほどもう少しで雨雄が蹴ろうとした箱だった。
しかし、この箱のテレビは地球上で普及した物ではなく、テレビというものの可能性をテストするための、最初の実験用に作られたものだったので、とても先にレプリケートしたDVDプレーヤーの映像を、映し出せるだけの能力は無かった。
そこで再び調べ直し、普及していたテレビを見つけ、レプリケートしたのが、この箱の中で最も大きいこの箱だという。
見ると実験用に作られたというテレビの、映像を映し出す、という所はまさにフラスコの底で丸いが、この普及型テレビは前面のガラス面も平らで四角く角張っていた。
ここまで黙ってつまらなそうに説明を聞いていて雨雄だが、
「それでお前はこれで再生して、映像を見たのか?」とビオーヴェに聞くと、
「いえ、データが壊れていますと言う表示が出で、再生できませんでしたので、更にネットワークでDVDの構造そのものを調べて見ました所、古代地球ではパーソナルコンピューターといわれる家庭用の、小型コンピューターが普及していたそうで、それはパソコンと呼ばれていたそうですが、そのパソコンでDVDのビデオデータなどを編集したり読み書きしたりできる事を突き止めました」と、さも得意げにここまで一気にまくし立てた。
「しかし、もう肝心のディスクがなきゃ、お前の努力も無駄だったな」と言って、試験用のテレビを真横から自分の足は怪我の無いように、蹴飛ばすと「ガッシャーン」とガラスの部分全て砕け散った。
「まったく、すぐ何かにあたるんですから、坊ちゃんは…」と、言いつつ掃除用ロボットを室内に呼び寄せ、後始末を命じて、雨雄に
「もうあのディスクは必要ないんですよ、ディスクに入っていたデータは、あのパソコンの中に移し終わっていますから」と、ここで人間なら、したり顔になるのであろうが、ロボットであるビオーヴェは無機質、無感情の顔でさらりと言った。
普及型のテレビにも足を掛け、こいつも蹴飛ばすと割れるかなと思っていた雨雄が
「ん!今なんてった、どういう意味だ」予期せぬビオーヴェの言葉に、言葉の意味の説明を雨雄は催促した。
「ですから、あのディスクの中で読めるデータは、全てあのパソコンの記憶装置、え~と、ハードディスクって言いますが、そのハードディスクにダウンロードしておきました」と今度はしたり顔で、いや、やはり表情の無い顔で、ビオーヴェが説明した。
「何故それを先に言わないんだ、先に言ってりゃテレビも壊れなくて済んだのに」と、まるでビオーヴェのせいでテレビが壊れたかのような言い方をした。
雨雄にとってあながち間違っていないのかもしれないのだが。
「いつも坊ちゃまはおっしゃるじゃ無いですか、話は順序だてて話せって」ビオーヴェが抗議したが、
雨雄は無視して「それじゃあ早速再生して見せろ」と、パソコンの前に陣取った。
「時間は5分足らずしか残っていませんでした、どうやら最初の方だけで、後は年月が過ぎディスクそのものの劣化によってデータは失われてしまったのでしょう」と、ビオーヴェは前置きして、再生ソフトを立ち上げ、再生を始めた。
内容は、最初に二人の人物が写り、私たちは夫婦であるといい、男の方は「織田あつし」と名乗り、女の方は妻で「みなよ」と名乗った。
男の方が、ある人物により、妻が重大な遺伝子的欠陥を負い、これはこの時代ではとても治療できるようなものではなく、またこれは遺伝すると、言うものだった。
このディスクは今後子孫の治療のために、何が起きたか知らせる為に残します。と、言った内容だった。再生できる映像はこれだけだった。
「雨の物語」と繋がって来ました。