第14章 家族 その3
晴雄は美奈代と同じにして欲しいとドクターに頼み、ウエスダーも冬眠カプセルに入れられ、一同は病院から帰り、織田家の居間で話の続きをする事にした。
「おやじ、さっきはモニターが無くて、ある映像を見せられなかったけど、これを見てくれ。
この映像はUSGの艦隊が戦闘に協力してくれたと言う事で、特別に渡してくれた映像なんだ」と、
そう言って壁に掛かっているモニターに、リギュンから映像をダウンロードして映すようにコンピューターに命じた。
その映像は病院らしい所が映っていた。そこに男が現れ何か騒いでいた。
最初は男が向こう向きだったので顔は映し出されていなく、ただ必死で病院関係者に何かを訴えているように見えた。
男は最初後ろ向きで話していて顔が映っておらず、誰だか判らなかったが、こちらに向いた時一同は「えっ」とか、「おっ」とか声が思わず出た。
そこに映し出されたのは晴雄だった。
「お、俺が何であんな所に映ってるんだ。これはいったい何処を写してるんだ」と、思わず晴雄が言った。
雨雄は、「これはペリタン星の母さんを降ろした、病院の監視カメラで取られたものだ。
この映像の隅に病院のマークが入っているだろう」と、雨雄は証拠を示しながら言った。
「しかし何で俺が・・・」晴雄は、行った事も無い病院の監視カメラに、自分が映っている事に納得いかない様子でいた。
「そう、その事だよ、なぜ親父があそこに居て写っているのか。
いや、正確に言うと居たのか。
俺なりにある仮説を立てて推測してみた。
その仮説を裏付ける為にさっき病院で姉さんに頼んで、姉さんのDNAのデータをこっちに送ってもらうように頼んでおいたんだ」と、
雨雄はここまで言って、いったん話を切った。
しかし晴雄は急かす様に、「推理って言ったよな。それはどんなものだ」と、雨雄に聞くと、
「それは、姉さんとおやじが本当の親娘だとしたら、美奈代の義母さんがおやじと一緒に暮らしていたと、言う推測だよ」と、言うと、
「まあすばらしい、ウエスダー姉さんとおじさまが親娘だなんて、すてき」と、姉妹でもないがウエスダーの事を、姉さんと慕っている恵子が感嘆の声を上げた。
「俺はアコーニィ号の事件について、イコムス星に帰ってから調べ直してみたんだ。
そうすると面白い事が判った。
それはあの船に美奈代義母さんの連れ合いも乗っていて、その人も行方不明になっている。
母さんと同じにまったくの手がかりが無くね」と言った時、病院の方からウエスダーのDNAのデータが届いたと、コンピューターが知らせてきた。
雨雄は、晴雄に晴雄自信のDNAのデータも、家の方にダウンロードするように頼んだ。
早速雨雄は、コンピューターにウエスダーと義母美奈代、および晴雄のDNAデータでそれぞれが親子であるかその確率をコンピューターに計算させた。
程なくしてコンピューターが「三人が親子である確率は99.9%です」と、計算結果を知らせてきた。
数字的には100%では無いが、これはほぼ間違いなく親子であると言う事であった。
「やはりな、おやじはペリタン星に行き、母さんと10年暮らし、母さんとの間に子供をもうけるんだ。
その子供がウエスダー姉さんで、おやじはアコーニィ号の事件で居なくなるんだ」と、雨雄は確信を持ってそう言い切った。
「俺がペリタン星に行くだと、そんな馬鹿なことが出来るわけ無いだろう」と、晴雄は否定した。
「俺は母さんを誰だか判らないまま助け、ペリタン星まで運んでしまった。
その為におやじは母さんを助け損なったとずっと思い続け、その思いからずっと酒浸りでいたんだんだろう。
だけど、今母さんを助けしかも10年暮らせるチャンスが出来たんだぜ」と、
雨雄はそう晴雄に説得するような口調で言った。そして更に、
「それともこれからもずっと酒浸りで暮らす方がいいのかよ」と、
雨雄はそこまで言って晴雄の返事を待った。