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青い蝶  作者: 伊湖夢巣
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第13章 ペリタン星 その4

 帰る船内で、雨雄は二人に今までの記憶を消そうと、記憶消去光線を浴びせようかと思った。


 しかし、よくよく考えると、そもそも雨雄がここまで来たのは、二人が記憶を頼りにビデオディスクに残した事が発端だった。


 記録に残す為には、記憶を消すと事は所詮無理なのじゃあないのかなと、思った。


 ここで記憶を消そうが消さまいが二人がディスクを残す事は、雨雄にとってもうすでに起きた事なので無駄であった。


 ただ一つ、彼らの記憶の中に刻み込まれているかどうか分からない事が一つあった。


 それは雨雄の二の腕に、蝶のあざがある事を二人は知っているのだろうかと、言う事だった。


 「実を言うと先程救助したのは、私の実の母なのです」と、雨雄は切り出した。


 「まぁ、」と、美奈代は驚いた。


 あつしも驚いたが何故今その事を、雨雄が今になって話すのか判らなかった。


 「お二人を乗せ最初に出た時空間が、私の母が行方不明になった貨客船が攻撃されている所でした。


 しかし私は無理なタイムトラベルで、何時のどの場所に出たのか皆目見当がつかなかった。


 時間を掛ければ判ったのでしょうが、あなた方も知っての通りそんな余裕がありませんでした」と、ここまで言って、一息つき腕まくりをして二人に腕のあざが見えるようにした。


 「逃走しようとワープに入る直前、他の船が・・・」と、そこまで言うと、「なんと」と、意味不明の言葉を雨雄が口にした。


 「あの船はリギュンだったんだな、そして俺のおやじが俺を助けに来たものだったのか」と、「うんうん」と、言うようにうなずきながら、一人納得していた。


 「なんですか」と、あつしが聞くと、


 「ああ、申し訳ありません。今リギュンが過去のこの船の行動の記録を教えてくれたんです。


 その中に私を救出に行った時の様子を知らせてくれました。


 それは私の父があのアコーニィ号の窮を聞いて、現場にワープで駆けつけ様とした時、ワープを抜けた途端リギュンと同じ位の大きさの船と接触したと言う事です」と、雨雄は説明した。


 「へぇー、この船は親子二代で乗り継がれているのですか」と、あつしが言うと、


 「いや、父は、あの時母を助けられなかった事はおろか、その後必死の捜索にもかかわらず、残骸の中から母の痕跡すら見つける事が出来なかったのは、自分の勝手でこの船で飛び回っていのが原因だと思い込み、その後すぐに船を骨董屋に処分したのです」と、言った後、また考え込むように黙り込んだ。


 そして雨雄は「私は今思うと、果たしてあの女性、いや母を救出したのは正しい判断だったのか判らなくなりました」と、少々うなだれた。


 「私はそこに救助が必要な人が要れば救助する。


 その考えは間違っていないと思います。


 もし躊躇して救助できない事になれば、まさに『後悔先に立たず』です。


 あなたのした事は間違いなく、正しい事をしたのです」と、あつしは弁護士らしい口調で、雨雄を勇気付ける様に、きっぱりと言い切った。


 「ありがとう、御先祖様に勇気付けられるなんて光栄ですね。


 ところで話しを元に戻しましょうか」と、少々照れながら、今度もわざとゆっくり腕まくりを降ろした。


 「ワープに入る直前リギュンが回転し、ジェル式の演算装置を使っているコンピューターが混乱を起こし、またまたとんでもない時空に私たちが放り出されたわけです」


 「もっとも、時間の神様は・・神様と言うものが居ればですが・・この事は最初からこうなる様に仕組んでいたんでしょうね」と、自嘲気味に雨雄が言った。


 『なるほどね』と、言うように声には出さないが、あつしと美奈代は顔を見合わせうなずき合った。


 「そこで最後になりましたが、何故母と判っていて探さないのかと言うと、彼女は今降ろした星、ペリタン星と言います。


 そこで母は、過去の記憶の無いまま10年過ごし、10年後友人の紹介で再び父と出会い、また過去の記憶の無いまま30年を過ごしています。


 当然私も一緒です。これは私にとってもうすでに起きた事なので、過去に帰って変える事は出来るのですが、それをすると未来にどの様な影響が出るか判らないので、過去を変えるような事はご法度なのです」と、雨雄は丁寧に説明した。


 そうこう話している内に21世紀の地球、ドイツの事故に遭った坂に程なく到着した。


 今回はちゃんと帰るべき時空に時空ブイを置いていて、その時空に帰るのが正確に出来た。


 ただしそこには2日前の雨雄たちが居るので、最初から時空の位相をずらし周囲からは見えなくしていた。


 到着は車がぶつかる前にして、ぶつかった瞬間にあつしと美奈代を眠らせた状態で、二人を車の前に降ろした。


 2日前の雨雄たちがそこでぼやぼやしていたので、雨雄は通常通信でこう告げた。


 「この時間はもう問題ない、君たちはご先祖二人連れて、少し時空間の旅を体験させてあげてはいかかですかな」と、雨雄が言うと向こうは戸惑っていたようなので、更にこう続けた。


 『まあ、俺を信じて時空間旅行を三人でしてみる事だな』と、言うと向こうから、


 『ちくしょうめ、あの野郎何か隠してやがる』と、帰ってきたので、駄目押しのつもりで、


 『なんだよ、自分が自分をけなしやがって、さっさと行きやがれ』と、言ってやると暫くすると、やっと動き始めた。


 それを見て雨雄もリギュンを始動し、ここより遥か未来の自分たちの住む時間へと帰っていった。

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