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青い蝶  作者: 伊湖夢巣
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第11章 防戦 その3

 リギュンは、重力コントロール装置によって少々船が極端な静動をしても、内部にいるとほとんど感じない。


 しかし、船が極端に早い回転状態になった為に、重力コントロール装置ですべて打ち消すほど対処しきれなかった。


 コックピットにいる雨雄にしても。同様にめまいを覚えていた。


 更にリギュンも目を回していた。


 リギュンのコンピューターシステムの主演算回路は、半固形回路で出来ていてそれは人間を含めた動物の脳のような作りになっていた。


 当然思いっきりそれを回転させると、動物の脳と同じに目を回すような症状になった。


 その目を回す事が、またしてもリギュンをワープだけでなく、タイムトラベルをしてしまう様な間違いを起こしてしまった。


 リギュンの混乱したコンピューターによりタイムトラベルし、アコーニィ号が攻撃を受けた時間より更に10年ほど前のペリタン星に時空間移動したのだった。


 そこは激しい戦闘の真最中であった。


 それは後に「ペリタン星奇跡の大勝利」と、語り継がれ、この戦闘より後にはAUGUによる攻撃らしいものは、先程雨雄たちが遭遇したアコーニィ号の悲劇しかなくなっていた。


 ペリタン星は鉱物資源の豊富な惑星で、その周りを回る8個の衛星にも軽金属が豊富にあった。


 ペリタン星全体が、第3宇宙域での宇宙艦隊工廠のようになっていて、星の周りには幾つもの宇宙ドックが軌道上を回っていた。


 戦争をするならまず相手の生産拠点を叩くのが基本なので、この星はまさに格好の標的だった。


 宇宙艦隊にしても第三宇宙域で、まず一番に守らなければいけない星だと言う事は判っていたので、たやすく攻撃出来ない様に星の防御システムは頑丈に構築されていた。


 星の周りには24個もの迎撃用衛星が配備されていて、衛星同士もお互いを守れるようその衛星に搭載されているエネルギィ砲の射程内に隣の衛星が入るよう、それぞれが配備されていた。


 その様な星を攻撃するには、圧倒的な戦力の差によって攻撃するのが一番良く、ASGUもその例に漏れることなく、二十の大艦隊を率い戦闘艦数も二百隻以上と言う大艦隊で奇襲を掛けてきた。


 対してUSGは星に滞在している艦船は八十艦近くいたのだが、その中で戦闘可能な艦船は数十隻しか居なかった。


 両者の勝敗は、戦艦の数だけだと火を見るより明らかで、USGの敗北は時間の問題だった。


 戦闘が激しいのは星の防御システムが十分機能し、その頑強な防御システムによって激しいASGUの戦艦の攻撃を持ちこたえていたからにすぎない。


 しかし、その防御システムも数で圧倒する敵戦艦によって少しずつ壊されていった。


 一つ防御用の衛星が壊されるとその隣の防御用衛星が壊されていき、小さなほころびが徐々に大きくなっていき、今防御システムその物が崩壊しようとしていた。


 頼みのUSGの第7、第8および第9宇宙艦隊の第3宇宙域警備艦隊は、第3宇宙域にばらばらに展開していた。


 報を受け急遽ペリタン星に向かってはいるが、このままでは到着するまでにペリタン星が瓦礫の星となるのは目に見えていた。


 そんな敗戦濃厚な所に、リギュンは飛び込んでいったのである。


 到着直後は出発直前のアクシデントもあり、雨雄も混乱していた。


 ただペリタン星は歴史的にも有名な星なので、雨雄も何度も映像を見た事があり、一目見てここがペリタン星であることが分かった。


 唯一違っていたのは、雨雄が暮らしていた時間のペリタン星では防御衛星が二重に配備されていた。


 しかし、今、目にしているペリタン星は一重の防御衛星群しかなく、雨雄が知っているペリタン星とは少し様子が違っていた。


 「ここはペリタンらしいが、俺の知ってるペリタンじゃないな」と、雨雄がリギュンに話しかけ、


 「ちょっとここのコンピューターに接続してみるか」と、ペリタン星のネットワークに接続可能な高さまでリギュンの高度を下げた。


 リギュンのその小さい船体と、雨雄の脳と直結された航行システムよって激しい戦闘の中をするりするりとすり抜け、難なく地表近くまで降りて行けた。


 雨雄にはここが何時の何処なのかという事も気になって居た。


 それに先程救助した女性も、この船では治療が難しく、専門の医者に見てもらう必要があり、彼女を収容してくれる病院も見つけたかった。


 地表近くまで降りこの星のネットワークに接続し、雨雄はこの時空があの「ペリタン星奇跡の大勝利」の時だと言う事を知り、武者震いをした。


 検索によりルインダを収容できる病院を探し出し、その病院にも連絡が取れルインダをその病院に転送できる事になり、早速その病院に転送した。


 病院に移動させられたルインダは医師達の「あなたは誰ですか、自分の名前が分かりますか」と、言う問い掛けに、


 ルインダはまだ美奈代が傍に居るものと思い込み、「みな・・よ・・・」と、切れ切れで小さな声で美奈代を呼んだつもりでいた。


 それを聞いた医師達はこの女性の名前が「みなよ」であると思い込み、「みなよ」と病院のカルテに記された。


 そしてルインダはアコーニィ号で頭を打っていた事もあり、そのまま深い眠りに着き、更にそれまでの記憶を深層記憶の中に埋もれてしまい、自分の本当の名前すら思い出せず、この星で40年の歳月を過ごすことになった。

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