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青い蝶  作者: 伊湖夢巣
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第11章 防戦 その2

 アコーニィ号は、客や荷物を乗せるユニットを連結できるように、一本の心棒の様なメインの通路から、一定間隔に出ているアームでユニットをロックできるようになっている。


 それが、今船の最前部である動力部を残してユニットのロックが外れ、客が乗っていたユニットはそのまま緊急脱出シャトルとなって切り離されていた。


 乗客たちのユニットは船からかなり離れているが、荷物が載っていた物はその辺に漂っていた。


 だから今、アコーニィ号はまるで動力部を頭とした、身を食べた後のさんまの骨の様に見えた。


 そして、その向こうにこちらを狙う様に船首をこちらに向けた船が見えた。


 それがASGUの駆逐艦級の戦艦であった。


 「あれがそうなのですか・・・」と言いかけ、何しろ戦闘のできる宇宙船など始めて見る物なので、あつしはただモニターを見入るだけだった。


 しかし美奈代はさっき雨雄が医療室に女性を救助したので、様子を見てきてほしいと言われた事が気になっていた。


 「あのう、医療室の方は何処をどう行けばいいのでしょうか」と、雨雄に尋ねると、


 「あっ、そうだったな」と、一度モニターに向き直っていた顔を、再びあつしたちに向け、手であつしたちの立っている後ろの通路を指差しながら、


 「その通路を行って、左手に部屋があります。今ベッドの上に女性が横たわっています。その方を見てきて頂けないでしょうか。


 こちらでモニターは出来るのですが、やはり人がいた方がいいかと思いますので、お願いします」


 「でも、私たちには医療の知識なんてないのですが」と、あつしが自信の無い返答をしたが、


 「交通事故の時のように対処すれば良いのなら、私、少しの事なら分かるわ、アメリカに居た時運転免許を取る為に、講習を受けさされていたから」と、


 美奈代が言ってあつしより先に通路の方に向かい歩き始め、医療室らしき部屋を見つけ入っていった。


 あつしも美奈代の後を追い、部屋に向かった。


 リギュンが船首の方向を敵艦に向けた事により、敵艦がリギュンも攻撃態勢に入ったものと見て、艦の前方主砲にエネルギィを充填し始めた。


 「船越しに撃って来るつもりらしいぞ」と、雨雄が言うと、ビオーヴェが


 「坊ちゃん、どうしますか」と、割とのんびり聞き返した。


 「こういう時はだな」と、一拍置き、「逃げるんだよ」と、今度は早口でまくし立て、同時に船を反転させ、ジグザグにすばやく動きながらその場を離れたその時である。


 今までリギュンがいた場所めがけエネルギィ光線が跳んで来た。


 まさに間一髪危ない所だった。


 そのエネルギィ波はアコーニィ号をかすめこそしたが、アコーニィ号に多少の振動を与えた。


 その振動はアコーニィ号にとって割と大きく、通路に横たわっている小さな雨雄の心肺を刺激するには十分な振動であった。


 アコーニィ号に横たわっていた子供の雨雄は、「すぅっ」と、息を吸い込むと、転んだ時に色々な所を打ち、その打った所が痛むのか、「うわぁーん」と、すでに誰一人いない船内で、大きな声で泣き出した。


 ASGUの艦船は次々と、リギュンに向かって撃って来た。


 雨雄も必死でリギュンを操りかわしていたが、このままでは何時か当たるのではないかと思い始めていた。


 「このままワープするぞ」と、言った時である。


 「前方に小型船がワープでこちらに向かってきています。このままでは衝突します」と、ビオーヴェが言い終わらない内に、


 「ワープ」と、雨雄は言った。


 リギュンがワープに入る直前、小型船がワープを抜けリギュンの左前方に姿を現した。


 そしてまだワープに入りきっていなかったリギュンの左側に、相手の船の左側腹部に接触し、雨雄の乗っていたリギュンは、反時計回りに高速で回転を始めた。


 その頃、医療室では横たわっている女性、ルインダに「大丈夫ですか」と、美奈代が声を掛け女性の意識レベルを見ていた所だった。


 「ここはどこ」と、聞き取るのがやっとの声でルインダは答えた。


 「赤ちゃん。私の赤ちゃんはどこ」と、今度はあわてて美奈代たちに聞いた。


 美奈代は「大丈夫よ、赤ちゃんは元気でいますよ」と言うと、ルインダはその言葉に安心したのか、目をゆっくり閉じかけた。


 「あなたの名前は、分かりますか。自分の名前がいえますか」と、美奈代がこのまま意識が無くなるのを恐れしゃべり続けた。


 「あなたの名前は、なんていうのですか」と、逆にルインダが美奈代に聞き返した。


 「えっ、私。私は美奈代よ」と言うとルインダも復唱するように「美奈代」と、言った。


 その時である、美奈代やあつしは軽いめまいのようなものを感じ、気分が悪くなりその場に倒れそうになった。

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