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青い蝶  作者: 伊湖夢巣
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第6章 映像記録 その2

「よし、行くぞ!」と、誰に言うでもなく言ったが、それを聞いていたビオーヴェは、

「行くのでは無く、帰るんでしょう」と、聞きなおした。


 「うん。帰るとも言うな」なるほどなと、一人納得してうなずいてはいたが、ビオーヴェが言う、帰る場所と、 雨雄の思っている場所時間はまったく違うところであった。


 当然ビオーヴェの帰るとは現在のイコムス星であり、今入院中である雨雄の義母のところであった。


 「よし、じゃあ時間航行の準備をしよう」と、雨雄が言うと、ビオーヴェはその表情のない顔を雨雄に向け「え!」と、言う感じで雨雄を見た。


 「年月日を設定してください。年号は銀河暦でも、地球暦でも構いません。」と、柔らかいトーンの女性の声でリギュンが応答してきた。


 「ほう、銀河暦は何となく分かるが、何で地球暦でもいいんだ?」と、雨雄が疑問を口にすると、


 「地球人がオーナーだった頃が長く続きました。その結果地球暦をプログラムした方が良いということになりました」と、リギュンが説明した。


 「ほう、それは俺にとって都合のいいことだな」と、雨雄は一人うなずき満足していた。


 「よし!、それでは地球暦2000年1月1日あたりに行ってみようか」


 「時間をさかのぼる場合、200年以内であれば0.1パーセント以内で目標時刻に到着できますが、それ以上さかのぼる場合百年に付き1パーセントづつ誤差が大きくなっていきますが、よろしいでしょうか」と、リギュンが時間誤差について尋ねてきた。


 「ちょっと待てよ。今地球暦で言うと何年になるんだ?」と、雨雄がたずねると、


 「はい、3201年になります」と、リギュンが答えた。


 「そうするとだ、ざっと1200年さかのぼる訳だから、誤差はおよそ20年にもなる訳だな」


 「その様になります」と、リギュンはあっさり肯定した。


 「ところで、例のビデオデータだが作成年月日は分かるか?」


 「はい、分かります。地球暦2012年7月29日になっています」


 「そうか、それなら誤差の範囲内って事だな」と、質問とも独り言ともいえないような感じで、ポツリと雨雄が言ったが、「そういうことになりますね」と、横からビオーヴェが口を出してきた。


 それをお前には聞いていないよと、言いたげに雨雄がビオーヴェの方を見ながら、こう言った。


 「よし、それじゃあ。たいした問題じゃあないな。地球の2000年に向けて出発しよう」と、出発の命令をしたが、リギュンからは「問題があります」と、返ってきた。


 「なんだ?」と、いかにも不満そうに雨雄が聞くとリギュンは、


 「地球暦2000年前後のこの宇宙域は混沌としていて、騒乱の絶えない地域でした。


 このまま時間航行をした場合、戦闘の真っ最中に遭遇する場合があり大変危険です」と、警告してきた。


 「なるほど、そういう危険もあるわけか」と、納得したが、「それじゃあどこがいい?」と、尋ねると、


 「2000年前後の地球近くの宇宙域ですと、比較的安定しています」と、リギュンではなく、ビオーヴェが答えた。


 「なんでそんな事を知ってるんだ?」と、雨雄が尋ねると、ちょっと言いにくそうにビオーヴェが、


 「その頃私とリギュンはあるご主人に仕えていまして、地球の近辺で宇宙海賊のようなものをしておりました。


 あまり技術の発達した星はありませんし、当時この銀河では地球の周辺の方が偏狭の地でした。


 むしろ今で言う第3宙域の方が文明が発達していて、その文明による遊びの犠牲になったのがイコムス星でした」


 「ほう、そうだったのか、あまり歴史に興味が無かったもんでな、俺は知らなかったな」と、雨雄が言い、こう続けた。


 「そんな事よりどうすれば安全な航行になるのか、どちらか教えてくれないか」と、ビオーヴェともリギュンなのかも分からないように問いかけた。


 そうするとリギュンが、「それですと、現在の時間で地球の近くまで行き、そこで時間航行するのが向こうに到着した際、宇宙船などが少ないのでよろしいかと思います」と、提案してきた。


 「そうか、じゃあ早速ワーム航法で第一宙域に向け出発してくれ」と、雨雄が言うと、リギュンはワーム航法に移る準備を始め、まもなく地球に向け出発した。


 宇宙の亀裂を利用するこの航法は、航行中亀裂の変化により船体の破損、と言う危険が無いとはいえないが、最近は研究も進みほとんどその危険性も無くなっていた。


 銀河の端から端までわずかのエネルギィで数分の内に、移動できるように今は出きるようになっている。


 数分の後リギュンは地球の周回軌道、それも月と同じ高度上で周回を始めていた。


 「よし、今度こそタイムトラベルだ!」と、張り切って雨雄が言うと、リギュンもそれに答え、時間航行に早速入った。


 コックピットの椅子に座り前面にあるモニターで外を見ていた雨雄の目に入って来たものは、何もなくまばゆいばかりの光だけだった。


 「まもなく目的時間に到着します。タイムワープ終了します。到着地点の安全は完全に保障されておりません。タイムワープ終了後すぐ動ける態勢をとって置いてください」と、リギュンが警告を出した。


 まもなくタイムワープを抜けたリギュンだったが、そこは穏やかな宇宙空間で、先ほど未来にいた月軌道上で周回していた。

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