第4章 浮上 その2
ビオーヴェと、事務所のほうに帰りかけていた骨董屋のオヤジも含め、3人がリギュンの中に入り、それぞれ見て回った。
リギュンに入って最初に口を開いたのは、骨董屋のオヤジでビオーヴェに、
「お前さんさっきこの船の型式をH729‐1型といったな、しかしこの船の現在の登録型式はH729‐Rj1型だぜ、Rjが無ければ小型恒星間戦闘船だったが、今は型式にRが付いて時空航行船になってるな。
しかもjが付いてるって事は、高速航行が可能な銀河タイプで、この今我々がいる銀河ぐらいの大きさだと、数分で横断できる速さを持ってるって事だ」と、言いビオーヴェのほうを見て、なぜ型式が違うのか説明を求めるような目をした。
「リギュンのデータベースにアクセスした所、私と別れた300年前は確かに普通の恒星間貨物船でしたが、およそ200年前にタイムマシンを恒星間宇宙船に乗せる実験の為に、このリギュンが使われたようです。
その時にこの銀河を自由に行き来できるように、船の航行速度も上げられた様です」と、みんな船の中を歩きながら、ビオーヴェの説明を聞いていた。
みんなが船内のカーゴスペースであろう所に入って、また骨董屋のオヤジが、そこに据え付けられている機械を見て、「こりゃほんとに年代もんだ」と、感心した。
そこにはRタイプのタイムマシンが据え付けられていた。
雨雄が、「よし!これで過去の地球にいけるぞ」と、言うと、骨董屋のオヤジが、
「ほう、地球か!しかしここ300年くらいの地球に行っても、何も代わり映えしないだろうな」と言うと、雨雄は
「そんな最近じゃないよ、俺が行きたいのはおよそ1200年前の古代の地球だよ」と答えると、骨董屋のオヤジが困惑したような呆れる様な顔をして、
「そりゃあこのマシンじゃ無理だ!俺の知っている限りこの手のマシンはせいぜい300年くらいが限度だ、1200年も行っちまうと、10年や20年の誤差が出ちまうぞ、止めとけ止めとけ」と、と言って手を顔の前で左右に振った。
そこへビオーヴェが話に割り込んできた。
「お話中すみませんが、リギュンから現在この船の所有はどうなっているのか、聞いて来ていますが」と、雨雄、骨董屋のオヤジと双方の顔を見た。
「俺はこの船はもう譲ってもらう事に決めたが」と、雨雄が言うと、骨董屋のオヤジは、
「そうだな、俺も異存は無いし、ここに置いておかれても、他の者が動かす事ができないんじゃあ、あんたに持っていって貰うしかないじゃないか」と、雨雄の顔を顎で軽くしゃくりながら言った。
「それでは決まりましたね、それでは坊ちゃまにリギュンから話しがあるそうです」
「雨雄様、とお呼びしたのでよろしいでしょうか?」と、先ほど船外で聞いた角の取れた柔らかい女性の声が聞こえてきた。
その声は、「この船の所有者には、特別にリギュンのコンピューターと、所有者の脳を直接リンクできます。」と言うことを伝えてきて、「貴方はどうしますか?」と質問してきた。
「それをするとどうなるんだ?」と、雨雄が逆に質問したが、リギュンは
「簡単に説明すると、私が貴方の体の一部になるのだという事です、詳しくは体験されるのが一番かと思います。リンクを後で外すには簡単に出来ます。私を手足のように扱おうと思われるのなら、ぜひお勧めします」
「それで、リンクするのは面倒な手間がかかるのか?」と、更に雨雄が質問すると、
「いえ、簡単な施術で終ります。10分もかかりません」
「よし、それではやろうか」
「それでは、医療室の方においでください」と、リギュンが言ったので、雨雄はそれに従い医療室を探しながら目指した。
医療室にはベッドがあり、そこに横たわれと言われ横たわると、リギュンが再度、「よろしいですか?」と、確認してきたので、雨雄は、
「1つだけ聞いておきたいんだが、前のこの船の持ち主、晴雄はリンクしていたのか?」と、聞くと、
「はい、短期間ではありましたがしていました、しかし、この船を手放す時外しました」と、リギュンが答えると、
「外す事も出来るのか、それじゃあ早くやって貰おうか」と、体をベッドの上に横たえた。
10分にも満たないうちに、その手術は終わり、雨雄はベッドから立ち上がったが、立ち上がった瞬間、クラッとしてベッドに手を付いて支えた。
雨雄には今、自分の体がどうなっているのか分からなくなっていた。それは感覚的なものの情報が今までの数倍に増え、それが慣れない脳に入って来たものだから、脳の中で混乱が生じ、めまいに似た症状がでたのだ。
それを見ていたウエスダーが、手を貸そうと歩み寄ったが、それを雨雄は手を軽く上げ制し、
「大丈夫、ちょっとめまいがしただけだから…」と、言ってベッドから手を離し今度はしゃんと立ち上がって言った。
「これは凄いな!この船の中といわず、外までこの船のセンサーが届く所まで手に取る様に、みんな分かるぞ」と、言うと、ウエスダーが
「でもまさか、私の下着までは分からないでしょう?」と、言うと、雨雄がつかさず、「ピンク!」と、言ったとたん、ウエスダーのびんたが、雨雄の頬を打っていた。