第5話 渡り農家の逆召喚 ~身分違いです~
あれから1~2週間ほど経ちました。2から3回後の逆召喚儀式魔術です。
「カイト。」
姫さんも元気です。
「また村はずれなのね。」
「二度目ですね。」
たまにはあります。
「また板を並べてるわね。前よりも並べるのに迷わなくなってるけど。」
置き直す回数が明らかに減っていますからね。
「板の裏に座標が描いてあるらしいですよ。」
「裏に?」
「表だと魔法陣に影響があるかもしれないからだそうです。」
インクを変えるにしても、至る所に数字が描いてある魔法陣は不安ですからね。
「そうなのね。詠唱班の人達は、何か食べてるわね。」
飲み物は持っていませんね。
「呪文を唱えやすくする飲み物を飴にしたそうです。」
「ふうん。周りの観客の人が食べているのは、お店の売り物かしら。」
「でしょうね。食べ物の店もいくつか出ていますし。」
飴玉の店もありますね。あ、あちらは串に肉が刺してあります。
「立派な見世物ね。」
「娯楽も少ないですから。」
光る柱が出ない失敗も無くなりましたし。
「で、今日の娯楽の人は?」
「渡り農家のノームさんですね。」
「やっぱり騎士じゃ無い。」
拘りますね、ちょっとむくれています。
「候補がいないので。」
「非協力的だって言ってたかしら。」
騎士団から行方不明者名簿を出してもらえれば良いのですが。
「『急に兵舎に来なくなった』だけだと逃亡兵との区別がつかないので。」
「『異世界に召喚された』騎士だとわかっていれば資料も出してくれそうね。」
「こちらとしても、『異世界に召喚された騎士』と言う所まで確認してもらった方が良いですし、もう少しその辺りを説明してみましょうか、しっかりと。」
異世界召喚者名簿をいただければ、こちらの作業も楽になりますね。お互いに気持ち良い取引にしたい所です。
「そういえば渡り農家の人の逆召喚も珍しいわね。」
「普段なら次の所に行ったと思われますからね。」
居なくなっても分かりません。
「今回は思われなかったの?」
「働いた報酬を受け取る前に消えたそうです。」
酒場でそんな話をしてたんだそうです。
「報酬は受け取ってから移動するでしょうね。」
「生きていけませんからね。それで不審に思った捜索の部署の者が、召喚確認用魔法陣を使った所、召喚されたことが判明したんです。」
姫さん開発の魔法陣のおかげですね。
「そんな捜索の部署もあるのね。」
「捜索届や召喚の目撃情報を待つだけだと、彼女や家族からの知らせに偏りますから。」
「家族からの知らせなら歓迎だけど。」
彼女がいるとは限りませんからね。しかし…
「家族からの届けは、家出しているだけな事が多いので。」
「……捜索部隊の人が見つけてくれた召喚者を喚び戻しましょうか。」
「そうしましょう。」
皆が所定の位置に着きます。
姫さんが魔法陣に魔力を流すと、魔方陣が淡く光ります。
それを合図に、呪文の詠唱が始まり、詠唱が進むにつれて、光がだんだん強くなります。
詠唱が止むと同時に姫さんが力ある言葉を唱え、唱え終わると、魔方陣の光が目を開けていられないほどになり、眩しい光が皆の視界を奪います。
その光が収まると、がっしりとした体格の男の人が立っていました。
「私は第2王女エルメラと言います。貴方がノーム様ですか」
「き、綺麗なお姫様に声をかけられた…。」
ちょっと頬が赤いですね、少し呆けているようです。
「ありがとうございます。この国は今魔物に攻められています。お力を貸していただけませんか。」
「もちろんだ。国を守るだ。」
やる気になったようですね。ありがたいことです。
「じゃあ全てが終わったら結婚しませんか。」
「そ、そんな、身分が違いすぎるだぁぁぁ。」
あ、村はずれへと駆けていきましたね。さすが召喚者、足が速いです。
「なんで。」
「平民で王女様との結婚は身分が違いすぎますからね。怖気づいたのでしょう。」
「なんでよぉぉ」
叫んでも帰ってこないと思いますよ。
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