第2話 狩人の逆召喚 ~恋人はいないけれど~
あれからしばらく経ちました。10回位後の逆召喚儀式魔術です。
「カイト」
姫さんがやって来ました。
魔法陣を描いている方を見ています。
「また準備の様子を見ているの?」
「ええ、魔法陣班の準備も手馴れてきたようです。」
「そうね、線を描くのも早くなったし、土木工事にも見えなくなったわ。インクは一度流し込んで上から塗っているの?」
2度手間にしか見えませんけれど。
「先に流し込んでいるのは木の樹液を加工したものだそうですよ。インク削減の工夫だそうです。」
「今度は森の木が無くなりそうね。」
「切り倒すわけじゃありませんから。枯れ木が増えるだけですよ。」
木は無くなりませんよ?
「枯れたら同じだと思うわ。」
「枯れない程度に広く浅く樹液を取ってもらいましょう。」
こちらも節約方法は研究させますかね。
姫さんはローブを着た集団の方に目を向けます。
「あっちは詠唱班の人達かしら。」
「ええ、練習もぎこちなさが減っていますね。」
「以前より顔色が良いわね。」
「緊張が解れてきた様です。」
そしてぐるっと周りを見渡します。
「周りの人が増えているけど、今回関係者が多いのかしら。」
「いえ、見学に来た人が多いようです。召喚が成功するときれいな光がともりますから。」
「失敗して光らないことが有るのが不思議なのよね。」
「異世界ではなくこの世界にいるのでしょう。ただの行方不明者や家出人など、調査して弾いているのですが、いくつか残るようで。」
召喚を目撃した人がいないと確証はありませんからね。
「異世界に召喚されたのかどうかわかる魔法陣を作ってみましょうか?」
「お願いします。最近行方不明者を探すところと勘違いして、捜索届を出す感覚で届けてくるものまでいますから。」
『行方不明の人を探してくれる所はここですか?』って聞いてくる人もいるんですよね。
『家出した息子を連れ戻してくれるのはここか!』って人もいましたけど。
「急いで作るわね。」
「お願いします。」
これで確認作業がずいぶん楽になります。
「ところで、これだけ儀式魔法の準備に慣れて、緊張も解れる程、逆召喚魔法を繰り返したのに、騎士が一人もいないのは何故?」
姫さんがジト目になっています。そんなに騎士の忠誠が欲しいのですか。
「騎士隊が非協力的なのと、城から1日以内の場所で行方不明になっているとわかる人がいないせいですね。」
「前から思っていたけど、なんで城から1日以内?」
「結界を張りに帰れませんから。」
毎日張らないと結界が消えます。
「仕方がないわね。」
姫さんが納得してくれたようです。
「今日は、狩人のハッターさんです。」
「今日も騎士じゃ無いのね。」
「その代わり彼女はいません。」
姫さんへのささやかなサービスですね。
「代わりに奥さんがいますとか?」
「それは3回目ですね。」
「じゃあ婚約者?」
疑い深くなりましたね。
「それは5回目です。今回は妻も彼女も婚約者もいません。」
「本当?」
「複数の関係者に確認を取っています。」
「じゃあ、逆召喚始めましょう!」
皆が所定の位置に着きます。
姫さんが魔法陣に魔力を流すと、魔方陣が淡く光ります。
それを合図に、呪文の詠唱が始まり、詠唱が進むにつれて、光がだんだん強くなります。
詠唱が止むと同時に姫さんが力ある言葉を唱え、唱え終わると、魔方陣の光が目を開けていられないほどになり、眩しい光が皆の視界を奪います。
その光が収まると、中心に一人の男が立っていました。
背が高く細身ですが筋肉質で容姿も整っているようです。
「私は第2王女エルメラと言います。異界より戻りしハッター様ですか。」
姫さんが中心の男、ハッターさんに言葉をかけます。
「そうだよ綺麗なお姫様。」
ウインクしながら姫さんに軽く返す。
「ハッター様、この国を助けるため、力を貸してください。」
「いいよ。僕は綺麗な娘さんのお願いは叶えることにしてるんだ。僕を独り占めしようという願い以外はね。誰か一人に縛られる気はないのさ。この国のかわいい女の子やムサい男どもを助けてくるよ。」
姫さんに投げキッス一つ投げると、そのまま颯爽とどこかへ去っていった。
その場に残された姫さんひとり。
「確かに彼女も妻もいないし、お願いも聞いてくれたけど。これは違ぁぁぁう!」
やっぱり空に叫んでいました。
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