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第一話偶然重なりの二人

この物語は、特別な出会いから始まる恋ではありません。

同じ時間、同じ場所、同じ選択が、たまたま重なった二人の話です。


もし、偶然が何度も続いたら。

それを「運命」と呼んでいいのか、ただの勘違いなのか。


その答えを、二人はまだ知りません。

(梨緒視点)


高校の教室は、思っていたよりもざわざわしていた。

新しい制服の袖を引きながら、私は自分の席を探す。


出席番号順。

窓側から三列目、前から四番目。


――あ、ここだ。


椅子を引いた瞬間、隣の席の男子と目が合った。

短く整えられた黒髪。少し眠そうな目。


「あ……よろしく」


先に声をかけてきたのは、彼の方だった。


「……よろしくお願いします」


それだけの会話。

それだけのはずだった。


正直、第一印象は「普通」。

特別でも、印象に残るわけでもない。


なのに、なぜかその「普通」が、少しだけ気になった。


(恒一視点)


隣の席の女子は、静かな人だった。


教室で騒いでいる人たちの中で、一人だけ、ちゃんと前を向いている。

ノートを丁寧に揃えて、ペンケースの位置まできっちり決めている。


几帳面、なのかもしれない。


「木下さん、だよね」


名簿を見ながら確認すると、彼女は少し驚いた顔で頷いた。


「相沢です」


それだけ。

会話は続かなかったけど、不思議と気まずくはなかった。


この時点では、まだ思っていなかった。

この席が、これからの日常の中心になるなんて。


(梨緒視点)


数日後、私は放課後の廊下で立ち止まっていた。


文芸部。

新設されたばかりで、部員募集の紙が少しだけ寂しそうに貼られている。


――入ろうかな。


そう思って、扉を開けた瞬間。


「……あ」


中にいたのは、隣の席の彼だった。


「木下さん?」


「相沢くん……?」


一瞬、時間が止まったみたいに感じた。


「偶然、だね」


彼はそう言って、少しだけ困ったように笑った。


偶然。

そう、偶然のはずだった。


同じクラス。

同じ席。

そして、同じ部活。


「よろしく、かな」


「……よろしく」


その言葉が、さっきより少しだけ近く聞こえた気がした。


(恒一視点)


正直、驚いた。


文芸部に来たのは、なんとなく。

家に早く帰る理由もなくて、目についたから。


まさか、隣の席の人が来るとは思わなかった。


「木下さんも、書くの?」


「……読む方が多いけど」


控えめな声。

でも、否定はしなかった。


この人は、たぶん、言葉を大切にする人だ。


その時、胸の奥で小さく何かが引っかかった。

理由は分からない。


ただ――

偶然にしては、重なりすぎている気がした。

第一話を読んでいただき、ありがとうございます。


同じクラス、隣の席、同じ部活。

「よくある」と言えば、それまでの偶然から物語は始まります。


この二人が、この関係にどんな名前をつけるのか。

それを、ゆっくり書いていく予定です。


今作は不定期で投稿しようと思います。できるだけ1日1話でいきます

よろしくお願いします


次回も、よろしくお願いします。

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