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私が貰った職業は最低ランクらしいのですが、スキル特攻でゴブリンを皆殺しにします  作者: 海の紅月くらげさん


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9/11

終了

◇◇◇◇



【敗北しました】


 私の視界の中央には、見たくもない文字が羅列され、息が荒くなり、膝が笑った。


 視界の端にあったスキルの欄があっさりと無くなっている。


【威圧無効化】と【着地ダメージ無効化】


 それと一番無くなって困る【持久力無限化】


 敗北したというのにチートスキルの反動がこない。


 Fランクのピーキースキルだ。死まで覚悟してたが、今のところ身体には異常がない。


 あるのは、両手で抱えているリゼリアちゃんの重みのみ。


「グワァォォォオオオ!!!」


 ゴブリンエンペラーの咆哮が洞窟を震わせる。


 地面が揺れ、岩片がぱらぱらと落ちる。


 ゴブリンエンペラーの【威圧】の影響でその場から動けない。


 息がしづらい。


「私はまだコイツが怖いのか。ッ! 覚悟して来たんだろ! 勇気を出せ! リゼリアちゃんを守るんだろ!!!」


 足に力を込めると、ガタガタと動く。


「動くなら! 乗り越えられる!!!」


 全身に力を込める。ガタガタと痙攣してる足を。


「くッ! ぉぉぉおおお!!!」


 前に出す。


「はぁはぁ、これを何回もやれば走れ……」


 ピンッ! と、視界に明るい文字が。


「……やった」


【『威圧無効化』を獲得しました】


「行くよ!」


 私は息を切らしたままに、来た道を脱兎のごとく駆け出す。


「早く出口案内して! ゴブリンの少ないルートでね!」


 視界に映るカーソルが出口を指し示す。


【洞窟出口まで1.5km】


「遠! もうスキルに【持久力無限化】はないんだし、これまで以上に本気で走らないと」


 そこで気づく、ゴブリンエンペラーの追ってくる圧迫感がない。


「へいへい、バテたんですか?」


 煽りも入れて後ろを見ると、ゴブリンエンペラーは必死な形相で私を追いかけている。ピクピクと血管が浮き出て、本気で追いかけているのは分かった。


 だが遅い。私も可能な限りの速さで走っているが、【持久力無限化】があった時の私の方が速かった。ゴブリンエンペラーはそんな私に切迫するような速さだったはずだ。なのに今は子供とかけっこしているような感覚を覚える。


 明らかにゴブリンエンペラーの地面を蹴る推進力と蹴る結果があっていない。


「あっちだけ水中にいるみたい」


 ドンッ! ドンッ! と、ゴブリンエンペラーが地面から足を離すたびに地面が抉れ、地面の欠片が散弾銃のごとく後ろの道に発射されていく。


「何が起こってるの?」


 ぐわっと両の手で、私を掴もうと必死だ。


 だが、ゴブリンエンペラーとの距離は空いていく。


「まっ、ラッキーとしか言いようがない!」


 私は楽観的に捉えて、ゴブリンエンペラーを置いていく。


 そして、さっきから不思議なことはもう一つ。ゴブリンたちの位置が手に取るようにわかる。


 走りながら、視界の端に動く影。


 意識しなくても分かる。


 どの通路に、何体いるか。


 曲がり角の先に、三体。


 広間の奥に、十以上。


 地中に、地上に。


 ゴブリンの位置を辿れば、ルート案内なんか無くても出口に行けそうだ。


「……今は便利だけど、四六時中ゴブリンを感じるとか嫌なんだけど」


 洞窟全体の配置が、頭の中に浮かぶ。だいたいの洞窟規模も分かる。凄く大きいと言うしかない。


 最初にゴブリンエンペラーを見た大きな縦穴が、四つもある。ゴブリンたちの数は数千規模の集団だと思う。



 ゴブリンエンペラーが壊した縦穴には行かず、カーソルは二個目の縦穴の出口を目指しているみたいだ。


 カーソルに従って、横道、回り道、階段などをループした。


 もうゴブリンエンペラーは後ろにいない。それに道を塞いでいた小さなゴブリンも、ゴブリンエンペラー以上に遅かった。


「不思議。まさかリゼリアちゃんが何かしてる?」


 リゼリアちゃんに視線を落とすと、私をまじまじと見つめていたリゼリアちゃんは、小さく首を横に振った。


「もうすぐ出口だよ。やっと安心できる。その時にリゼリアちゃんのこと教えてね」


【洞窟出口まで50m】


 洞窟よりも明るい出口の光。



 六秒で走り抜けた。



「出口だ」


 洞窟を抜けた瞬間、世界がひらけた。


 天井のない空。


 雲が、あまりにも高い。


 湿った岩の匂いが消え、代わりに乾いた風が頬を撫でる。


 肺が、軽い。


 今まで吸っていた空気は、泥だったのかと思うほどに。


 振り返れば、黒い穴のような洞窟の入口。


 そこから距離を置くように、森が円を描いている。濃い緑の壁が、外界とこの穴を隔てていた。


 光が眩しい。


 足元に落ちる影が、はっきりしている。


「助かっ……」



【『鬼ごっこ』が終了しました】



 空に走る白い文字。


 まるで、青空にひびが入ったみたいに。


 心臓が、止まった。


 理解より先に、背筋を冷たいものが走る。


「……何か来る」


 そう口走った瞬間。


 ドゴンッ!


 目の前の地面が、内側から殴り上げられた。


 土が波打ち、芝が裏返り、石が宙を舞う。


 爆ぜた土煙の中心から、巨大な腕。


 筋肉が裂けそうなほど膨張し、血管が紫色に脈打っている。


 爪が地面に食い込み、ガシン、と大地を掴む。


 そのまま、さらに力を込めた。


 ドゴンッ!


 地面が、悲鳴を上げた。


 亀裂が蜘蛛の巣のように広がる。


 割れた土の奥、闇の底から、ゆっくりと持ち上がる影。


 最初に見えたのは、目だった。


 赤く、怒りで濁った、血走った双眼。


 次いで、歯。


 むき出しの牙の隙間から、荒い呼吸が漏れる。


 最後に、足。


 土を振り落としながら現れたそれは、


 洞窟の王。


 ゴブリンエンペラー。



 空気が、重くなる。


 森の葉が、ざわりと震えた。


 逃げ場のない、地上。


 遊びは終わった。









楽しかった! 続きが気になる! という方は☆☆☆☆☆やブクマをしていただけると嬉しいです!

作者のモチベーションの一つになりますのでよろしくお願いします!


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