表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私が貰った職業は最低ランクらしいのですが、スキル特攻でゴブリンを皆殺しにします  作者: 海の紅月 くらげさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/6

洞窟 《side:???》

◇◇◇◇


 暗い。


 ここは目を開けても閉じても、闇の深さは変わらない。

 鎖で頭の上に引き上げられた両手。少し動くだけで、手首に付けられた手錠同士がカチカチと擦れる。


 指先は痺れて、足はガクガクと震える。両肩には鈍い痛みがズンと来て、段々と時間が経つごとに痛みが増していっている気がした。



「……ギルッ! ギティ!」


 私が真っ暗の闇の空間に慣れてきた頃に、遠くの方から甲高い声が聞こえてきた。


 ぼぅっと揺らめく灯りが近づいてくると、洞窟の壁に濃い影がゆっくりと伸びていく。

 灯りが強くなるほどに、ここが逃げ場のない檻だということを分からされた。頑丈そうに錆びた鉄格子と、横を見れば積み上げられた骸骨の山。たったこれだけの情報で、ここからは誰も逃げられなかっただろうことは理解できた。


 力無く下を向くと、足元には、乾き切っていない血と尿がまだ生温く残っている。



 ガチャガチャと檻を開ける音がして、ギィっと扉が開く。


「……うぇ」


 誰かの足先が見えてきて、途端に鉄と獣の臭いが一層濃くなる。気を張っていないと、吐いてしまいそうだ。


「グベラッ!」


 甲高い声に顔を上げると、私の目の前に二匹のゴブリンがいた。

 

「……私が悪いの?」


 搾り出した声は、自分のものとは思えないほど小さかった。言葉と同時に、もう枯れていたと思っていた涙が溢れる。


 ゴブリンの一体が斧を振り上げて、ガキィン! と鎖を砕いた。


「キャッ!」


 驚きの声が出て、その衝撃とともに体が地面に落ちる。


 仰け反って尻もちを着く形になり、上から見下すゴブリンと目が合った。


 逃げられない。助からない。これからされることは想像もしたくない。


 ギリリと奥歯を噛んで、口を結ぶ。


「ゲヒ、ヒヒ」


 下劣な笑みを携えたゴブリンの手が私の腕に触れる。手はゴツゴツとしていて、ヌメっと粘り気があった。


 気色の悪い感触に全身の鳥肌が立つ。


 ゴブリンに捕まった女の行く末は悲惨な物だ。誰も私を助けに来ないことは知っている。


 もう私の未来は、灯りのない洞窟のように真っ暗だ。人生を諦めているからだろうか。ゴブリンに対しての恐怖は何もなかった。


 ただゴブリンを楽しませないように、無感情で無抵抗を貫く。それが私にできる最後の抵抗だ。


 でも、私が生きるのを辞めない。


 だって、あともう少し、あともう少しで。


 繰り返す、『あともう少し』という言葉。それを頭の中で永遠に反復する。


「私の手で必ず殺してやる」


 そう。


「もう弱い私なんかいらない。もう幸せなんかいらない。もう……憧れなんていらない」


 願うは、



「ゴブリンを殺す力を」




 その時……。

 

「アグァオォォォォオオオオオッッッ!!!」


 耳の奥を引き裂くような咆哮が、唐突に洞窟全体を震わせた。


 石壁が音を反射し、低い地鳴りが体中を駆け抜ける。

 鼓膜が破れたのかと思うほど痛い。頭の内側まで揺さぶられ、視界が一瞬白く跳んだ。


 ゴブリンたちの下劣な笑みは一瞬で引き、驚きの表情をしたと思えば、瞬間に恐怖の表情に切り替わった。

 そこからゴブリンは、先ほどまであった呑気さは一切なく、バタバタと激しい足音を残し、ゴブリンらは何かから逃げるようにすぐさま居なくなった。


 ゴブリンに置いていかれた私は、ここに一人。しかも繋ぎ止めていた鎖はない。そして開いている鉄格子の檻。ゴブリンが落としていった松明もある。


 なぜか、ずっと望んでいた自由がポンと手に入った。



「なんで今なの。……ねぇ神様」


 そんな自由に、天井を見上げ、強く保っていた意思がそげ落ちる。


 ガチガチと歯が鳴り、唇が震える。


「もう少し、もう少し早く助けてくれてたら、お父さんも、お母さんも、死なずにすんだのに」


 ふつふつと、やるせない怒りが胸の中で大きくなる。


 目頭が熱くなり、抑えていた感情が熱い涙として溢れてくる。


「もう私には何も無い……何も無いよ……」


 ボロボロと、ボロボロと、大粒の涙が止めどなく地面に落ち続けた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ