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慰霊師  作者: 皇南輝
第2章 交差点で佇む美女の霊
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2- 27 美伽の体調不良と背後霊の笑顔

 突然、ベンチから腰を上げた美伽がふらついた。結羽は慌てて彼女の身体を支えた。


「美伽さん、大丈夫ですか?」


「急にめまいが······」


「いったん座りましょう」


 結羽は美伽の身体を支えながら一緒にベンチに腰を下ろした。そのとき、結羽は美伽の背後霊である礼子を一瞥した。礼子は意味ありげな笑みを浮かべていた。


 美伽はベンチに座りながらうつむいた。頭痛がするのか、指先をこめかみに当てている。


 突然、気分が悪そうにうつむいてしまった美伽。結羽は心配になり困惑した表情を浮かべた。


 心労がたたったのかな······?


 美伽は短期間のうちに愛する婚約者や姉と死別している。心労がたたったとしても無理はない。


「心配しなくて大丈夫よ」


 美伽の背後で立っている礼子が結羽に声をかけた。結羽は礼子に顔を向けると、僅かに首を傾げてみせた。


「じきに分かるわ」


 礼子は笑みを浮かべたまま告げると、美伽の様子を見守った。


 礼子さんは何が言いたいんだろう?


 結羽はそう思い、美伽の身体を案じながら背中を優しくさすった。美伽の正面に立っている阿手川清美も、妹の様子を心配そうに見守っている。


「美伽、大丈夫?」


 阿手川清美が美伽に声をかけたが、霊感が無い美伽には聞こえるはずがない。


 そのときだった。


 美伽が突然、驚いたように顔を上げた。その動きがあまりにも勢いがあったため、隣にいた結羽が驚いたほどだった。


「美伽さん、どうしたんですか?」


 結羽が尋ねると、美伽は結羽に顔を向けた。何かに驚いているのか、目が見開いている。


「今、お姉ちゃんの声が聞こえたの!」


 美伽が興奮したように結羽を見つめながら答えた。結羽は美伽の正面にいる阿手川清美を一瞥した。


「清美さんからの声って、何て聞こえたんですか?」


「美伽、大丈夫?って聞こえた······」


 結羽はその返答を耳にすると、美伽の背後に立つ礼子に顔を向けた。礼子は笑顔で頷いた。


「美伽さん、それ、さっき清美さんが発した言葉なんです!」


「そうなの?」


「ちょうど今、清美さんが美伽さんの正面にいますよ! 見えませんか?」


 結羽の興奮した言葉を受けた美伽は、正面を食い入るように見つめた。


「なんだか白いモヤが見えるけど······あっ!」


 美伽は驚きの叫び声をあげた。結羽は笑みを浮かべながら阿手川清美と美伽を交互に見やった。


「お姉ちゃん!」


 突然、美伽が叫びながらベンチから腰を上げた。


「美伽、私の姿が見えるの?」


 阿手川清美は、信じられないといった表情で美伽を見つめた。


「うん、見える! 声も聞こえるよ!」


 美伽の声は喜びに弾んでいた。そんな様子を目にした結羽は、礼子に向かって笑顔で頷いた。

 美伽の弾んだ声に引かれて、優美を抱っこしている翔が近づいてきた。


「あ! 翔さんの姿も見える! その小さな女の子は······」


「そうよ。私の子として産まれてくる予定だった優美ちゃんよ」


 美伽の言葉に続いて清美が笑顔で答えた。


「そっか、そうなんだ。優美ちゃんなんだ。可愛い、可愛い······」


 美伽は声を震わせながらそう言うと、大粒の涙を流しながら泣き崩れてしまった。


「美伽、俺もここにいるよ」


 泣き崩れている美伽に、今度は別の霊が声をかけた。




(つづく)

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