2- 26 一時的に霊が見られる方法
「あの霊能者は、こうしていたわ」
美伽の背後霊である礼子は、右手を結羽の額にそっと当てた。結羽は目を閉じた。しかし、何も起こらない。目を開いた結羽は首を傾げた。
「私は真似をしてるだけだから、何も起きないわよ」
「そうですよね。でも、何か感じるかな、と思って」
結羽は照れ笑いした。
「そう、思い出したわ! あのとき、霊能者に霊感付与のやり方を尋ねてみたの」
「それ、教えてください!」
「相手の額に手を当てながらイメージと念を送る、と言っていたわ」
「イメージと念······」
結羽は呟きながら、なにげなく公園を見渡した。そのとき、結羽の脳裏に閃くものがあった。
スズメの霊を天国に送るときと同じ要領かも!
結羽は公園を訪れる度に、さまよっている鳥や猫など小動物の霊を見つけては捕まえ、天国に送っていた。そのときに大切なのは、イメージしながら念じることだった。
結羽は、自信ありげに頷いた。
「分かったわ、礼子さん。私にも、できそうな気がする」
結羽は自信に満ちた笑顔を礼子に向けた。
「結羽さんは飲み込みが早いのね。まるで······」
礼子は何かに気づいて言葉を切った。
「礼子さん、どうかしたんですか?」
突然、礼子の表情や全身が硬直したので、結羽は不思議に思って尋ねた。
礼子は、まるで何かを否定するかのように首を振った。
「何でもないわ。そうね、霊感が強い結羽さんならできると思うわ」
礼子は、そう答えながら結羽の顔をじっと見つめるのだった。
行きあたりばったりだけど、試しにやってみよう!
結羽は、さっそく美伽に試してみることに決めた。
もし成功すれば、美伽は一時的に霊を見ることができる。失敗したら、練習してからまたチャレンジすればいい。
結羽はベンチを回り込むと、美伽の隣に座った。
「美伽さん、試してもいいですか?」
「うん、ぜひお願い!」
結羽と礼子の会話を注意深く聞いていた美伽は快諾した。
結羽は笑顔で頷くと、右手で美伽の額に触れた。
イメージしながら念じる······。
結羽は目を閉じると、美伽が霊を見ながら会話している場面を想像した。次に心の中で「美伽さんは霊が見える!」と強く念じると同時に、自分の指先から美伽の額に波動が伝わっていく場面を想像した。
その状態を30秒ほど維持した。
「ふう。美伽さん、どう?」
結羽は自分を集中状態から解放しながらため息をついた。
美伽はベンチ周辺を見渡したあと、結羽に顔を向けた。
「私の周りには安堂さんしかいないわ」
「やっぱり、練習しないといけないみたいですね」
結羽は、失望の影が浮かんだ美伽の表情を見ながら申し訳なさそうに頭を下げた。
「私、なんだか疲れちゃった」
突然、美伽はため息をついた。そんな美伽の横顔を一瞥した結羽は、ベンチの正面に立っている阿手川清美に顔を向けた。
「今日のところは、いったん解散しましょうか?」
結羽が阿手川清美に伝えると、隣に座っていた美伽が立ち上がった。阿手川清美は残念そうな笑みを浮かべながら頷いた。
そのときだった。
美伽が「あっ」という声を発しながら全身をふらつかせた。結羽は慌てて美伽の身体を支えた。
(つづく)




