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デス・ゲーム・デス

「デスゲームもの? 書けらぁ!!(震え声)」

ということで書きました。書けてない。

【登場人物】

A……三十代くらいに見える男性。体格がよく、強面で粗野な印象。

B……二十代前半と思われる女性。お洒落が好きそうで明るい雰囲気。

C……身嗜みに気を遣っていないが、素材のいい少女という風情。ひきこもりっぽい。

D……大学生男子。歳の割に落ち着いていて物腰が柔らかい。

仮面の人物……謎の人物。恐らく男性。このゲームの主催者を名乗っている。



―――謎の広い空間。色々なものが雑多に積み上げられている。そこに転がる四人の人物。何故か皆パジャマや部屋着姿である。


A「う……」

B「zzz……」

C「むにゃ……」

D「すぅー……すぅー……」


―――やがてそれぞれ目を覚まし、驚きながらも現状を確認し始める。そこは広い部屋のようであった。あちこちに乱雑に物が置かれている。

―――突然、部屋に設置されているモニターから映像が流れ始める。四人が一斉に目を向けると、奇妙な仮面を被った人物が映し出された。


仮面『お目覚めかね? さて、突然で申し訳ないが、君たちには殺し合いをしてもらう』

A「……は?」

B「え、なにこれ、テレビ!? やっば!」

C「おうち帰りたい……」

D「あの、今何時ですか?」

仮面『話を聞いてもらおうか』

D「先に何日の何時か教えてもらっていいです?」

B「え? あ、そっか! まだ夜中かも?」

C「それはない……私寝たの三時過ぎだもん……今結構調子いいからぐっすり寝てるはず……」

D「夜更かしさんですね」

A「!! 寝たのが昨日だとしたら……待ってるやつがいるし、夜観たい番組あんだよ! さっさとここから出せ!」

仮面『残念だが、その部屋から出られるのはただひとり……殺し合いで生き延びた者だけだ』

B「あ、これってあれ? リアル脱出ゲーム? 私初めてなんだけど!」

C「リアルじゃないのなら……したことある……」

D「参ったなぁ、僕も観たい番組あるのに」

仮面『……』

A「……なあ、アンタたちもちょっと話を聞いてやろうぜ? 少しでも状況知ってるの、アイツしかいなさそうだし。なんかちょっとアイツ可哀想だし」

D「やさしいですねぇ。ところで観たいのって……」

A「……わんにゃんもふもふ特盛スペシャル」

D「僕もです!」

C「……事後配信じゃダメなの?」

仮面『……兎に角。ルールを説明する。とはいっても単純だ。殺し合い、生き延びた一名だけを部屋から出してやろう。この部屋にはいくつか武器が隠されている。それを使ってくれたまえ』

B「たまえって言われても」

D「あ、そういえば『たまえ』って、本来は尊敬語らしいですよ」

C「神様に『しずまりたまえ』とか言うもんね……」

B「ていうか、そういう設定のゲームにしては人少なくない? 四人って」

A「……予算?」

D「拉致してくるのも大変でしょうしねぇ」

C「ショボい組織なんだ……」

仮面『……無駄口を叩いている暇はあるのかね? 君達の首に付けられている装置。液晶の表示を見たまえ。……それは今から二十三時間五十六分後に爆発する。勿論、生き延びた一名だけは解除してやろう』

D「あのぅ、どうやってもリアリティが出ないので、そろそろ本当のことを話してもらえませんか? これ誰かが仕掛けたドッキリでしょう?」

仮面『そう信じたまま、みんな仲良く爆死するのも一興だろう』

B「……あのさぁ。そういうウソかホントかわからないような設定で殺し合いとかさ、ありえないから」

A「……アンタがマトモな反応をし始めると、マジでヤバイ状況な気がして少し怖いんだけど」

D「僕もそう思いました」

B「うわ失礼!! っていうかね、やっぱりちょっと、不安になってきたっていうか……」

C「わかる……少なくとも、部屋で寝てたのにこんなトコにいる自体、おかしいもん……」

D「ですよねぇ」

B「寝るとき全裸派じゃなくて、本当によかった!」

C「そだね」

A「……オレは早く帰らなきゃいけねえのに……」

D「なんだかそういう台詞って、真っ先にデスゲームで人を殺す人が言いそうですよね」

A「おい!! ……でもマジで早く帰らなきゃ……」

D「わんにゃん?」

A「それ以上に、リアルにゃんがいるんだよ……」

D「急ぎましょう」

B「あ、私はマリモ飼ってる!」

C「ペット、いいなぁ……」

仮面『……』

D「とりあえず茶番を終わらせるためにも情報を手に入れましょう。あの、えーと……仮面さん?」

仮面『私のことかね』

D「はい。デスゲームをさせる動機は何ですか? 観客がいるんですか?」

仮面『その質問には答えない』

A「じゃあ別の。この首輪。本当に爆発するっていう証拠は?」

C「あ、ダメだよ! そういうこと言うと、じゃあ……ってだれかの爆発させられちゃうパターンあるじゃん……」

B「怖っ!! でもまあ、フツーそういうことするよね? このテのアレって」

D「この状況自体、普通ではないですけどね。でもそうするのが一番手っ取り早いとは僕も思います。……が。如何せん人が少ない。証明のためにひとり減らしたら、あまりにも味気ないでしょう」

仮面『……』

A「……予算?」

仮面『その質問には答えない』

B「あんまりいぢめちゃ可哀想でしょ」

C「結局爆弾のこと答えてないじゃん……」

仮面『では別の切り口からヒントをやろう。この部屋に隠してある武器の数々は、本物だ。かなり高性能のものもある。探してみたまえ』

B「あ、この箱とか?」

C「え。なにそれ」

B「さっき目が覚めたときに目の前にあったのよね。二度寝用の枕にしてたんだけど」

A「二度寝してたのかよ……」

C「中、なに……?」

B「開けてみるね」

ABCD「!!」

D「拳銃……ですね。本物、ですか……?」

A「試しに……そうだな、それが入ってた箱、撃ってみてくれよ」

B「はーい。……普通に引き金引けばいいのかしら。えっと、こう?」

ABCD「!!!!」

B「手、いたーい!」

D「なるほど、人に当たったら場所によっては普通に死にますね」

A「音があんまりしないんだな……怖ぇ」

C「た、弾は何発あるの?」

B「え、わかんない……あ、もう出ない」

A「簡単に引き鉄引くなよ!? 怖ぇわ!!」

D「まあ、三発あったら最悪速攻終わりますもんね」

B「あんた冷静で怖いわ」

D「半狂乱になったほうが怖いでしょう? でもとりあえずこれで、本当に殺し合いが起きてもいいようになっているのは分かりました。あと観客はいます」

C「……一発しか入ってない弾と、首輪の爆弾を使わないこと、殺し合いを促してる……そういうトコ?」

B「え、え、それでなんで?」

A「……そうか! すぐ終わらせないってことは、見世物ってことを意識してるのか」

D「まあ、仮面さんが主催かつ観客ってことも有り得ますけどね」

A「でもそれが分かったって……」

B「仲良く過ごせばいいんじゃない? 観てる人飽きるかも」

C「途中で飽きたらポチっとされちゃうかも……」

D「僕もテレビを観てるときに飽きたら消しますね」

B「そっか、じゃあイイ感じに引っ張って『次回へ続く!』みたいにすればいいのね」

A「タイムオーバーあるだろ」

B「やだぁ」

A「オレだってヤだよ」

D「まあ、観客がいるってことは、賭けの対象になっている可能性もあります。その場合、いきなり理不尽に全員殺されることはないと思います」

C「でもやっぱり、そんなの考えたって……」

D「それに、このデスゲームが茶番の場合、誰かが死ぬような目に遭えばストップが掛かるはずです。それを試す勇気はないですけど」

A「まあな」

D「そしてこのゲームが本当にデスゲームの場合……どう転んだって、みんな死ぬと思います」

B「はぁ!?」

C「……だよね。この部屋から出す、としか言われてない。その後どうなるかなんて、言われてないもん……」

D「武器に制約があるのも、盛り上げるため以外にそういった意味があるのかもしれません。武器を持ったまま出て、主催者側が殺されたりしたら一大事ですからね」

A「……こんなコトを知ったオレたちを、生かしておくはず無ぇもんな」

B「ちょ、ちょっと待ってよ! これウソの、アレでしょ!?」

D「可能性の話です」

C「……心理学とかの実験だったり……協力者に銃を撃たせて、それっぽさを出す、とか」

B「私、協力者とか違うから!! あ、でも何言ってもウソっぽく聞こえるわね!?」

A「疑い出せばみんな怪しいから気にすんな。オレが撃てって言ったしなぁ」

D「とりあえず二十四時間近く時間がありますから、簡単な自己紹介でもしませんか?」

C「……個人情報」

D「名前とか具体的なものはいいですよ。なんとなくの職業とか……趣味とか?」

B「あ、私旅行が好き! あとね、デパ地下でケーキの販売員やってるの。銀座の。よかったら買いに来てね」

A「銀座!?」

B「え、なに!? 銀座、何かダメ!?」

A「……オレは奈良に住んでる」

B「……そんな遠くから連れてこられたの?」

A「ここが東京とは限らねぇじゃねえか! これだから東京モンはすぐ自分中心に……」

B「ご、ごめん……あ、あ、でも、地元はすごい田舎よ? ね?」

A「別にフォローはいらねぇよ」

D「僕は京都です。あ、大学生です」

C「…………香川」

A「そんな遠くから!?」

C「これだから本州モンは……」

A「すまん」

D「参りましたね。予算はなくても、あちこちから人を連れてくるだけの組織力はあるみたいですね」

B「……やだ。なんか怖い」

C「うん……」

D「えーと……ではこの中で、殺しを生業にしてる方、いらっしゃいますか?」

A「何言ってんだ!?」

D「いえ、もしここで死ぬなら、プロにお任せした方が楽に死ねそうだなぁと」

B「やだ頭いい……」

A「マジ何言ってんだ!? 生きろ!?」

C「おじさん、いいひとだよね……」

A「おじさんじゃねぇよ!? まだ二十四だ!!」

D「え……」

B「え……」

C「え、年下?」

ABD「え!?!?!?」

C「え?」

D「ええと……まあ、それはそれとして。僕は二十歳はたちなので、皆成人済みではあるんですねぇ」

B「私が未成年ってセンはないのね……」

ACD「……」

B「冗談だから!! 黙らないでよ!!」

A「と、とりあえず、どうする? 一応部屋中の武器、集めてみるか?」

C「それって怖くない……?」

D「隠し持たれるほうが怖い気もしますね……皆で一つずつ確認しながら集めるのはどうでしょう? それで、僕らの真ん中に置いておくんです。最悪、誰か武器を手にしても他の皆もすぐ手にできます」

B「ワゴンセールみたいね」

A「売りもんが物騒すぎるだろ」

C「掘り出し物はシャベルとか……」

D「んんっふ……!!」

A「あ、ツボった」

B「でもシャベルってちっちゃくない? 武器にしては」

C「え? おっきくない?」

A「デカいだろ」

D「んんっ……聞いた事があります。地域によってシャベルとスコップの呼び方が逆なんですよね」

B「え、そうなの!? 勉強になるわ~」

D「ちなみに僕のトコもシャベルは大きいです」

仮面『……』

C「……なんか仮面の人イライラしてない?」

B「おこりんぼさんねぇ」

A「せっかちなんだな」

D「心に余裕のない人ですね」

B「とりあえず探しましょうか! 宝探しみた~い!」

C「死の秘宝とかそっちだけどね……」


ーーー数十分後。四人が集めた大量の武器が綺麗に並べられていた。


A「結構集まったな……」

B「ひい、ふう、み……いっぱい!」

C「ホントにワゴンセールみたいじゃん……」

D「こうしてみると、日用品だけど武器として考えると怖いものって、結構あるんですねぇ……」

A「やめろよ! オレまで想像しちまって怖ぇだろ!」

C「ところでさ、あと……二十三時間くらいあるじゃん? ヒマじゃない?」

D「そうですね。少なくとも僕は殺し合いをするつもりもないですから、ただヒマですよねぇ」

B「トランプとかあればいいのに。あ、そしたらみんなパジャマだし、なんか修学旅行っぽくていいわね!」

A「トランプは流石に武器じゃねぇからな」

C「二次元ではちょっとお約束武器だよね」

D「ですよね。現実味のない武器だなぁって思ってました」

C「でも雰囲気はカッコイイよね。キャラ付けできるし」

B「昔の人は風車かざぐるまとかでも戦ってたんでしょ? じゃあイケるわよ」

A「フィクションだろ、それ」

D「風車で……? なんです? それ」

ABC「!!」

A「四つしか違わねぇのに……ジェネレーションギャップ……!」

仮面『……』

B「じゃあ私が説明しとくから、あなたは仮面の人の相手してあげてて!」

C「え、別にシカトでもよくない?」

B「それもそっか」

A「ーーーで、水戸の……その一味の中に……」

D「ははぁ、なるほど」

B「説明終わってた!」

C「うん」

D「しかしヒマですよねぇ……こういうときって皆どうやって時間を潰しているんでしょう」

A「その皆って多分全員死んでるからな。訊きようがないな」

B「検索ならスマホがあれば大丈夫なんだけどねぇ」

C「デスゲーム 待機時間 過ごし方」

D「んんっ……!」

B「あんたの笑いのツボがなんとなく分かってきたわ」

C「ていうかさ、スマホがあれば検索やヒマつぶし以前に、助けを呼べるかもしれないよね……」

A「普通のヒマつぶしを考えようぜ。何も道具がなくても出来るヤツ。……高鬼?」

C「小学生男子か」

B「空中あり?」

D「ローカルルール多いですよねぇこどもの遊びって」

仮面『……ごほんっ』

A「! 存在を忘れてた……」

B「……ね、ねぇ、あんまりぐだぐだしてるとやっぱり首ボーンッ! ってならない?」

C「……わー やってやるぞー いつかはー」

A「すげぇ棒読み」

D「やるったらやるぞー おそらくー」

B「やっちゃうぞー もしかしたらー」

A「お前らっ……! く、くくっ……!」

C「こんだけやる気みせれば大丈夫でしょ」

B「ばっちりね!」

D「抜かりないでしょう」

A「……お前ら、もしかしてマジでやってた……?」

B「それにしても、高鬼するには狭いしごちゃごちゃ物があって危ないよねぇ。なにしよ?」

C「いっぱい時間あるし……また少しは睡眠も取らなきゃね」

D「眠くなったら交代で眠りましょうか」

A「そうだ、仮眠場所作っておこうぜ。トイレは……」

B「トイレはだいぶ離れたとこにしましょう!」

D「箱はいくつかあるし、使えそうな布もありますね。ナイフもあったから適当な大きさに切って、それぞれ専用のものを使いましょう」

C「手を洗う水とかないよね……手を汚したくないなぁ」

D「あ、さっき集めた武器の中に毒薬らしいセットがありますけど、ゴム手袋が一双付いてたんで、片手ずつ女性陣でどうぞ」

C「ありがとう」

B「手袋の単位って、双なんだ! 初めて知った!」

D「日本語の単位を現す言葉って、とても多いしややこしいですよね……」

C「わかる。困る……」

A「あれ毒薬か。なんかいいニオイのやつがあったな。消臭剤に使えそうじゃないか?」

D「嗅いだんですか? 危険なことしますね……」

A「……オレ、うっかり死ぬとこだったか?」

B「気を付けなきゃダメでしょ! めっ!」

A「アンタに言われるのはなんか解せねぇ」

C「あ、ロープある……これで布を吊るして、パーティションにしよう……」

B「みんなでDIYね! 楽しい!」

D「ネイルハンマーもあるし、こっちは……うん、釘の代わりになりそうです」

A「お。椅子でも作るか?」

B「私やるー! そこの鉈取ってー」

C「はいどうぞ……」

B「この……矢? 弓? どっちだろ。まあこれを削ってぇ、これと……あ、ロープも使おっ」

A「アンタ……なんか手慣れてんなぁ」

B「ふふー! 地元が田舎って言ったでしょ? 山の中とか鉈で藪を切り開いて歩くし、お祭りの大道具を作ったりも村総出でやるからね~」

A「想像以上だった」

D「頼もしいですね。あとそれは弓です。飛んでいく方が矢です」

仮面『……』

C「……心なしか仮面の人泣きそうじゃない?」

A「用意したものが活用されて嬉しいんだろ」

D「そういえばデスゲームでしたね。本当に賭けをやっているとしたら、今、彼女のオッズは下がりに下がってるかもしれません」

B「あ、オッズって上がるの下がるのどっちが強いの?」

A「そういえばオレもあやふやだ。普段の生活で口にしたことねぇもんな……競馬とかもやらねぇし」

C「……下がった方が強い」

B「あ! じゃあ、私褒められちゃった!?」

D「そういうことになります」

B「やったー!」


―――それから数時間。物騒な空間は割と快適な空間へと生まれ変わった。


B「完成~!」

ACD「お~~~!!」

ーーー拍手。

A「すげぇな。この椅子、オレが座ってもビクともしない。ガタつきもしない」

B「うふふー!」

C「仮眠室とトイレもいい感じだね……一日なら余裕で過ごせそう」

D「なんだか楽しいですね。あとは食事があればなぁ」

A「腹、減ったな……」

B「売れ残りのケーキ、冷蔵庫にあったんだけどなぁ……あ! そうだ、私だけじゃない? 仕事も趣味も答えたのって」

C「……ゲーム、好きだよ。仕事は……まあ、それ関係……」

ABD「(働いてたんだ……)」

D「僕も結構ゲームは好きですね。あと小説と映画……そうそう、僕も旅行好きですよ。結構あちこち行きます」

A「オレは動画とか……うちの猫の世話とかかな。仕事もまあ、それに関係したあれこれっていうか」

B「え、動物病院とかトリマーさんとか?」

A「そんな大層なもんじゃねぇよ……一応猫関連の資格は取ったけどな。拾った猫の成長記録がてらに動画を配信してたら、なんかそれで喰える状態になってたっていうか」

D「え!?……そういえば……あ、でも……あぁ!!」

B「な、なによぅ。あんたが取り乱すと不安になるじゃない……」

D「す、すみません、でも……あの、もしかしてあなた、『タケヤブ成長記録』の、ヤブヌシさん、ですか……!?」

A「!? そ、そうだけど……!?」

BC「え!?」

仮面『え!?!?!?』

ABCD「え?」

D「とにかく、僕、ずっと観てたんですよ! あなたが近所の竹藪でタケヤブちゃんを保護した当時から……!!」

B「わ、私も知ってる!! 時々おすすめで出てくるから、結構観てたの!! あのハチワレの超かわいいコでしょ!?」

C「私チャンネル登録してる……!! ヤブヌシさんの優しさがたまらんの……!! あ、登録百万人突破おめでとうございます」

A「お、おぅ、皆ありがとな……でも何で分かった? 顔出してないのに」

D「右手の人差し指の第二関節に、鉛筆で刺した跡のようなものがありますよね? あと、爪の雰囲気です。それに時々うっかり入っている驚いたときの声とか、思い出してみれば一致します」

C「言われてみれば、お世話するときに出てくるあの大きな手、確かにこれだ……うわ、実物……!」

B「最近別のコも保護してたよね!? あのコ元気になった!? あの、ほら……」

仮面『……アキチちゃん』

B「そう! アキチちゃん!」

A「ちょっと目ヤニが気になってたから、明後日……いや、もう明日か? 病院に予約入れてたんだけどな……」

D「そんな……!」

C「どうにかならないのかなぁ……!? ねえ仮面の人!!」

仮面『……』

ーーー仮面の人物はなにかを手元で操作しているようだ。

C「……今度、ウチと一緒にコラボする予定だったのに……」

B「え!?」

D「もしかして、あなたも配信者ですか?」

C「違うけど……ほら、スマホゲーで、知らない? 『ファイナルブルードラゴンゴッドクエスト』。略してファブルとかファブゴンとか呼ばれてるやつ」

A「あ!? 確かにそことコラボの話を進めてたけど……まだ情報は発表してないぞ!? じゃあアンタマジでそこの……」

C「開発者兼チーフプロデューサーだよ」

BD「え!?」

仮面『え!?!?!?』

ABCD「え?」

B「と、とにかく、私やってる! 友達に誘われて始めたんだけど、面白くって……なんだっけ? ほら、プレイヤーの呼び方」

仮面『……探求者』

B「そう! 探求者! 私探求者!」

C「ありがと……コラボ、やりたかったなぁ。結構凝ったヤブヌシちゃんスキンとか用意してたんだけどねぇ……」

仮面『……』

ーーー仮面の人物はなにかを手元で操作しているようだ。

D「僕も探求者です。プレイヤーランクは189」

A「オレもやってるけど……189は異常じゃねぇか???」

D「印税かなり突っ込んでます」

A「印税?」

C「え、大学生じゃなかった……?」

D「あ。僕、大学生ですけど、作家でもあるんです。高校生でデビューして……ちょっと恥ずかしいですけど、『隠居忍者とクリームブリュレ』シリーズとか書いてます」

ABC「え!?」

仮面『え!?!?!?』

ABCD「え?」

C「と、とにかく、私あのシリーズ大好きだよ!! 話も謎解きも面白いし、オンミツさんと喫茶店のマスターとの掛け合いも最高で……」

B「映画観た!! 主人公がイケオジで渋くてかっこいいのにかわいくていいわよね~~~!!」

A「ベストセラー作家じゃねぇか! オレ、特に短編集二冊目の『猫と餡蜜』何度も読んでて……ああ、でも一冊目もいいよな、ほら」

仮面『……考察し爆裂する珈琲の粉』

A「そう! 『考察し爆裂する珈琲の粉』!」

D「ありがとうございます。隠密シリーズの新作を執筆中で、もうすぐ原稿が完成する予定だったんですけどね……」

仮面『……』

ーーー仮面の人物はなにかを手元で操作しているようだ。

B「え~! それにしてもみんなすごい人達だったのねぇ!」

D「……おこがましいですが、ある程度有名な僕らが集められたのには、なにか意図があったのでしょうか」

A「……どうだろうな。アンチの権力者でもいたのかもな」

C「うん……」

仮面『……ですから、ええ……え? いやしかし……え、大ファン? はぁ……ええ、わかります……自分もです……』

ーーー仮面の人物はなにやら慌ただしく何処かと通信しているようだ。

B「え、でも私なにも思い当たる節はないわよ? え、数合わせ?」

A「そんな合コンみてぇな」

B「まあ、地元じゃちょっとした役目で有名ではあったけど……」

C「どんな?」

ーーーここで急に、仮面の人物が話し始めた。

仮面『諸君。事情が変わった。一名を犠牲とし、配信者、ゲーム開発者、作家の三名はここから出……』

B「地元のお祭りで、毎年私が逆立ち火渡り傘回しドジョウ踊り食い腹踊り巫女をやってるってだけなんだけどね」

ACD「……え???」

仮面『……え??????』

ABCD「え?」

A「と、とにかく、なんだそれ……?」

B「え? そのまんまよ。逆立ちで足で傘をおめでたく回しながら火渡りをして、社殿までゴールしたらドジョウを躍り食いしながらお腹に顔を描いて腹踊りするの」

D「そんな神事があるんですか……」

C「…………正直ものすごく見たい」

仮面『……』

ーーー仮面の人物はなにかを手元で操作しているようだ。

B「流石に東京じゃ見たこと無いけど、田舎ならよくあるんじゃない?」

ACD「ない」

仮面『ない』

B「そぉ? でもどうしよ……今、村じゃ私しかできるひといないんだよねぇ。やらないとなんか悪いこと起きるらしいのよね、国に」

A「国に!?」

ーーーそのとき、仮面の人物のもとにまたなにか通信が入ったようだ。

仮面『はい……え? 変更? はい……ええ、自分も見たいです……あ、そちらのご出身? はい……え、ガチ祟り? ……え、それ本当にガチじゃないですか……怖……』

A「しかし最期に最大級に気になることができちまったなぁ……」

D「もう最期だからフラグを立ててもいいですよね。僕、ここから生きて出られたら、あなたの地元のお祭り見にいくんです」

C「私も……それなら頑張って、自分の部屋から出て見に行く……」

B「ねー? 私もお祭り案内したかったなぁ~! 美味しい名物の屋台とか出るの!」

ーーーまたここで急に、仮面の人物が話し始めた。

仮面『あー……諸君。再度事情が変わった。その……全員解放だ! 君たちを解放しよう!!』

ABCD「は?」

仮面『ンンッ……これは極限状態における心理についての国家プロジェクトによる実験だったのだ。突然のことで申し訳なかったが、報酬も支払われるし、首輪も外す。きちんと自宅までの交通手段も手配しよう』

A「実験……???」

C「……ここまでやっといて?」

D「実際危険もあったと思いますけど?」

仮面『……』

B「えーと、つまり……やったーーー!!!!」

A「そういう単純な素直さ、いいな」

C「羨ましい……」

D「見習いたいです」

仮面『と、とにかく実験は終了だ! モニターの下辺りにドアがある! 鍵は解除した! そこから出たまえ!』

B「はーい! じゃあみんな、連絡先交換しましょ!」

A「そうだな。見ないとだもんな、祭り」

C「動画も小説も、だよ」

D「ゲームもですね」

B「DIYしたり友達も増えたり、楽しかった! そうだ、まずは名前から教えとくね! 私は……」




ーーー誰もいなくなった部屋のモニターに、仮面の人物が映っている。


仮面『……なんでこんなに偏ったんだ……ランダムで選んだはずなのに……』

 完全にランダムだった。

 しかし、四人が四人とも彼自身や主催者やスポンサーたちの推しであったり地元の重要人物であったりしたわけだ。

 デスゲームは完全に失敗である。

 賭けもお流れとなった。

仮面『……予算、また減るかなぁ……』


ーーー彼の独り言が、虚しく響いた。


(END)


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