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旅立ち
深夜一時。河川敷には四つの黒い影があった。俺の影は余りにも大きく今にも俺を呑み込もうとしていた。ブーブブブブーブブブブッブッブー。俺は原付でコールを切りながら屁の様な音を撒き散らしている。風を感じて気持ちが良い。俺の俺からは我慢汁がシトシトと分泌していた。調子に乗ったおれ達は国家権力の法治化にある公道に出て赤信号にノンブレーキで突入する度胸試しをする事になった。これは負けられない。やってやる。やってやるぞ。僕は死ぬんだ!僕は死ぬんだ!貧困家庭に生まれ小六でやっとそれに気付き毎日死にたいと思って生きてきた。今こそそれを果たすチャンスだ。
「特攻一番機。安土十一参りまぁす」
俺はアクセル全開で深夜の赤信号に突っ込んだ。果たして他車とぶつかる事は無かった。ゾワぁぁと底知れぬ快楽に包まれたのも束の間、暗くて見えなかったのだがその赤信号の先には道が無かった。人家の倉庫に突っ込み俺の身体が上空高くに投げ出される。そこに偶然スズメが一羽飛んで来てバードストライクを起こした。俺は凄まじく絶命した。二百メートル先で三人の男達がそれを醒めた瞳で眺めていたのを憶えている。




