ヲタッキーズ165 華麗なるヒロイン野球
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第165話「華麗なるヒロイン野球」。さて、今回はスーパーヒロイン野球のスター選手が野球場でバットで撲殺されます。
亡命選手ゆえ母国の軍事独裁政権の関与が疑われる中で野球リーグのエージェント、選手、高利貸しなどが現れ、ヒロイン自身の不倫疑惑も飛び出して…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 沈黙の打席
真夜中のスタジアム。
赤いランプが明滅し、蒸気仕掛けのチェーンがガラガラと巻かれてカタパルトから豪速球が飛ぶ。
狙いたがわズ豪速球は…スーパーヒロインの死体を直撃。さらに1球、もう1球。死体を連打スル。
光を失った瞳は、虚空を見つめている。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
御屋敷のバックヤードをスチームパンクに改装したら居心地が良くて常連が沈殿、回転率は急降下でメイド長は御冠だw
ところが、今宵メイド長は…
「スピア。振り向いちゃダメょ私が今、持っているのは?」
「はい、ミユリ姉様。お財布です」
「素晴らしい!10回とも的中だわ!」
何とスピアは目隠ししてるw
「おいおい。何やってルンだ?」
「あ、テリィたん。今、姉様から読心術を習ってるのょ」
「テリィ様より遥かに才能があると思います」
カウンターの中からミユリさんがクスリw
「ソレは誇らしい!しかし、なぜ急にテレパシーに目覚めたのかな?"覚醒"ゴッコ?」
「いいえ。私はタダの腐女子ょ。カルチャーセンターの系譜学の課題で先祖の話を集めてルンだけど、まさかミユリ姉様の先祖が読心術をやってたなんて!」
「当時は結構有名で、舞台は大盛況だったらしいのです」
アキバに開く"リアルの裂け目"の影響でパワーに"覚醒"した腐女子がスーパーヒロイン化スル事例が多発している。
しかし、ミユリさんの御実家が見せ物小屋とはw
「言いなさいと言ったらお財布で、教えてって言ったらメガネなのょ!」
「なーんだ。ウチだって詐欺師とサーカス野郎が多い家系ナンだぞ。あ、あれ?電話だ…」
スマホが鳴動。見るとスピアが側頭葉に指を当ててるw
「ラギィね?」
「スゲェなぜわかった?」
「10時過ぎ。ソレも平日の。他にいないわ」
スピアが小さな舌をチョロリと出す。萌え。
「才能があるな…テリィだ。ラギィだってわかってたょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
夜のスタジアム。ナイター照明に照らされた緑の芝生に非常線が張られ鑑識が右往左往してる。先行したエアリの報告。
「ヒスパニック系30代半ば。10時半頃、犬の散歩中の通行人が発見しました。財布は無し。"blood type BLUE"。強盗だとすれば、犯人は被害者を知らなかったようです」
「身元は特定出来た?」
「もちろんょ」
エアリは驚いたような顔で僕を見る。彼女は、ミユリさん率いるスーパーヒロイン集団"ヲタッキーズ"のメンバーだ。
「え。エアリの知り合い?」
「あらあら。秋葉原中が知ってるわ!」
「誰ナンだ?」
バッターボックスの後ろのボールが何球も散らばる中に、ペタっと転がってるホットパンツのスーパーヒロインの死体。
「ヒロイン野球のカノウ・ヴェガ」
「え。あのヴェガ?僕でも知ってるょ」
「私が勝手に作るドリームチームの中には、必ず彼女を選んでた。打率は3割1分4厘。ゴールドクラブ賞は4度。チャンピオンリングは1つ。彼女が脱北して来た直後、彼女のホームランボールを取り損ねたコトがある。当時のカレが、このスタジアムへ連れて来てくれた」
ヒロイン野球は"覚醒"したスーパーヒロインによるプロ野球だ。スーパープレー続出の超A級のエンタテインメント。
「ヒロイン野球は、相変わらズ大人気だな」
「純潔乙女だった頃から試合を見に行ってたわ」
「ラギィも?私もよ。テリィたんのパパも好きだったんじゃナイかな」
僕は苦笑い。ラギィから助け船が出航。
「テリィたんは、パパさんとは色々あったの」
「え。まさか血が繋がってナイとか?」
「複雑なんだ」
さらに助け船は僕のタブレットから。
「特に複雑でもないわ。誰かサンが人の頭を使って打撃練習をしただけょ。凶器はバットで後頭部を複数回殴られてるわ」
「死亡時刻は?」
「体温からして2〜3時間前ね。死後に出来たと思われる痣が全身にアル。ボールのね。ソコの蒸気カタパルト式のピッチングマシン、しばらく働き続けてたみたい」
僕のタブレットをハッキングし"リモート鑑識"をしてくれる超天才ルイナ。車椅子の彼女はラボから捜査をサポート。
あくまで気分転換に、だ。本職はD.A.大統領補佐官w
「ヴェガほどの選手なら、自宅にバッティングの練習場とかあるハズょ。夜中のこんな危険な時間に東秋葉原で何をしてたの?」
「あのね。ココはヴェガのスタジアムなの。コミュニティに恩返しをしたいと言って作った野球場らしいわ」
「犯人はここからヴェガを打ったのね?靴に血がついたハズだわ。野球場の外を調べて足跡を見つけて」
万世橋の敏腕ラギィ警部と合同捜査だ。
「ROG。ところで、テリィたんのパパはマンマ・ミーア状態?1970年代前半に流行った自由恋愛って奴ね。ママさんも大胆だったのカモ」
「うるさい。それ以上逝うとクビだぞ」
「アイアイ、ボス。ごめんね」
ヲタッキーズは民間軍事会社で僕がCEO。因みにエアリ達はメイド服。僕の趣味と逝うより…ココはアキバだからね。
「相手はプロのスポーツ選手。殺すのは簡単じゃないわ」
「きっと不意打ちだったんだな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アキバの摩天楼の向こうにオレンジ色の太陽が昇る。
「私が代わりにファンの愛とサポートに感謝いたします」
朝から続々とマスコミが詰めかける豪邸の前。大型バンのドアが開いて、音響やカメラを担いだクルー達が駆け降りる。
「家族は突然の不幸に打ちひしがれています。家族のプライバシーの尊重をお願いいたします」
ヴェガのエージェントが落ち着いた対応を見せる。
「フォクさん!屋敷の中には御家族が?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
もちろん、家族は中だ。野次馬を見ながら妻のマギィ。
「"結婚"12年なのょ(レズビアンだけど)」
マギィは、野球人の"妻"らしく美しいブロンド。
「ヴェガさんお悔やみ申し上げます。昨夜ご主人はなぜ野球場に?」
「ストレス解消によく行ってました。でも、夜に行くなんて…」
「その前は、どこにいました?」
ラギィの質問に答えたのはトミィ・ゼイン。
「私達のクラブょ」
「"夫"のチームメイトです」
「モチロン存じ上げてます。"貨物列車のトミィ"」
ラギィの答えにニッコリ微笑み、ゼインはマギィの肩を抱き寄せる。うーんソレはソレで百合っぽい。嫌いじゃないな←
「ところでトミィ。被害者は昨日はクラブに?」
「YES。私とヒロイン野球の仲間数人とで経営しているクラブです」
「彼女がいた時間は?」
「7時半ごろまでいた。あまり話さなかったけど。あ、失礼します。もしもし…」
スマホが鳴り、トミィは席を外す。マギィが嘆く。
「主人は、以前はみんなに愛されてた。特に脱北コミュニティでは」
「何か変化がありましたか?」
「旅行よ。数ヶ月前依頼があったの。新しい半島の広告塔になってくれと」
孤立化の反動からか領袖様は世界との和解を画策中だ。
「だとしても、命がけで脱北した半島に旅行スル?」
「実際行ってみたら、半島でヴェガはヒーローとして扱われて。その上、晩餐会では偉大なる半島を照らす明星たる領袖様と握手もした。でも、それが脱北コミュニティの反感を買い、帰国後、裏切り者とか領袖の犬とか呼ばれ、球場に来て歓声を上げた人達が地獄へ行けとヤジを飛ばすようになった」
「脅迫がありましたか?」
ラギィの問いに応えるのは、先ほどマスコミ対応をしていた初老のエージェントだ。高級スーツの海千山千を装う輩だw
「モチロンです。アルフ・キタナのせいで数百件もの脅迫が来ました…あ、私はヴェガのエージェントでボビィ・フクスと申します」
「どうも。万世橋警察署のラギィと南秋葉原条約機構のテリィたん」
「おお!あの国民的SF作家の?…警部さん。あのハイエナ連中をなんとかできませんか?」
フクスは、屋敷の外のマスコミと野次馬を指差す。
「やってみます。ところで、アルフ・キタナとは?」
「カノウ・ヴェガを殺した犯人です」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋に捜査本部が立ち上がる。
「いたいた。コイツだわ。アルフ・キタナ。法学博士号を持ってる新聞編集者ね。脱北コミュニティの住民向けの新聞を作ってる。2週間前の彼のコラムょ。大量虐殺をした怪物と握手した裏切り者、コミュニティへの裏切りだと批判してるわ」
ヲタッキーズのマリレのPCを全員で覗き込む。
「"ヴェガが残忍な政治家を容認するのなら、今度はヴェガ自身がその残忍さを思い知るべきだ"ですって!」
「ソレは脅迫以外の何物でもナイわね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
30分後。万世橋の取調室。
「私は脅迫などしていない!」
「でも、キタナさん。貴方の記事のせいでコミュニティ全体がヴェガの敵になってしまったの」
「軍事独裁政権を黙認した時点で、彼女は既にコミュニティの敵になっていた。そのせいで死んだとしても、彼女に同情はしない。あの記事は真実を描いたまでだ。後悔はしていない!」
かなり感情的になってる。面倒臭そうw
「でも"ヴェガに天罰を"とまで描いておいて、自分は何もしなかったと言われてもねぇ」
「ココは自由の街、秋葉原だろ?意見を表現したまでだ」
「貴方の法人"脱北ファースト"は東98丁目にあるわね。ヴェガが遺体で発見された野球場からは3ブロックよ」
ホントに面倒臭い。まぁ容疑者だから仕方ないがw
「私が彼女を殺したとでも?」
「ペンは剣よりも強しだけど、ホラ、バットも結構強いでしょ?昨夜7時から10時の間、貴方はどこに?」
「妻と家にいた」
ドヤ顔のキタナ。
「妻と言うのは便利なアリバイょね?」
「息子達も一緒だ。それから…弟もいたぞ!」
「なんだ血縁オールスターじゃないの。も少し何とかならないかしら?」
もはや絶叫状態のキタナ。
「誰がなんと言おうとヴェガの行為は許しがたい。だが、私は殺してない!」
「言い切れる?貴方はコミュニティ全体を煽って彼女を敵視させた。貴方がバットに触れなくても、事件に責任がないとは言えないわ…弁護士、呼ぶ?」
「不要!私は法学博士だ!」
睨み付けるキタナ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取調室から出て溜め息をつくラギィ。珍しいなw
「キタナは恐らくシロね」
「おいおい。令状をとって新聞の購読者を調べようょ」
「…テリィたんの先祖に警官とかいる?」
即座に首を横に振る。
「いいや。ウチは詐欺師とサーカス野郎ばっかりだ」
「絶対どこかに警官がいたハズょ」
「あ。ソレと読心術な」
クスっと笑うラギィ。
「今、私が考えている事はわかる?」
「わぁ!頭痛だっ!」
僕はラギィの側頭葉に指を当てて立ち止まる。
「ラギィは、どうでも良いから黙れと今思っただろ?」
「さすがに鋭いわ。スーパーヒロイン並みね」
「実は密かに"覚醒"してルンだ」
ヲタッキーズのマリレが駆け込んで来る。
「鑑識の結果ょ!犯人の靴だけど、場外まで続いていたが、歩道で止まっている。車に乗ったのね」
「あの辺りはヌカるんでるから、タイヤ片の1部を採取出来た。お陰で車種を特定出来たわ。去年、加重暴行事件の現場にあった車で、SPタイヤが特殊で2カ所に継ぎがしてあるの。で、その時の事件の凶器が野球のバット。犯人はアント・ウェド。相手をバットで殴っている」
「高利貸しにバットを使った脅迫と暴行。つまり、筋金入りの犯人って奴だな…ちょちょちょちょっち待てょ。今、何かを感知した」
額に指を当てる。スピア直伝?の読心術のポーズだ。
「ヴェガ殺しの犯人はソイツだ!」
第2章 フィクサー
1時間後。万世橋の取調室。
僕は、無理して大柄のウェドの左横に座っている。ラギィは腕組みしながら、壁際に立っている。取り調べスタートだ。
「ウェドさん。貴方、東秋葉原の野球場にいたわね。犯行現場に車があった。それにバットで人を殴った前歴もある。コレだけで、もう貴方を十分に蔵前橋送りに出来るわ。トボけてないでプレイボールにしない?」
ラギィの野球のジョークだ。珍しいなw
「確かに野球場には行ったが既に死んでいた」
「え。どうして死体に会いに行ったんだ」
「ヴェガに呼び出された。行ってみたら殺されていたんで、面倒はゴメンだと思って、取るものだけ取って直ぐにトンズラした」
ラギィは、ウェドの正面に座る。
「取るもの取った?呼び出された理由は?」
「俺に借金を返済するためだ。いつもと同じだ。死体から、無地の封筒が見えたから、ソレだけもらって来た」
「あのね。国民的スターのヴェガは億万長者なの。ケチな高利貸しの貴方に、なぜ借金をスルの?」
イラつくラギィ。
「知るか。客の事情なんか聞かねぇよ」
「で、いくら貸したの?」
「2000万円。数週間前だ。経験から見て、そんな大金を借金するのはヤバい状況に陥っている奴だ。殺されたっておかしくはねぇ」
ウソぶく高利貸し。
「ふーん利息を払えなくて、そしてマフィア並みの制裁の一撃を加えたってワケ?」
「わかっちゃねぇな。殺したって金は戻ってこない。確かに俺達は、時には車を盗んだり宝石をいただいたり、まぁその、膝を砕いたりはスル。だが、ソレは全部、借金を返させるためだ。奴は、利息もキッチリ払い切った。制裁は不要だったょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋。捜査本部の本部会議。
「被害者の妻マギィは、夫ヴェガの借金について、何も知らなかったわ。ワケわかんない。億万長者ナンだから、どの銀行でもローンを組めるのに、なんでワザワザあんな高利貸しから借りるの?」
マギィと電話で話したラギィは嘆息。
「銀行は時間がかかる。高利貸しの方が手っ取り早いわ。どーせ秘密にしたかったんでしょ?高利貸しなら手続きも不要でバレにくい。つまり、奥さんから隠したかったのね」
「因みに、ヴェガは旅行の目的も奥さんに話してない。そして、帰国後、突然2000万円が必要になった。旅行と借金は関係してるハズょ」
「今、ウェドの家の家宅捜索から戻ったトコロ。靴跡と同じ靴が発見された。でも、おかしなコトに靴底には血がついてたけど、他の部分にはついてなかった。ウェドが犯人なら靴は血だらけのハズ」
マリレの報告を聞き、ラギィが唸る。
「じゃあウェドの話はホントね?ホントに死後、現場に行ったんだわ」
「血は踏んだだけ。一方、犯人は血を踏まなかったから、外の道路にも痕が残らなかった?」
「その旅行と借金の関係を調べなきゃ。なぜ旅行が必要で、なぜ借金したのかを調べましょ」
ラギィのまとめ。
「OK、ラギィ。で、どこから始める?」
「ヲタッキーズには、ヴェガの経済状況を調べて欲しいの。私とテリィたんは半島筋を掘り返す」
「半島筋!良いねぇ。喜び組に聞き込みだね!」
誰も聞いてないw
「テリィたん。捜査は秋葉原でいくらでも出来るの。先ず半島行きの旅行手配したエージェントのフクスに会いましょう」
そりゃとても良い案だ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
東京ドーム近くのオフィスビル。野球エージェントのオフィスが集まり、四六時中スマホ片手の人々が右往左往してる。
「うーん場所も人も全てがキラキラね。全員がステロイド打ちながら大声で密談してる感じ」
「中でもフクスは大物フィクサーだ。マネージメントしてる選手は紛れもないスター選手ばかり。出演料や給与の5%が彼の収益だから…フクスは電気街の半分が買えるw」
「あ、フクスさんのオフィスをお願いします」
フロントは、マイク付きヘッドホンの短い金髪女子。
「アポイントはおありで?」
「なくてもお会い出来ないかしら?」
ハンドバックに付けたバッチを示すラギィ。
「テリィたんか?」
背後から御座敷がかかって振り向いたら…
「大谷?大谷将兵じゃないか!久しぶり。大リーグから帰国後に対談して以来だな。調子はどう?」
「最悪だ。ヴェガの件で気落ちしてる」
「そっか。仲が良かったのか?」
大谷は肩を落とす。
「とても素質のあるヒロインだった。あれだけの才能だったらヒロイン野球のベーブルースにもなれたのに」
「実はその件で来てる。こちらは事件を担当する万世橋(秋葉原ポリス)のラギィ警部さ」
「そりゃどうも。警部さん、必ず事件を解決してください。協力は惜しみません」
…あ、あれ?ラギィ、絶句してる?
「わ、わ、わ、わ、わ、わかりました!あの、握手…」
完全に声がうわずってるw
「会えてよかった。1日も早く事件が解決するよう頑張ってください、警部さん」
「は、は、は、は、は、はい!必ず!」
「ありがとう」
大谷は去りかけて…フト振り返る。
「テリィたん、ミユリさんによろしくな」
「伝えとくよ…あのな!ラギィ、声が上ずってたぞ
「あの大谷に頼まれちゃった!」
僕の肩をバンバン叩く。
「パパに電話しよっと」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕は、第3新東京電力のOBで衛星軌道に浮かぶ宇宙発電所の所長だったんだが…その所長室より10倍は広いオフィスw
「ヴェガは、良いスーパーヒロインでした。東秋葉原に恩返しだと野球場を建ててくれました。同じ恩返しの気持ちで半島にも行ったのでしょう。だが、母国は何も変わってはいなかった」
「というと?」
「平壌で国賓として過ごした後で憤慨してた。もらった広告塔になる契約金を返すと私に言った。顧客が返金なんて前代未聞だ。彼は軍事独裁政権が気に食わなかったのでしょう。私だって気に食わない。ただし、怒らせたら怖い連中です。特に彼女は18年前に脱北しているので」
なかなか話が上手い。声がデカい分、変な説得力がアル。
「ヴェガは、命がけで脱北したのに、なぜ半島の広告塔になろうとしたのでしょう?」
「私じゃありません。ヴェガが提案してきたのです。私も驚きました。私が彼女を亡命させたのですから。その時の話を御存知ですか?」
「(モチロン)知りません」
ますます嫌な感じだ。大ホラ吹きの風体w
「テリィたんのSF小説のような話です。ハラハラしますょ。去年のマラケシュオリンピック。五輪野球で半島組は金メダルを獲得した。彼女の力だった。私はヴェガをメジャーリーグに連れて行きたかった。本人の説得は難なく出来ましたが、飛行機に乗せるのが難しい。大勢の前を通過する必要がある。コーチや警備員。銃殺隊の前を通り過ぎる。そして、安全保障のトップ、通称ナクチ。タコみたいな触手を伸ばし誰も逃さない。ようやく自由になれると思った瞬間、彼がいた。ナクチです。全てが終わったと思った。ヴェガは半島で処刑されるだろう。だが、どうやってナクチをかわしたか?ロレックスです。私がドジャースを退職した時の退職祝いにもらったロレックスを渡すと、彼はそっぽを向いてくれた。どんな社会主義者も裏に回れば資本主義者だってワケです」
拍手喝采。手に汗握ったょオッサン。
「ヴェガは、お金のために半島の広告塔の依頼を受けたのでしょうか?」
「その可能性はあります。スポーツ選手は、大抵浪費家だ。彼女はゼイン達とやっているクラブ経営にも金を注いでましたから」
「半島への旅行ですが、誰が同行しましたか?」
語り終えたフクスは、意味不なドヤ顔だw
「半島の外交官が付き添ってました。在秋葉原の領事だったかな?後でリストを渡しましょう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
東京ドームからの帰り道。低調な事情聴取の後なのに、覆面パトカーのハンドルを握るラギィは、コトのほか上機嫌だ。
「ルンルン…ところで、彼女はなぜ半島行きを決めたのかしら。そもそも半島に行って何を憤慨したの?」
「ソレは…実は、彼女は内調のスパイで領袖様と握手したのも任務。領袖様に生体毒素を移すためだった。因みに、ロシアは寿司にポロニウムをかけて殺人を犯したコトもあるんだぜ」
「あぁ!大谷に会えたから、今日はなんでもアリの日ょ!」
まるで聞いてない。スマホが鳴動。
「はい!警部のラギィょ!貴方はだぁれ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"リモート鑑識"の超天才ルイナだw
「死因はやはり脳内出血ね」
僕達は神妙な顔で万世橋の地下にある検視局にいる。ストレッチャーに載った遺体が手術用のライトに照らされている。
「バットで殴った角度から犯人の身長とかわからない?」
「普通はね。でも、彼女は1発目に下半身を狙われた」
「下半身?」
僕は、タブレット画面の中のルイナに問い返す。
「そーなの。股間をやられている。それも思い切りね」
「ヒロピンAVの定番シーンだな。女子用のファールカップとかあればな」
「しかも、打たれた時、ヴェガは跪いていたと思う」
ホントかょ?儲け過ぎて懺悔でもしてたか?
「じゃあ誰でもヴェガを殺せたの?」
「YES。子供でも殺せた。でもね、呼んだのはそのコトじゃナイわ。痣が複数あったンだけど、新しくない痣もいくつか見つかった。それらの痣の大きさは、全て拳の大きさょ」
「やっぱりヒロピンAVの女子ボクシング…」
ラギィに口を塞がれるw
「喧嘩したのね?」
「恐らくYES。数日前ね。何の形だか、こんな痣もあった」
「薬指の指輪の痕だ!やっぱりヒロピンAVの総合格闘技編に出て来る悪役用の格闘リング…フガフガ」
またもラギィが口を…なぜが鼻も。遊んでる?
「ただの指輪じゃないわ。WBCのチャンピオンリングょ」
「やっぱり左手の薬指にハメる奴だろ?」
「チームメイトの"貨物列車トミィ・ゼイン"が身につけていた奴ょ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
「テリィ様の御先祖はノアの箱舟に乗っておられたのですょね?確か昔、私を口説く時にソンなお話を…」
「だから、被害妄想は遺伝ナンだ。自分の遺伝的傾向を予め知っておけば、今の内に色々と対処が出来るょね」
「あ、ソレは…」
僕は御屋敷の冷蔵庫から生クリームのスプレー缶を取り出して、ミユリさんが止めるまもなく口の中にプシュ!甘いょw
「テリィたん、パパさんと不仲だったって嫌じゃない?」
「別に。何で?」
「だって…パパさんと当然あるハズの想い出とか、何か大事なモノが欠けてる気にならない?」
常連のスピアが絡む。彼女はハッカーで、超天才ルイナの相棒。僕のタブレットのハッキングは多分スピアがやってるw
「僕は、大学のパーティでアリンって腐女子と出会った。たった6時間で話して恋してセックスしたけど、翌朝、彼女は消えてた。1年かけて探したけど、今もって苗字も何もわからない。でも、彼女を忘れたコトは無い(バカテクだったからw)」
「でも、想い出がないって、もしかして、スゴく人生を損をした気分じゃない?何か…欠落してるような?」
「僕の人生は欠陥品か?…とんでもない。それが謎の良いところだ。彼女は宇宙飛行士や女海賊やノーベル賞受賞者にもなれる。何にでもなれる魔法の彼女だ」
自分でも詭弁だと思うが、議事進行!
「アリンちゃんもクリーム好きだったのな。ソレとも単なるテクニシャン?」
「え。しかし、その、あの、それドコロかクリームの発明者だった可能性もアルってコトょ」
「あ。もうヤメたら」
構わズ口にスプレー缶を突っ込みクリームをむさぼる。
「テリィたん、夕ごはん前ょ!」
「コレが夕ごはんさ」
「絶対らめ」
第3章 彼氏はブラジリアン
"夕ごはん"を済ませた僕は、夜の"秋葉原マンハッタン"にお出掛けスル。アキバは夜の早い街だがココだけ不夜城。
「ゼインさん?」
「あら。ラギィ警部にテリィたん!」
「じゃね…」
ゼインとラテンのノリで絡んでたイケメンがスッと離れるw
「楽しそうね。チームメートが死んだのに」
「人生の謳歌ょ。ヴェガならきっとそうしてる」
「カクテルを片手にイケメンをくわえ込んで"悲しいわ"とは言えないょな」
ゼインは言葉に詰まる。ラギィが斬り込む。
「貴女は何でも水に流すタイプのようだけど、数日前ヴェガをボコボコにしたのに、その時の恨みも忘れたワケ?」
「さて、何の話でしょう?」
「遺体に貴女が殴った痕があった。そのチャンピオン・リンクの痕がクッキリとね!」
犯人はお前だ!のノリでゼインのリングを指差す僕!
「え。チームの25人全員が同じ指輪を持ってるけど?」
「(げ。そーなの?)ぜ、全員が左手の薬指に?」
「まぁ何人かはね」
そーだろーな。ラギィ、ごめん後は頼む←
「あらあら。じゃその人達全員の指にも、貴女の指と同じ誰かを殴った痕がアルのかしら?ねぇ何があったの?ヴェガがこのクラブのマネージメントから手を引こうとした?」
「彼女は…関係ないわ」
「では、誰?」
答えは意外だ。
「彼女ょ」
「え。やっぱりヴェガなの?」
「いいえ。パートナーのマギィ」
何でマギィが絡むんだ?まさかレズ浮気的な?大好物だ!
「テリィたん。その妄想、口にしないで。ついでにニヤつくのNG。不潔ょ…でも、ヴェガは誤解した。実際の話は、その逆で、マギィがヴェガの浮気を疑った。そして、私に相談して来た。このクラブでヴェガが"イケメン"と会ってルンじゃないかって」
「で、何て答えたんだ(ってか真相は?)」
「モチロン否定したわ」
ところで、ゼインはテレパスらしい。慌ててサイキック遮断ギアを被る。横に"SF作家"と大描きしてある僕専用だw
「ホントなの?」
「YES。だって、ヴェガは離婚する気はサラサラなかった。だから、ホントのコトは言えない。全力で否定したわ」
「じゃ…実際は浮気してたのか?」
結論は?身悶えスル僕←
「ヴェガは"イケメン"と一緒にいた。整形の感じから、多分相手は若い男の"喜び組"」
え。"喜び組"って男もいるのか?
「きっと半島が恋しかったの。半島に帰って里心がついたのょ。だが、彼女の家から私が帰るのをヴェガに見られて、逆に私が疑われたワケ」
「なるほど。ソレでヴェガは妻のマギィを君に寝取られたと思ったワケか(ウヒョウヒョw)」
「(イヤラシイ笑いwでも妄想が読めないわ)で、いきなりヴェガがライダーキックで襲って来たから何発かロケットパンチで殴って落ち着かせた」
スーパーヒロイン同士のストリートファイトじゃナイか?ヒロピンAV新春企画だょ!hallelujah!うひょひょひょひょ!
「で、ヴェガがココで会っていたイケメンの名前は?」
「名前はムリ。でも、店内の隠しカメラが画像をキャプチャしてると思う」
「ゼヒ見たいわ(よ)!」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「スポーツ選手や政治家って、どーして発情しやすいの?」
ボールをカーブで握りながらキャッチボール。
投げるエアリに捕るマリレ。2人共メイド服w
「きっと心が10代なのね」
「成長が止まってるとも言うカモ」
「単に誘惑される機会が多いだけ説」
キャッチボールは続く。
「機会と可能性は比例する。だから、私達は大丈夫」
「あら。エアリはね」
「え。」
思わずボールを落とすエアリ。一方、ホワイトボードの前。
「旅行後、なぜヴェガは人が変わったのかしら」
「ズバリ理由は男かもしれないな」
「2000万円もイケメン代だと思う?」
ラギィの自問自答に加わる僕。
「モチロンYES。妻にバレないように、内緒で借金をしたに決まってるょ」
「でも、マギィにバレた?」
「だね。マギィはヴェガを許すコトが出来ズに離婚を検討スルが、泥沼化スル裁判、マスコミによる恥の上塗りを恐れた。何より財産が半分になる。ま、婚前契約にもよるけど」
まるで我がコトのようにスラスラ仮説を展開←
「でも、殺せば全額ゲットだ」
「確かに。ヴェガが1人で野球場に行くコトは彼女も知っていた。マギィが行くとヴェガは警戒もしない。そして、彼女は近づく…」
「笑顔でバットを手にし、思いっきり(ナゼかw)股間をヒット!さらに、憎しみを込めてヒット!そして、全財産のために、も1度ヒット!」
妄想の中のヴェガは、もう血まみれだw
「そして、もう1振り!」
ラギィ、目が怖いょw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヴェガの豪邸。妻のマギィは激怒してるw
「バカバカしい!なぜ私が夫を殺すの?」
「貴女は、ヴェガの浮気を疑った」
「…な、なぜ知ってるの?」
絶句する。ラギィが追い討ち!
「ソレより、なぜ黙ってたの?」
「だって…だって、プライベートな問題でしょ?」
「でも、殺人の動機になるわ。マギィ。貴女、事件の夜はどこにいたの?」
王手!と思ったのに、全くマギィは怯まないw
「モチロン、家にいたわ。1人で。防犯カメラの映像を確認して…ねぇソンなコトより、やはりヴェガは浮気してたのね?」
「ま、待てょ未だ確実じゃナイ」
「いいえ、確実なの!ヴェガは、そのイケメンを愛してた。そのイケメンの名前はララァ。ヴェガの"ミ・カリーニョ"ょ!まさかコンキスタドールとデキてるナンて!うわーん!」
絵に描いたような黄金の電話置きみたいな小机の引き出しからメモを取り出し、ナゼか僕に手渡して大泣きするマギィ。
"1月6日2030 Mi Carino"と描いてアルw
「このメモは何?ってか、ララァの名前が出て来ないけど誰かな?まーさか"ソロモンの悪夢"?」
「ガンダム?とにかく、浮気相手のイケメンに違いないわ。何か証拠がないか、屋敷中を探したら、そのメモが出て来たの!」
「1月6日は事件前日だな。しかし、ララァ?あまりイケメンぽくナイ名前だ。いきなりスペイン語ってのも謎」
もっともな疑問だと思うがマギィは治らないw
「あのね、とにかく!ヴェガはその日、出かけて夜の10時半まで帰らなかったのっ!ソレで私は浮気を確信したのっ!」
「わかったわ、マギィ。でもね、こーなると、そのイケメンが事件に関係してるコトは明らかょ?」
「なぜもっと早く話してくれなかったんだ?」
大声で泣きながらも、キッと僕を睨むマギィ。
「浮気が本気だと認めたくなかった!うわーん」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「警備会社から提供された"見守りサービス"の画像を確認しましたが、事件当夜のマギィのアリバイは鉄板です!」
「トミィ・ゼインの家からヴェガの血痕は出ませんでした」
「ヴェガのネット履歴を調べたけど、ララァに関するメールやネット閲覧記録は見つからなかったわ。スマホの通話記録も同じ。ヴェガと通話した人達全員に確認したけど、ララァの名前を聞いた者は誰もいなかったわ」
ヲタッキーズにハッカーのスピアまで加わり…八方塞がりw
「浮気スルなら、もっとコマメに連絡しなきゃ。ダメ女の見本。浮気スル資格がないな」
「…あ、ダーリン?声が急に聞きたくなって」
「マリレ?妄想彼氏?」
何と僕のダメ女発言を契機にマリレが妄想彼氏?にスマホしながら歩き去る。思わズ顔を見合わせる僕とエアリw
「泣くな。エアリも、きっと誰かに愛されてる」
「はいはいはい!パートナーのいない彼氏彼女は、ゼインがくれたイケメンの写真持参で聞き込みょ!」
「わかったょエアリ。事件当日イケメンが目撃されてるカモしれないしな」
急かされて腰を浮かすと、ラギィが駆け込んで来る。
「池袋の乙女ロード署から情報ょ!先日ヴェガがオーガニックレストランで派手な喧嘩をして、警察が出動する騒ぎになったらしいわ」
「え?でも、記録にはなかったンだろ?」
「半島の総領事館の要望で内密に処理されてた。前の職場の部下からのタレコミで知ったの」
ラギィは、前の職場では"新橋鮫"と呼ばれ、悪党はもとより署内でも恐れられてたが、その威光は今も健在のようだ。
「警察が内部処理?」
「いや。喧嘩相手のせいね。クォン・ファン総領事。領事館のトップょ」
「おやおや。ヴェガの半島旅行にも同行してるな。事件に関わってそうだ。調べよう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
東秋葉原58丁目。アキバのハズレとなる、未だ昭和な中小の雑居ビルが並ぶ界隈に、半島の"総領事館"はアル。
「私は事件の夜、この領事館にいた。まさか私が犯人だと思っているのか?」
「クォン総領事。ヴェガの半島旅行に同行されたそうですが、道中ヴェガの心変わりでモメたそうですね?」
「もともとヴェガは、脱北コミュニティには敵が多いのだ」
総領事は、派手なストライプの背広にデップリとした巨体。
「ソッチもさるコトながら、総領事はヴェガとハデな喧嘩をしたそうですね?」
「なぜソレを知っている?…まぁ良い。だが、私から始めたワケじゃない。何もしてないのに、ヴェガの方から手を出して来たのだ」
「おや?なぜでしょう?」
デスクのチェアにデップリ身を沈めたママ答える総領事。
「半島旅行中の行動が縛られたのが不満だったようだ」
「ほぉ。相当厳しく自由を制限したんですね」
「当然だ。そもそも、今回の彼女の半島旅行自体が反革命的なコトだったのだ。勝手に動かれては困る」
その肥満こそが"反革命的"だと思うけど。ラギィの質問。
「つまり、旅行中ヴェガの行動を監視してたのね?」
「ソレが仕事だ」
「旅行後、ヴェガが変わったとみんなが言っていますが、半島で何がありました?」
"反革命的な肥満体"は身を乗り出す。
「半島旅行中、ヴェガはずっと感情的だった。彼女自身は、億万長者になったのに、半島人民は貧しいママだ。きっと、後ろめたい罪悪感があったに違いない」
「帰国後、ヴェガは借金を2000万円しています。半島人民を助けるためのお金でしょうか」
「ソレはナイでしょう」
ナゼか即座に敬語で否定スル総領事。コレは何かアル←
「そりゃそうだ。金持ちが富を分配するのは、ヴェガが憎んだ社会主義そのものだからな」
「皮肉は結構だ、ブルジョア作家。ヴェガは、秋葉原のヲタクのように甘やかされて腐ってしまったんだ。最初は貧困を前にして同情してたが、それも、やがてキレイに忘れてしまったようだ。私は、すぐ気づいた。ヴェガがキューバで1番興味を持ったものは何だと?ソレは…イケメンだ」
「誰のコト?」
さりげなく核心に触れるラギィ。
「地元民との触れ合いの時に出会ったんだろう。きっと若いイケメンだ」
「名前は?」
「確か…ララァ」
おいおい。ララァって男かょ?源氏名?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「ヴェガは半島で恋に落ちた。(レズなのに)男と」
「ラギィは、あのデブッチョ総領事を信じるのか?」
「だって、とても作り話でララァとは言えないでしょ?」
新展開に、僕とラギィはほとんど自問自答w
「でも、パートナーのマギィが見つけたメモによると、ヴェガは殺害前日、ララァに会うつもりだったんだゼ?ララァが半島にいたら不可能な話だ」
「ソレに、クラブの隠しカメラで撮った画像には彼女の姿が…あ、そうょ。あの女はララァじゃないとしたら何者?単なる(レズの)浮気相手(テリィたんのどストライクパターン?)かしら」
「ラギィ!ソレからテリィたん!あの画像の女はララァじゃなかったわ!」
エアリが駆け込んで来る。
「野球場の近所の人が確認した。名前はアナノ・ユキノ。野球場のホットドッグステーションでウェイトレスをしてる。任意同行でショッピキました。間もなく到着」
「ホットドッグ屋さんとヴェガが何で?やはり…(レズの)浮気相手だったのか(どストライクだっ!)!」
「ち・が・う・わ」
エアリの完全否定。しょぼん←
「半島ょ。アナノは抜きの女王、じゃなかった、アナノも半年前に脱北してるの」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アナノは捜査本部の応接室に通される…オバサンだw
「野球場の近くで働いてて、ヴェガと出会った。私が、去年脱北したと聞いて、誘って来たわ」
「もしかして、貴女はバカテクの持ち主では?」
「そこそこテクニシャンだけど、既婚者です。ソレにヴェガは、話がしたかっただけ。故郷が恋しかったようょ?だから旅行に行ったのね」
そこそこテクニシャンって、どの位?
「ヴェガとは、彼女が半島旅行から帰った後にも会ってますょね?」
「YES。特に、旅行後はまるで取り憑かれたように、脱北の方法などをしつこく聞かれたわ」
「で、脱北の方法って、どんな感じ?」
出されたコーヒーを1口飲み、澱みなく話す。
「ある男が蛇頭に繋いでくれるの。"正規料金"を払えば"ミ・カリーニョ"が秋葉原に誘ってくれる」
「"ミ・カリーニョ"って?…まさか、蛇頭をM&Aしたスペイン系資本かしら」
「いいえ。蛇頭の船の名前ょ。船長がサンバ好き」←
え。サンバ好きの蛇頭?何だょソレw
「で、その"ミ・カリーニョ"で沖合まで出て、飛行艇に拾ってもらうの。そのママ神田リバー水上空港に着水したら即上陸ょ。上陸さえしてしまえば、日本政府は脱北者を受け入れざるを得ない。船で密入国スル場合、海上で強制送還になるコトが多いけど」
「ボートピープルを念頭に置いた古い密入国対策が、未だ生きてルンだ。ヴェガは"ミ・カリーニョ"でララァを亡命させようとしている」
「1月6日8時半。6日に半島を出たなら7日には入国してるわ。ヴェガが殺された日ょ。コレは決して偶然じゃないわ。アナノさん、脱北の手助けをした、蛇頭と繋がってる男の名前は?」
瞬間の躊躇がアリ、雪の女王は厳かに告げる。
「…コミュニティ向けの新聞を作ってる人。東98丁目にある法人ょ」
「ま、まさか…アルフ・キタナ?!新聞編集人の?」
「YES」
あの野郎!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部の、今度は取調室。もちろんコーヒーは出ない。
「おい!アンタらは、最初は私がヴェガを殺したと言ってたょな?その舌先が乾かぬ内に今度は脱北に協力したと言うのか?私のコトは、いったいどっちだと思ってルンだ。先にそっちを明らかにしてもらおう!」
「もう明らかにしてる。貴方の口座に2000万円の入金を確認した。カノウ・ヴェガが、高利貸から借金したのと同じ額ょ。なるほど、蛇頭に払う脱北資金じゃ銀行にローンは頼めないわ」
「な、何の話だ?」
机にコピーを叩きつけるラギィ。一目見たキタナが吠える。
「コレは、私の法人の口座記録のコピーじゃナイか!私の名前は何処にもナイだろう?」
「だからこそ、金をそこに隠してルンでしょ?」
「違う。コレは法人に寄せられた寄付金だ。私の新聞は、こうした寄付金によって刷られている!」
喧嘩腰の鉄火場に論理は不要。斬り込む僕←
「ララァは何処にいる?」
「な、何の話だ?」
「アンタと法人"脱北ファースト"は今、密入国斡旋の罪に問われてる。さらに、司法妨害罪と殺人幇助罪が加わるかどうかの瀬戸際だ。ところで、同業者だからマスコミは大好きだょな?明日から、アンタはカノウ・ヴェガの殺人に関係してると大々的に報道されるぞ」
瞬間詰まったキタナは、さらに吠える。
「イケメンを半島の軍事独裁政権から救った英雄として報道される」
「お金でな」
「金をもらわなくてもやっていた!」
やっと脱北斡旋を認めたな。
「ロクに知らないイケメンのために、編集者としての将来を棒に振るつもり?」
「…わ、わかった。実は、飛行艇が神田リバーに着水後、イミグレーションを通さズ、ヴェガが用意したアパートに連れて行った」
「ソンなコト出来るの?で、そのアパートは何処かしら?」
苦虫を噛み潰したようなキタナの顔。
「東秋葉原だ」
第4章 僕達のグリーングリーン
「万世橋警察署!万世橋警察署!」
安アパートの薄いドアを蹴破って、暗い室内へライト片手にサイレンサー付き短機関銃、音波銃を構えた警官隊が突入!
「クリア!」
「奥に回れ!キッチン?」
「クリア!」
電気が消え、人の気配がない真っ暗な部屋だ。何となくヲヴァンゲリヲンの青髪ヒロインが、お一人様で暮らしてそう。
「警部、誰もいません」
「そもそも家具らしい家具もほとんどナイわ」
「ベッドも使ってナイな…ラギィ!土だ」
鋭い観察眼で、床に土が落ちてるのを見つける僕。
「鑑識を呼んで」
「警部、洗面台にも…」
「土があった?」
制服警官がライトで照らし出す」
「いいえ。血痕です」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の検視局。
「間違いなくヴェガの血ね」
僕のタブレットをハッキングしルイナが"リモート鑑識"。
「あと(珍しくw)テリィたんが見つけた土だけど、何処の土か特定するのは難しいの。実は、土って何処でもそう変わらないから特定するのは厄介」
「え。証拠にならないのか?」
「とは言ってない。二酸化チタンが出たから」
石灰だ!
「野球場のライン引きに使うわ」
「じゃあ犯人は野球場でヴェガをバットで殴った後、家に帰って血を洗い流し、荷造りをして逃げたんだ。これぞまさしくヒットエンドラン!」
「アキバP.D.ラギィ警部。バッチ番号は41319。神田リバー水上空港、末広町セントラル駅を全渡航禁止にして。そう。誰も秋葉原から出さないで。よろしくね!」
誰かが僕の背中をチョンと突く。振り返るとスーパーヒロインに変身した僕の推し、つまりムーンライトセレナーダー。
「テリィ様。ホントに百合のヴェガは、イケメンに転んだのでしょうか?」
「うーんイケメンは脱北スルためにヴェガを誘惑、いざ脱北が終わって御褒美に関係を迫ったヴェガが殺したと思うンだ。ところで、ミユリさん。喜び組ってイケメンもいるンだぜ?知ってた?」
「テリィ様も妄想全開ですね。今回はスロースタートで、私の出番もナシかとヒヤヒヤしてました」
やはり、ミユリさんは僕の妄想の良き理解者だ。
「今回の黒幕は、半島の軍事独裁政府ナンだ。亡命したヴェガに腹を立て、イケメン喜び組を差し向けて誘惑させる。だが、イケメンを入国させた途端にバン!ヴェガは殺された…」
「実に、テリィ様らしい妄想だと思います」
「だろ?タイトルは"心の炎"にしようかな…」
頭をヒネる僕。妄想って楽しいな。
「"コラソン・デ・フエゴ"ですね?素敵…ところで、空港と地底超特急はラギィが押さえたみたいですが、半島の領事館も監視した方が良いと思うのです」
「おや?ミユリさんまで僕のイケメン殺人スパイ説を疑い出したかな?実は、僕の先祖には読心術の…」
「1時間前から監視させてたマリレから、ララァが領事館に入ったとの報告がありました」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
南秋葉原条約機構は、アキバに開いた"リアルの裂け目"からの脅威に対抗スルために人類が創設した秘密防衛組織だ。
超法規組織としての側面も持つ。
「あれ?ムーンライトセレナーダー?やれやれ、今度はSATOのお出ましか。誰に何を見せられても、悪いが全く見覚えがありませんね」
フォン総領事は、A4版の似顔絵を見て嘆息スル。
「なら白内障の手術をお受けになって。ウチの監視チームが30分前にイケメンが入るのを見てるのょ」
「監視チームだと?SATOは領事館を監視スルのか。秋葉原上空3万6000kmの静止軌道にSATOのコンピューター衛星がいるって噂はホントだったのか!しまった」
「(ホントは領事館前のビラ配りのメイドが監視してルンだけどマァいいやw)フフフ。普段は自国民を監視する側なのに衛星軌道から監視されるとはね…皮肉屋でゴメン。SF作家何モンで」
アッサリ観念する総領事w
「彼女は保護を求めて領事館に来たのです」
「しかし、彼女はスーパーヒロイン殺しの容疑者だ」
「だからと言って、秋葉原D.A.当局に引き渡すコトは出来ません」
勝ったな。こりゃ時間の問題だ。
「総領事も御存知でしょう?言うまでもなく大使館と領事館では、権利や特権が全く異なります。ココは領事館で、私達は超法規組織。貴方が容疑者を匿うコトは法的に不可能です」
「フォン総領事、彼女を渡スンだ。さもないと、半島の領袖様がイケメンを匿ってると三文マスコミ(ワラッタ・ワールドワイド・メディアw)にリークする」
「テリィ様。ソレは可哀想」
唇を固く結び、視線を落とす総領事。
デスクのインターホンに手を伸ばす。
「はい?」
「イケメンを連れて来い」
「わかりました」
振り向くとドアが開き、貧しい身なりの…紅顔の美少年w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
パーツ通り地下にあるSATO司令部。ボロボロの青い防寒着を着た髪ボサボサの美少年。まだ子供だ。逆ロリータかょw
「メイドさん。僕は誰も殺してない。信じて」
「(母性本能くすぐりパターンだわ!)坊や、なぜ脱北したの?」
「僕も殺されると思ったから」
僕も…殺される?
「誰に殺されるのかしら」
「"彼"が死んだ日に来た男。えっと…」
「OK。ハングルで話して」
傍らにいたマリレが歩み出る。彼女は韓流ドラマにハマって字幕ナシで見るようになり久しい。美少年は母国語で語る。
「そう、あのアパートにいたのね?ソコに"男"が来た?わかったわ。ヴェガが死んだ夜、アパートに"男"が来たから逃げたのね?」
「メイドさん。パパは"男"に殺された」
「はい?パパって誰ょ?」
ヲタッキーズとSATO司令部の全員が思わズ身を乗り出す。
「パパは、カノウ・ヴェガ…」
答えはメガトン級だ。総員のけ反って顔を見合わすw
「ララァ。も1度、初めから話して」
「パパとママ…えっと、あれ?」
「ハングルで話して!」
マリレの言葉に安心し、身振り手振りを交えて話し出す紅顔の美少年。迸る熱い情熱でほとんど同時通訳するマリレ。
「パパが脱北した時、ママと結婚の約束してた。ママも後で秋葉原に来るハズだった。でも、パパが逃げた罰として、ママは刑務所に入った。見せしめにされた。その時、ママは僕を"じんこうじゅせい"してた」(作者注:パパもママも女性でララァだけ男の子です念のためw)
「ちょっち待って!ヴェガは、君が生まれたコトを知ってるの?」
「去年、パパは在日半島人会から僕の噂を聞いた」
やっと合点が逝く。
「ソレで、ヴェガは噂を確かめに半島旅行に出かけたのね?」
「でも、政府に監視されてた。僕とは会えなかった。だけど僕を秋葉原に呼ぶと約束した。そして、初めてパパに会ったのはおととい。ココから自分の言葉で話したい」
「どうぞ」
幼い頭で必死に考えてしゃべる。
「パパに言いたかった。パパのせいでママは死んだ。言いたかった。でも、パパと会ったら…言えなかった」
幼い頭の語彙は尽き、再びハングルに戻る。
「パパは、ママを嫌いになったと思ってた。でも、パパは違うと言った。パパはママが来ないなら秋葉原に来なかったと言った。ママがパパを嫌いになったと思ってた。だから、今までパパは、ズッとママに裏切られたと思ってた。ママは刑務所で死んだ。ママが死んだと話すと、パパは、大声で泣いた。誰かに話すと言って出かけた。そして、戻って来なかった」
身を乗り出すムーンライトセレナーダー。
「そうしたら、アパートに"男"が来たのね?」
「食べ物を買いにコンビニに行った。アパートに帰ったら"男"がいた。パパじゃなかった。怖くて逃げた。ウチに帰りたかった。おまわりさんに聞いたら"りょーじかん"を教えてくれた。"男"がパパを殺した」
「坊や。アパートにいた"男"の特徴を教えてくれる?」
うなずく紅顔の美少年。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
豪華なオフィスに豪快な笑い声がとどろく。
「わっはっは…では、確認させてくれ。ヴェガの息子と称する、24時間も滞在してない密入国者が私に似た"男"を見たと言っている?しかも夜中に。遠くから。で、どうしろって。すぐ供述書にサインか?それともハデな記者会見が先か?」
「もちろん供述書のサインが先ょ」
「ムーンライトセレナーダー。勘弁してくれよ。ヴェガは友達で、我が社の大口顧客で稼ぎ頭ナンだ。私には殺人の動機がナイだろ?」
全く動じないムーンライトセレナーダー。
「多くを持つ者は、失うモノも多いとか申します。ヴェガは真実を知って憤慨したでしょうね」
「何についての真実だ?」
「お得意の話です。ヴェガの脱北の話です。貴方は、ヴェガにフィアンセも後から追ってくるとウソをつきましたね?」
コチラも全く動じないボビィ・フクス。
「アレは彼女の気が変わっただけのコトだ」
「もともと彼女同伴の脱北は無理だった。しかし、真実を言えばヴェガは脱北を諦める。そうなれば、貴方は利益が出ないばかりか、莫大な違約金が発生スル。だから、フィアンセが心変わりしたと伝えた。さらに、バレないよう婚約者を投獄させた」
「私が?ヴェガを半島で投獄を?あり得ない。コネがないとは言わナイが、軍事独裁政権を動かせるほどの力は無いょ。レストランの予約とは違うんだ」
大言壮語の輩が守りに入ってるw
「でも、人は確かに動かしたのでしょ?"ナクチ"。ロレックスに釣られヴェガの脱北を見逃した男。記録では、彼がヴェガのフィアンセの裁判の最重要証人として出廷、彼女に不利な証言をしてる。ロレックスの他に追加料金を払って証言させたの?交渉はお手の物だモノね」
「ムーンライトセレナーダー、ホンキで言ってるのか?」
「ヴェガは、全ての真実を知った後、貴方をクラブに呼び出した。そして、貴方を追求し、潰すと脅した。だから、殺したのょね?」
大物フィクサーを気取っても、土俵際まで追い詰められ、もはや口から泡を噴いて、手足がピクピク痙攣し始めている。
「私が顧客であるスポーツ選手のスーパーヒロインを脱北に追いやり、パートナーを投獄させたと言うのか?毎日大勢が投獄されている半島でか。馬鹿げた話だ。すべて推論だ!」
「推論じゃないわ。確証も出た。貴方の車のフロアマットから血が検出された。間違いなくヴェガの血ょ」
不敵な笑みを浮かべインターホンで秘書を呼ぶフクス。
「シシア。弁護士を呼べ。大金が稼げるまたとないチャンスだと伝えてくれ」
「向こう向いて」
「ふん」
振り向かせ後手に手錠をかける。
「ボビィ・フクス。カノウ・ヴェガ殺害容疑で逮捕します」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
夕刻。"秋葉原マンハッタン"が黄昏に染まる頃。
「ララァはどうなるのかな」
「ラギィの話だと、1年間は秋葉原にいられるそうです。そうしたら"秋葉原D.A."の市民権の申請が出来るようになるそうですテリィ様」
「うーんでもミユリさん。ララァはアキバに残る気はないんじゃないかな。唯一の血縁者だった父親が死んだ街だぜ」
ミユリさんは、黄昏に染まる街を目をやる。
「でも、この街には、ララァが会っておくべき人がもう1人いますから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
豪邸では、野球選手の"美人妻"が絶句している。
「じゃあ貴方が…ララァ?」
「YES。ヴェガが脱北した直後に生まれました」
「つまり、ララァはヴェガの浮気相手じゃなかった。ましてや愛人でもナイ。イケメンな息子だったんだ」
僕はミユリさんと2人がかりで必死の説明w
「あのヴェガに息子がいたの?」
「YES。どうか…」
「パパは、僕が秋葉原に来たら、貴女が怒ると思ってた。だから、怖かった。だから、パパは、僕の話を貴女にしなかった、多分」
最後は、ララァ自身の言葉だ。マリレを振り向く。
「OK。任せて。ハングルで話して…いいよ。父は貴女、つまりマギィ、貴女ょ、貴女を愛していたから、絶対に傷つけたくなかったから、みんなが家族になれれば良いと願ってた、この秋葉原でね」
突然マギィは、ララァの前にひざまづく。小さな両手をしっかりと握る。そして、微笑みと共にその口から出たのは…
何とハングルだw
「私の名前はマギィ。そして、貴方は今日から私の息子。秋葉原にようこそ」
ソコから先は和訳がナイ。マリレが泣き出したから。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
「おかえり、テリィたん!」
「おぉスピア。今宵も夜更かしか?」
「テリィたんを待ってた」
カウンターの中のメイド長がクスリと笑う。
「ありゃ何か地雷踏んだ?」
「ううん。ただね、テリィたんが言ってたコトを考えてた。テリィたんとパパさんは、不仲だった間の父子の記憶がナイのょね?家族に宿題を手伝ってもらったり、キャッチボールをした想い出がナイ。可哀想だなって」
「そーゆーモノだと思って育ったからな。最初から、想い出がナイから平気さ」
うそぶく。実は、結構痛いトコロを突かれてる。
スピアは、カウンター席に被せた布に手をやる。
「おいおい。タイムトンネルでも隠してるのか?」
布をめくるとボールの入ったグローブが現れる。
「どうだい、息子ょ。タマにはパパとキャッチボールでもしようじゃナイか」
「喜んで」
「今宵はスポーツバーですね」
いつの間にやら、ミユリさんもスピアもピンクのホットパンツでヒロイン野球のコスプレだ。ミットを構え三角に散る。
「よし!」
「投げるわょー」
「さぁ来い!」
その後は、全員ソファを踏み越え、イスを蹴り倒し、酒棚にボールを投げ(僕ですw)悲鳴に絶叫の想い出づくり。
で、あの日、パパと僕は語り合ったのさ。アキバで生きる喜び、そして悲しみのコトを。そして、知ったんだw
彼女達が、僕の"Mi Carino"だってね。
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"野球"をテーマに、ヒロイン野球のスター選手、その美人妻、欲深い代理人、同僚選手、スポーツ選手を狙う高利貸し、亡命コミュニティの新聞発行者、総領事、ウェイトレスとなって働く亡命者、スーパーヒロイン殺しを追う超天才や相棒のハッカーにヲタッキーズ、敏腕警部などが登場しました。
さらに、大リーグ的なヒロイン野球の世界、脱北コミュニティの様子などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、年末年始のインバウンドであふれかえる秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。