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第69話 変わる日々

 ウィルジアは王立図書館で仕事を終えた後、騎士団本部に行く日々を続けた。

 ロキは王都の中心部に向かうほどに落ち着きをなくし、騎士団本部に辿り着く頃にはそれが最高潮に達し、そしてエドモンドの顔を見ると露骨に嫌そうな態度をとった。後ろ足で砂をかけてくるロキを見て、エドモンドはウィルジアに苦言を呈した。


「何だよーウィル、ロキ全然懐いてねーじゃん」

「屋敷にいるときは言うこと聞くし穏やかで良い馬だよ。エド兄上のせいだと思う」

「えーっ、戦場で死なないように鍛えてやったのに」


 兄は納得がいかないように唇を尖らせる。どう鍛えていたのかウィルジアは聞くのを止めた。


「まあいいや。じゃあ今日も素振りからな」


 馬に興味を無くしたエドモンドはウィルジアに模造刀を放って投げてきたので、ウィルジアは素振りを開始する。

 初めの頃よりはかなり様になっているが、それでも兄の容赦のない指摘が飛んでくる。

 素振り、走り込み、筋力トレーニング、そして兄との手合わせ。

 全て終えてロキに乗り、屋敷まで帰る。帰りのロキの足取りは軽やかで、むしろウィルジアの指示するよりやや早足であり、よっぽど早く兄から離れたがっているのだなと感じた。


「ウィルジア様、おかえりなさいませ」

「ただいま、リリカ」


 ウィルジアがロキから降りると、屋敷で待っていたリリカがすぐさま出迎えてロキを馬小屋まで連れて行くので、ウィルジアもついて行った。

 ロキはリリカの世話を大人しく受け、馬房に戻る。

 それを見届けてから屋敷に入り、湯浴みをしてからリリカがウィルジアの体の検分をした。今のウィルジアの体には生傷が絶えず、リリカは手当てをすると言って聞かない。今日も湯浴みの後、上半身裸のウィルジアの体をリリカが消毒をしたり軟膏を塗ったりしてくれた。ウィルジアはもはや、なすがままだった。

 リリカはウィルジアの体を見て唇を尖らせる。


「ウィルジア様、傷だらけです」

「まあ、仕方ないよ」

「気になりませんか?」

「むしろ今までの傷ひとつない体の方が情けなかったなって、最近は思うようになった」

「左様でございますか。……はい、終わりました」

「ありがとう」


 手当てを終えたリリカに礼を言うと、ウィルジアは服を着て立ち上がる。


「すぐにお食事の準備いたしますので」


 リリカは手当ての道具一式が入った箱を手に立ち上がると、慌ただしく厨房へと去っていく。

 ウィルジアは食堂に向いながら、お腹空いたなぁと思った。


「ウィルジア様、最近お召し上がりになる量が増えましたね」


 リリカに言われてウィルジアはぴたりと動きを止める。今しがた、リリカが焼いてくれたローストポークを頬張ろうとしていたところだった。ウィルジアが口に入れると、じっくり加熱されて火が通った豚肉の旨味が口の中で弾ける。ソースと共に添えてあった粒マスタードの程よい辛さもいい塩梅だ。

 肉を噛み締めてからワイングラスに手を伸ばしたウィルジアは、リリカに返答した。


「体動かしてるせいかな」

「おそらく」


 以前は一日中座っているだけだったのだが、今は仕事の後に兄にしごかれている。自然と体がエネルギーを求めている気がした。


「脂肪ではなく健康的に筋肉がつくように、お食事面からお支えしていきますね」


 頼りになる使用人のリリカは、笑顔でそう言った。 


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― 新着の感想 ―
[一言] 男の裸(上半身)を見ても動じないのは、本当に全くなんとも思ってないのか(例:近所のガキども)、主人と使用人の間に余計なことを差しはさむことは不要と考えているのか、治療だからと自分に言い聞かせ…
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