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真実

俺達は城に戻ってきた。


魔王が討伐されたことは既に伝わっているようで、城の人たちは俺達を歓迎してくれる。

しかし、幸せの絶頂のはずなのに、城の空気は重く感じる。

無理に明るく振る舞っているような感じだ。

まあ、討伐に行く前から何か俺達に隠していたみたいだし、何か事情でもあるのだろう。


何を隠しているのかは知らないけど、魔王がいないのであれば、首輪を取った時点で城のものにいいように使われることはないし、どうでもいい。

そんなことよりも早く日本に帰りたい。


「勇者様方、パーティの準備が出来ております。こちらへ」

俺達は案内されてダンスホールのようなところに連れて行かれる。


音楽が流れてはいるけど、踊っている人はいない。


豪華な料理が並べられており、自由に食べていいと言われる。


料理を食べている間、代わる代わる声をかけられて、感謝の言葉を言われる。

その言葉に嘘はなさそうで、実際に感謝しているのだろうとは思うけど、皆どこか浮かない顔をしている。


「なんでそんな顔をしてるんだ?悩み事でもあるのか?」

俺は挨拶に来た1人の男に聞くことにする。


「……いえ、そのようなことはございません。もう魔王の影に怯えなくて済むのですから」


その後にも数人に聞いたが答えは同じようなものだった。


俺はバルコニーに出る。


「聞きたいことがあるんだが?」

俺はバルコニーにいた騎士団長に話しかける。


異様な空気を察したのか、バルコニーにいた他の人は中に戻っていった。


「どうかしましたか?」


「何か隠し事してるだろ?何を隠してる?」

俺は聞くことにする。聞かない方がいいとも思ったが、流石にここまで来ると、聞かないのは気持ち悪い。


「何も隠してはいませんよ」


「あんただけじゃなくて、ここにいる連中全員が隠してるだろ?今日だけじゃなくてずっとだ」


「私にはなんのことかさっぱりです」

言いたくないようだ。でも元の世界に帰ってしまうともう答えを知ることは出来なくなるので聞くことにする。


「聞き方を変えさせてもらうな。王女は見つかりそうか?」


「まだ見つかっていません」


「本当に探しているのか?」


「もちろんです」


「魔王を倒した後、あんたは王女が居なくなっていることに驚いていなかったよな?まるで知っていたみたいだったが……?」

あの時に感じだ違和感はこれだ。


「そんなことはありません。わ、私は王女様を憎んでいたので、すぐに気づかなかっただけです」


「召喚の儀式は巫女である王女がやったんだよな?送還の儀式は誰がやるんだ?」

帰れるということに気持ちがいっていてすぐに気づかなかったが、巫女がいないのにどうやって還す気なんだ?


「王女様は魔王討伐に向かわれる前に準備を済ませておりました。後は発動させるだけなので王女様がいなくても問題はありません」


「まるで自分がいなくなるのがわかってたみたいだな。隠し事をしているのはわかっているんだ。腹の探り合いはいいから言ってくれ」


「……確かにナオト様達には秘密にしていることがあります。しかし聞かない方がいいと思います。聞いても後悔するだけです」


「それでもいいから教えてくれ。何を隠してるんだ?」


「わかりました。真実をお話しします。勇者は魔王と対をなし、賢者は魔法を極め、聖女は癒しをもたらす。では巫女の役割とはなんでしょうか?」


「勇者を召喚することじゃないのか?」


「それもありますが、それだけであれば巫女である王女様が戦地に赴く必要はありません。巫女の役割は魔王を封印することです」


「……魔王は討伐されたんじゃないのか?」


「違います。魔王は王女様により封印されました」

騎士団長は苦い顔をして言った。


「……それならなんで王女はここにいない?」

俺は言わんとすることがわかってしまったが、聞いてしまう。


「王女様は巫女である自身の体を核に魔王を封印しました。なのでもうこの世にはいません」


「なんであの王女がそこまでするんだよ」


「王女様が自身を犠牲にしてでもこの世界を守りたいと考えていたからです。王女様は皆から愛される優しい方でした。優しいが故に、魔王を封印するには自身が犠牲にならなければならないことを勇者様達には秘密にしておりました。全てが終わった時に、勇者様が仲間を犠牲にして勝利したとしても後悔するのではないかと……」

確かにこの話を聞かなければ、王女が犠牲になったと聞いても後悔はしなかったかもしれない。


「それなら今までの態度は全て演技だったって言うのかよ!」


「そうです。王女様は陰ではナオト様達のことを常に気に掛けておられました。王女様は完璧に演技をこなされたのに、私どものせいでナオト様に知られることになってしまい不甲斐ないばかりです」

死ぬ間際に見たのが本当の王女の顔だったってことかよ。


「城の連中が元気がないのもそういう理由なのか?」


「そうです。皆王女様が核になられたことを悲しんでいるのです」


「……もう一つだけ教えてくれ。初めから封印することを前提で動いていたようだが、討伐が目的ではなかったのか?」


「それは戦ったご自身が1番理解されているのではないですか?勇者様の召喚が成功したとしても、魔王を討伐出来るとは思っておりませんでした。ナオト様は魔王と実際に戦って勝てる見込みがあったと思いましたか?もっと強くなる手があったとは思いますか?」


「……すまなかった」


「私こそ責めるようなことを言ってしまいすみませんでした。そういうわけなので、どうか王女様の今までの言動は許してあげて下さい。そして、どうか気に病まないで下さい。勇者様にはこの世界を救っていただき感謝しかありません。王女様も同じ気持ちのはずです」


「……教えてくれてありがとう」


「ナオト様、お願いがあります。トモヤ様とアイリ様には今の話はご内密にお願いします」


「わかってる」

この話を聞いて俺は後悔している。知らないまま帰った方がどれだけ幸せだっただろうか……。

あの2人までこんな思いをする必要はないだろう。


騎士団長はホールへと戻り、バルコニーには俺だけになる。


「元気がないみたいですけど、どうかしたんですか?」

星野さんがに声を掛けられる


「……元の世界に戻った後の事が心配でね」


「私も心配です。あの、帰ることが出来たら一度集まりませんか?」


「そうだね。そうしようか」


俺は星野さんに連絡先を教える


「笹原君にも伝えといてもらっていいかな?」


「わかりました」


いつの間にかパーティも終わり、そのまま送還されることになった


「勇者様方、この度は世界を救って頂きまして本当にありがとうございました」


騎士団長がお礼を言った後に、魔法陣の周りに置いてあった水晶に魔力が注がれる。


世界を救ったと言いつつも、年端のいかない女の子1人を犠牲にした結果か……。

なんとも後味の悪い終わりだな

少しでも面白いと思って頂けましたらぜひ下部より★の評価をお願いします。

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