第3話 和室ならなお良いじゃない
「ねぇ、ちーちゃん」
「なんだ?」
「飲めなぁい」
「だろうな」
「だぁ、かぁ、らぁ。飲めなぁぁい」
「それはそうだろう。茶と言うのは少なくとも寝転がったまま飲める様な代物では無いからな」
「ねぇ、ちーちゃん」
「なんだ?」
「ストロー持ってきて」
「すっ、ストロー?!」
「ストローだったら飲める気がするぅ」
「ほっ、本気か?」
「ホンキも本気、大本気。きっとストローだったら寝転がったままでも飲めると思うぅ」
「うぅぅむ。隣の家庭科準備室に行けばストローぐらいはあるはずだが……」
「じゃあ、ちーちゃん取って来てぇ」
「くっ、仕方が無いな。でも熱いものをストローで飲むとヤケドをする恐れがあるからなっ! きっ、気を付けるんだぞ! それに……誤飲だ。誤飲も危ぶまれる。まかり間違って肺にでも入って見ろ。誤嚥性肺炎の可能性だってあるのだ。私はお前にそんな危険な真似は……くっ」
って言うか、ちーちゃん。
心配してるポイントがちょっと違う様な気がする。
でもホント、ちーちゃんって優しいよね。
「あ、ちーちゃん」
「なっ、なんだ? 考え直してくれたのか?」
「ううん。ストローは二本持ってきてね」
「なぜ? なぜ二本なんだ? 二本で飲もうと言うのか? 確かにタピオカミルクティや高粘度のシェイクの様な飲み物はストローを二本にする事で一度に取り込む液体の量を増加させる効果を期待できるには出来るが、いやまて、それでは本末転倒だ。私が心配しているのは、熱いものを一度に飲み込んでお前の喉をヤケドさせないか? と言う点に他ならない。ここは多少譲歩して、一本で済まそうと言う気にはならんのか?」
「あぁ……いや、そうじゃなくって」
「そうではなくて、一体なんだと言うんだ?」
「あのぉ、ちーちゃんと一緒に飲めたら良いなぁ……って」
「……」
「なっ! 何てコトを言うんだ。それはあの南国風トロピカルドリンクを飲むときにするヤツをこの純日本風和室である茶道部の部室で執り行おうと言う趣向か? なっ、何たる斬新な考えっ! くっ、そうとなれば話は別だ。少々時間は掛かるが、近くの百均まで行って来る。いや、心配する事は無いぞ。茶道部とは言え中学の頃は陸上部に在籍した身だ。かつて取った杵柄。今では文化部に身をやつそうとも、日々の通学により鍛え上げられたこの筋肉に抜かりはない。まずは待たれよ。わずか数分の内に所望の品を持ち帰ってみせようぞぉ! あーっ、はっはっはっはっはぁ!」
――ピシャン! タッタッタッタッタッター!
「……」
あららぁぁ……。
ちーちゃん、行っちゃった。
まぁ……良っか。




