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 メイドさんに誘導されて城の入口に着くと、おじさんズとアリアさん、護衛騎士っぽい人達と一緒にひょろ長い顔色の悪い青年と、職人って感じの人の良さそうなおいちゃんがいた。


「麻衣殿ですね!資料をたくさんありがとうございます!いやー、どれも初めて見る技術ばかりで、しかも製本技術も素晴らしい!

 こんな綺麗な本は初めて見ました!使われている紙すらどうやって作られているのかと」


「アンドレ!先に挨拶をせぬか!馬鹿者が!麻衣殿、礼儀のなってない息子で申し訳無い……」


 アリアさんの旦那さん(この国の元王様らしいよ)とアリアさんが申し訳無さそうに頭を下げた。


「いえいえ、気にしないで下さい!こんなド庶民に簡単に頭を下げられると困っちゃいます……本当大丈夫ですから!あまり気を使わないでください!」


 元王様と元王妃様に頭を下げられるなんて、心臓が持ちませんから!しかも回りも習って頭を下げるから、本当居たたまれないんですって!わかってー!


「ほらほら、麻衣殿もこう言ってるし大丈夫だって!それよりこのトイレは勿論だけど、この部品も手に入る?手に入るなら設置できるよ!

 お風呂も大丈夫だよ。このエコキュートも手に入るのかな?どの家にも電気ってやつが使われてるみたいだけど、太陽光発電ってやつが手に入るなら大丈夫だよね?手に入る?」


 ふ、ふおおー!まじですか!?手に入りますともー!最高!トイレとお風呂だけでもって思ってたけど、やっぱり電気が有るのと無いのじゃ全然違うもんね!

 う、ううう……これでやっと人並みの生活がおくれる目処がたった!


「あ、ありがとうございます……う、嬉しい……ライアン、ちょっとお金かかるけど買ってもいい?」


「ああ、勿論だ。麻衣が快適に過ごせるのが一番だからな」


 な、なんて男前発言!ええ旦那や~。


「はいはい、いちゃいちゃするのはいいからとりあえず行こうか?あ、俺アンドレ。こっちは城お抱え大工の棟梁。

 技術はわかっても実際家とか作ったことも直したこともないからさ~、まぁ何とかいい感じにしてくれるから安心して」


 なんかいまいち頼りになるのかなら無いのかよくわからないけど、アンドレさんに私の快適ライフがかかってるから、後で製紙技術の本でも差し入れしとこう。


 初めての馬車は何とも乗り心地が悪かった。これが普通なの?お尻が痛い……昨日のダメージもまだ残ってるし、結構きついな~と思っていると、ライアンの膝の上に横抱きで抱っこされた。

 確かにお尻へのダメージは軽減したけど……いや、アリアさんそんな目で見ないで!

 あ、到着?やっと到着したのね!さあ早く下ろして!


「こ、これは……」


「……本当にここに住んでるのか?」


「に、2年前より酷くなってるわ……」


「わ~……廃墟」


 そう、まさに廃墟だった。手入れのされていない草が生い茂り、壁は蔦でびっしりと覆われている。

 騎士が言っていた通り屋根も一部崩れ落ち、窓ガラスが割れている所もあった。


「ま……まてまてまてまて!普通蔦に覆われてるにしても、もっとこう緑でジブリな感じじゃない!?

 何これ?茶色メインで所々赤やら黄色やら緑茶色……廃墟も廃墟、お化け屋敷じゃん!

 ええ!?ここに住むの?無理無理無理無理!怖い怖い怖い怖い!てかここで生活してたの?絶対虫だらけでしょ?

 ひ~!中まで蔦びっしり!」


 割れた窓から中を覗いてみると、廊下もびっしり茶色い蔦がはっていた。壊れたドアの中の部屋も、おそらく蔦に覆われていることだろう。

 今は明るいからいいが、夜などお化け屋敷より普通に怖いんじゃなかろうか……


「麻衣、この家が怖いのか?」


「うん、ちょっと……ここに住むのは無理そうだよ……草さえ刈れば場所はいいんだけどね……」


「そうか、では壊して新しい家を建てよう」


 そう言って、ライアンは特大の風魔法?を家に向かって放出した。あっという間に家は瓦礫の山へとなった。

 そこへ今度は火を着けて、余計な蔦や家具の残骸などを燃やし、最後に水で消火した。


「は……?え……?80年間ここに住んでたんだよね?瞬殺だったけど、思い出とか何も無いの……?」


 思わずドン引きして聞いてしまった。


「無い」


 ビックリするくらい即答だった。


「……魔王討伐の際の勲章は家の中じゃないのか?」


「アイテムボックス……これのことか?」


 元勇者はアイテムボックスから何かを取り出して元王様に見せた。


「おお、まさにこれだ!ちゃんと仕舞ってたんだな!安心したぞ」


「魔王討伐の際にみんなにお揃いで作った御守りは……さすがにあの中かしら?いえ、貴方の事だからとっくに無いわよねきっと……」


「アイテムボックス……これのことか?」


「まあ!まあまあまあまあ!貴方がちゃんと持っててくれたなんて……」


「無くしたら困るものは全部この中だ。あそこにあったものは全て必要無い物ばかりだ」


 おおう、なんかアリアさんも元王様も涙して喜んでるよ。まぁ確かにこの性格だしね……勲章はともかくアリアさん手作りの御守りを大事に持っていたなんて驚きだよね。

 物を大事にしない奴かと思ったけど、大事なものはちゃんと大切にしてるみたいでよかったよかった。

 よくよく考えたら、ここって番が見つからずに孤独で狂化しそうになった嫌な思い出しか無い場所だったのかもしれない……


 ふおう、今度は草刈り?風の刃で一気に行ったよ!土魔法?で根っこも掘り出して……最後は一ヶ所に集めてやっぱり燃やすのね。

 すごい、なんか更地が完成した……さっきまでの廃墟感が嘘みたい! 


「すごいな~、こっちではこうやって更地にするのが普通なんだね!」


「「「「いや、普通じゃないから(ありませんから)」」」」


 どうやらこの世界でも異常だったらしい。

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